従来の低線量被ばくの影響評価そして放射線防護の枠組みを一新する可能性のある理論が開発されている。その名をモグラたたき(WAM)モデルと言う。このモデルが導く最も重要ことは,低線量被ばくの影響はモグラたたきのように潰されていって,時間経過とともにその影響が蓄積してはいかないということである。これは現行の放射線防護の基盤であるしきい値なし直線(LNT)モデルが70年にわたって築いてきた枠組みにチャレンジするものである。ここでは,このことを議論した2016年秋の大会企画セッションの内容を紹介する。
約170年の歴史を持つ荷電粒子加速器の発展の過程を科学技術史的にまとめた。広く普及している加速器の動作原理を簡潔に紹介し,それぞれのルーツを辿り,進化の中での相互の関係を解説する。実験室科学から巨大科学へ展開していく加速器をベースにした20世紀物理学の必然性と共に,第2次世界大戦の影響にも言及する。最後に21世紀における基礎科学としての巨大科学の存続の可能性を他の国家プロジェクトとの比較で論じる。
放射性廃棄物処分の安全評価では,人工バリアの長期的な性能を評価することが重要になる。人工バリアは,ベントナイトやセメント系材料を用いて構築される計画であり,それらの力学的・化学的相互作用を理解する必要がある。本稿では,セメントに起因してベントナイトがアルカリ環境下に曝され,変質することを想定した透水性,膨潤性,強度変形特性を調査するための試験設備について紹介する。
原子力や火力の発電プラントにおいては,水が流れる系統配管の肉厚が,時間の経過と共に徐々に減少する配管減肉現象が見られる。いくつかある減肉現象の中でも特に,流れ加速型腐食(Flow-Accelerated Corrosion: FAC)は,過去に国内外で人災を伴う大規模な配管破損事故を発生させており,プラントの運転保守において重要な管理項目の一つとなっている。本稿では,過去の経緯を踏まえてFACに対する研究の現状について紹介する。
本報告は,2016年秋の大会において行われた保健物理・環境科学部会企画セッションのとりまとめである。環境測定,環境影響,健康影響の各テーマで,福島第一原子力発電所事故から今まで得られた知見,今後の研究の展開・課題に関する講演が行われた。講演後に会場全体でディスカッションが行われ,今後事故が起きた際に,今回の事故よりも迅速かつ適切に対応するためには今何をすべきか,幅広い分野とのつながりの重要性が主に議論された。
2016年9月1日,6名の大学生・院生がJAEA幌延地層研究センターを視察し,見学直後に率直な意見を交換した。高レベル放射性廃棄物の処分問題をめぐって,若手研究者が様々な視点から意見を述べた。
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