原子力損害賠償・廃炉等支援機構では,先般取りまとめた「東京電力ホールディングス㈱福島第一原子力発電所の廃炉のための技術戦略プラン2023」において,燃料デブリの取り出し規模の更なる拡大の工法検討等の技術戦略を提示している。本稿では,その概要を示す。
現在のコンピュータではシミュレーションが困難なレベルの量子コンピュータの実機が現れ,最近注目を集めている。また,量子コンピュータにインスパイアされたドメイン志向コンピューティングとして,組合せ最適化専用の計算機の研究開発も近年活発である。本稿ではこれらの話題を俯瞰すべく,量子コンピュータの基礎から始め,量子ハードウェア,量子アルゴリズム,量子インスパイアード技術の最新動向を紹介する。
災害,事故による化学物質漏洩がもたらす環境リスクを最小化するために,化学物質管理手法の体系化が求められており,特に事故時の事業所敷地外に対する影響の管理手法の構築が課題となっている。事故時の化学物質管理では,大気や水域において予想される漏洩量や排出量を設定して拡散計算を行い,その結果を利用可能な形にまとめておくことが重要である。これにより,水質事故や化学プラント等の爆発事故,地震災害によって生じる影響の見積もりや対応を迅速に行うことができると期待される。本稿では,災害や事故による非定常の化学物質排出に係る影響評価・管理手法について日米の事例を紹介し,日本における研究事例をまとめ,課題を述べる。
原子力発電所のリスクを評価する手法として確率論的リスク評価(PRA)を用いることが議論されている。PRAのうち,サイト外におけるリスクを評価する手法はレベル3PRAと言われる。サイト外においては,事故の影響を緩和するためにさまざまな防護措置が取られることが定められており,レベル3PRAではこの防護措置を考慮して住民の被ばく等を評価する。本稿ではレベル3PRAの概要を述べるとともに,防護措置のうち原子力災害対応の特徴の一つである緊急時の住民の避難等について述べる。
原子力学会標準委員会は,高経年化対策実施基準の改定を通して長期運転にかかる活動をリードしてきたが,最近の法・規制の変更を踏まえて,引き続き重要な貢献をする必要があると考えている。本稿は,2023年秋の大会で実施された企画セッションにおける議論を再構成し,安全な長期運転に向けた取り組みとその標準化における留意点を解説したものである。重要な点として,(1)時間の経過に伴って見いだされる知識を有効に活用すること,(2)オブソレッセンスを含む安全への影響が大きな新知見を見逃さないこと,(3)安全への影響と発現可能性の大きさを踏まえて対応に重要度をつけること,(4)国際的な知識基盤構築へ貢献すること,などが挙げられる。
本報告は,日本原子力学会2023年秋の年会で開催した福島特別プロジェクト企画セッション(保健物理・環境科学部会共催)のとりまとめである。本企画セッションは「ALPS処理水海洋放出に関する経緯とその理解」と題して,資源エネルギー庁および環境省の担当官にALPS処理水の扱いに関する経緯と取組み,海域環境モニタリング等についての講演をいただくとともに,福島特別プロジェクトより海洋放出に関する世論調査(2022年秋)の結果を紹介した。講演後の会場全体での議論を通じて,処理水海洋放出の事実関係が学会関係者間で共有された。
ダイバーシティ推進委員会は,2023年1月に理事会において承認された「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)推進に向けたアクションプラン」を達成するための活動を開始した。2023年度は,数値目標達成よりも本学会員のD&I推進に関する意識向上を重要視した。本稿では,2023年度に実施した活動,特に目標シートの結果について報告する。
すでにアカウントをお持ちの場合 サインインはこちら