日本原子力学会誌ATOMOΣ
Online ISSN : 2433-7285
Print ISSN : 1882-2606
58 巻, 11 号
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巻頭言
時論
解説
  • 迫り来る3Heクライシスの解決を目指して
    小泉 光生, 坂佐井 馨, 呉田 昌俊, 中村 仁宣
    2016 年 58 巻 11 号 p. 642-646
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/02/19
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     核セキュリティ,保障措置分野では,核分裂に伴う中性子を検出する検認装置として3He検出器を利用したものが広く利用されている。検出器に利用される3Heガスは,主に米国におけるストックから供給されてきたが,2001年9月11日の同時多発テロ以後,大量の3He中性子検知装置を米国内に配備したことから,在庫が減少し,供給が近い将来停止する状況になりつつあった。そうした中,2011年3月末の3He代替中性子検出技術に関するワークショップにおけるIAEAの3He代替非破壊分析装置開発の呼びかけに応じ,原子力機構においても,J-PARCセンターが開発したZnS/10B2O3セラミックシンチレータをベースに3He代替検出器の開発を行い,平成27年3月には,開発した中性子検出装器の性能試験及びそれを実装した核物質検認用非破壊分析(Non-Destructive Assay (NDA))装置の性能実証試験を実施した。本解説では,開発した検出器,代替NDA装置を紹介し,あわせて3He問題の顛末を報告する。

報告
  • 林 眞琴
    2016 年 58 巻 11 号 p. 647-652
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/02/19
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     世界最高レベルの中性子強度を誇る大強度陽子加速器施設(J-PARC)の物質・生命科学実験施設(MLF)は供用開始後7年半余りを経過した。世界最先端の研究施設であるにも拘わらず共用開始直後から産業利用が進捗し,これまでの採択課題件数の約30%近くを占めている。更には,1日当り300万を超える利用料金を支払って成果を専有する成果専有利用も28.4%に達している。このことは,産業界が材料開発や基盤技術開発に当って中性子が非常に有用であると認識していることを示している。利用されている産業利用分野と適用製品も多岐に亘っており,Liイオン電池や表面コーティング触媒,低燃費タイヤなどで成果が挙がっている。今後,中性子はラボX線や放射光,透過電子顕微鏡などの材料開発における基本的測定技術の一角を占めていくことになると期待される。

解説シリーズ
  • (その6)原子力を巡るエネルギー情勢―「エネルギー白書2016」に見る内外の動向
    小宮山 涼一
    2016 年 58 巻 11 号 p. 653-658
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/02/19
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     平成27年度版エネルギー白書では,今後の原油価格の上昇リスク,パリ協定やそれを踏まえた温室効果ガス排出抑制策の動向等について解説されている。また国内動向として,原子力政策(福島廃止措置,損害賠償,原子力規制等),省エネ対策強化,再エネ普及策,火力発電効率基準や非化石電源比率に関する指針の策定等が紹介されている。これらを踏まえ,エネルギー安定供給や環境面で優位性のある原子力は,安全面での対策を最大限行い,原子力損害賠償および被災者支援の着実な実施の下で,引き続き重要な役割を担うと考えられる。

  • 第1回 津波波力に関する基礎的実験
    木原 直人, 甲斐田 秀樹
    2016 年 58 巻 11 号 p. 659-663
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/02/19
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     原子力発電所の耐津波性能の向上に寄与する防潮堤や水密工の設計等においては,主要な外力である津波波圧・波力を適切に評価することが肝要である。そのため,約50年前から現在に至るまで,数多くの津波波圧・波力に関する水理実験が行われてきた。本解説では,津波波圧・波力に関する実験について2回に分けて解説する。第1回では,波圧・波力評価試験の活用方法および一般的な実施方法と,波圧・波力評価式の提案に関する基礎的実験について解説する。

サイエンス
  • ―わかったこと,まだわからないこと―
    千葉 敏, 吉田 正
    2016 年 58 巻 11 号 p. 664-668
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/02/19
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     原子力の原点である核分裂についての理解は原子力技術の足元を固める意味で重要である。ここでは核分裂の物理学を取り上げ,専門家にインタビューする。まず中性子の入射および核分裂から始まる一連のプロセス,核分裂片の生成,即発中性子や即発ガンマ線の放出,遅発中性子等をひろく概観する。次に,どのようにして原子核が二つに割れるのか,どうして核燃料核種の質量数はU-235やPu-239のようにみな奇数なのか,核分裂生成物の収量分布はなぜふた山なのかといった,原子力の教科書ではあまり深入りされないいくつかの疑問に触れ,最後に,核分裂の理論的研究の歴史をふりかえりながらこの分野の最新の研究状況を紹介いただく。

Short Report
  • 福本 学
    2016 年 58 巻 11 号 p. 669-672
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/02/19
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     放射線の生物学影響研究で何が一番重要か?との問いに,低線量・低線量率被ばくによる発がんリスクの解明,と答えれば十中八九の人たちは同意する。これは,福島第一原発事故後に大きな課題となってはいるが,放射能汚染も含めて放射線影響学会の設立の契機となった古くて新しい問題である。所謂専門家は,低線量・低線量率ひばくの影響は他の要因による発がんの影響によって隠れてしまうほど小さい,だから良くわからない,とお題目を唱え,まずはDNA二本鎖切断と修復機構の研究を,ということになる。しかし,放射線の生物影響の解明の前に,研究者がどこまで放射線について理解しているのか,共通の認識でいるのか,という根本的な問題があるように感じられる。

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