東京電力福島第一発電所事故により放出された放射性のセシウムの除染や復興事業が速やかに進むように,日本原子力学会では,理事会直結の組織として「福島特別プロジェクト」を創設した。このプロジェクトの概要について述べる。
東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会(政府事故調)は2012年7月23日に調査・検証結果をまとめた最終報告を公表した。調査結果の全体は,最終報告および2011年12月26日に発表された中間報告を合わせたものとなっている。本稿では,福島第一原子力発電所の1~3号機における現場対処および事前の津波対策を中心に技術的な調査・検証結果について報告する。
全国原子力発電所所在市町村協議会(以下「全原協」という)は,原子力発電所の立地および立地予定の24市町村と,隣接6市町村の計30市町村で構成され,立地に伴う諸問題の解決のために一丸となって取り組んでいる。福島第一原子力発電所で発生した原子力災害では会員市町が被災し,想定外の「行政機能移転」や自治体の区域を超える「広域避難」というこれまでにない過酷な状況に追い込まれた。全原協では,市町村自らがこの災害を検証し,安全・防災対策をはじめとした原子力行政に反映させることを目的に,ワーキンググループを設置して調査を行い,平成24年3月に報告書として取りまとめた。本稿では,調査の概要と調査から見えてきた課題に対する取り組みの方向性について報告する。
日本原子力学会の「原子力発電所地震安全特別専門委員会」傘下に設置した構造分科会は,日本機械学会の活動と連携して,機器・配管系の耐震設計における技術的課題や地震時の影響評価といった学会としても取り組んでいくべき事項について議論した。これらを「地震安全の論理」に沿って整理し,課題の過不足を検討して課題整理表に取りまとめ,ロードマップを作成した。本稿では,抽出された検討課題について述べるとともに,平成23年3月11日に発生した東日本大震災以降の原子力発電所の対応・評価状況を踏まえ,原子力発電所の耐震設計に関する余裕がどこまで分かっていて,どこに課題があるのかについて解説する。
標準委員会では津波PRA標準を2012年2月8日に発行した1)。この標準について3回に分けて解説する。第2回では津波ハザード解析の概要についての解説を行う。まず,地震による津波という自然現象のメカニズム,それに対応してハザード解析が「津波発生域モデル」と「津波発生・伝播数値モデルの設定」から構成されていることを述べる。そしてハザード曲線の作成方法について触れる。
高速実験炉「常陽」では,原子炉容器内の実験装置の取扱において起ったトラブルを受け,カメラやファイバスコープにより,高温・高放射線量の原子炉容器内部の状況を把握する等,プラント機能復旧のために必要となる技術開発を進めてきた。本稿では,これまで進めてきた観察・補修技術開発の意義と得られた成果,そして今後の復旧への取り組みを紹介する。
日本の放射線医療の現状を打破するため,医療の現場で医療スタッフとして働く医学物理の専門家集団の形成が不可欠である。現在の日本の放射線医療には医学物理の職制はなく,職場がなければ有能な人材の参集を図る条件はない。医学物理士認定機構にかかわるすべての方々,団体はこの現状を打破するため医学物理専門家たるにふさわしい人材の育成を通じ,その社会的認知のための取り組みを強力に進めつつある。人材育成は一朝一夕で成るものではなく,それにふさわしい教育プログラムと教育組織の確立が不可欠である。医学物理に係る専門家の育成のために原子核(力)関連の研究教育組織は先導的役割を担うべきと主張する。新たな人材の注入により,なによりも日本の放射線医療の現状の認識を一変させ,日本のみならず世界の患者に最高の医療を提供していくことができる条件を確立するために。
原子力は,平和利用による恩恵と大量破壊兵器の脅威という相反するものを与え得るものである。このため,原子力平和利用の恩恵を享受するには,核兵器の不拡散の観点から的確な対応が求められる。NSG(Nuclear Suppliers Group:原子力供給国グループ)とは,原子力資機材や技術の輸出管理を通じて核兵器の不拡散に寄与していこうとする各国政府の集まりを指すものである。本稿では,このNSG発足の経緯や制度の概要,最近の動向等について概説することとしたい。(本稿における見解は,筆者個人のものであり,日本国政府や筆者が所属する組織のものではない。)
2012年7月1日に,固定価格買取制度が施行され,今後導入拡大が期待される再生可能エネルギーであるが,なかでも風力発電は,再生可能エネルギー電源のなかではコスト面でメリットが大きく,海外では主要電源の地位を占めるまで成長している。我が国にも大容量風車を製造するメーカが3社(三菱重工,日本製鋼所,日立製作所)あり,大量導入への対応を進めている。国も洋上への展開を視野に入れ,各種研究開発を実施している国もある。そうした風力発電の動向に加え,風力発電の技術的な特徴・運転保守方法や,最近の技術動向などについて解説する。
低放射化フェライト鋼は核融合炉ブランケットの構造材料として,フェライト/マルテンサイト系耐熱鋼の添加元素を低放射化制約に見合うものに置換することで設計され,耐熱鋼製造技術を背景とした開発が進められている。本稿では低放射化フェライト鋼について,要求性能と開発状況,および研究開発課題について紹介する。
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