昨年,「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の第4次評価報告書が公表され,地球温暖化問題は人類が持続的に生存するために全地球規模で取り組まなければならない課題であるという緊迫感が急速に高まっている。加えて,原油価格の急激な上昇をはじめ,石炭,ウラン等,すべてのエネルギー資源の価格が軒並み高騰し,エネルギー資源を確保するための国家間のせめぎ合いも日々厳しさを増してきている。こうした中,多くの国が太陽光,風力,バイオ等の再生可能エネルギーの開発に取り組むことと合わせて,世界的には原子力エネルギーを積極的に利用しようという機運が高まり,国際的には1980年代から続いてきた原子力エネルギー利用の停滞の時代に新たな変化の兆しが現れてきた。
原子力委員会はこうした変化を踏まえて,この4月に地球温暖化対策とエネルギー安定供給という課題に応えるために「原子力の革新的技術開発ロードマップ」の中間取りまとめを行った。本稿では,その概要の紹介と合わせて,温暖化ガス排出削減とエネルギー安定確保に応えるための原子力の研究開発の進め方について考えてみたいと思う。
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