(株)BWR運転訓練センター(BTC)では,50年以上にわたり原子力発電所運転員の育成に寄与してきた。時代の変化に合わせ訓練内容も変遷してきているが,ここでは,現在におけるBTCにおけるBWR運転訓練の取り組みについて紹介する。現在実施している訓練体系および訓練内容を示すとともに,訓練の高度化や運転員以外に提供している訓練についても紹介する。
当社では,ヒューマンエラー低減に向けた日常的な取り組みとして,「現場力向上」をスローガンに,作業に潜むリスクを事前に洗い出し対策をとる「リスク想定」の活動や,作業を行うにあたって期待される振る舞いである「基本行動」を根付かせる活動を実施している。
2020年に社内ルール化し体系的に取り組んでいる「リスク想定」の実施状況と,自己評価によるリスクマネジメントプロセスの継続的な改善状況について紹介する。
地熱・地中熱エネルギーは,電気や熱の安定供給が可能な地球の恵みであり,世界各国で普及拡大が進められている再生可能エネルギーである。一方,国内では導入量が伸び悩んでいる。そこで本稿では,地熱開発(主に発電利用)と地中熱利用の現状と課題,および課題解決に向けた研究開発や対策技術,今後の展望について解説する。
2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻(以下,ウクライナ侵攻)は,世界のエネルギー情勢に大きな影響を及ぼしている。ロシアは世界有数の化石燃料保有国だけでなく,原子炉の輸出,ウランの転換・濃縮などに世界一のシェアを持つ原子力強国でもある。このため,欧米諸国は化石燃料だけでなく原子力においても,脱ロシア依存を目指している。
一方,気候変動への対応が強まる中,ウクライナ侵攻により,脱炭素とエネルギー安全保障の両立の重要性が増し,世界は再び原子力推進へと向かおうとしている。
当学会の原子力オープンスクール(OS)という活動をご存じでしょうか?OS活動では以下の4点を意識し,特に原子力災害発生の前後での一般の方々の意識の変化を考慮し,適切な情報提供にも努めるようにしている。①子どもたちが,学ぶことの楽しさを知って科学に興味を持ち,とりわけ放射線や原子力についての正しい知識を持つこと,②体験型の企画とすること,③保護者も,子どもたちと一緒に学べる企画とすること,④毎年継続的に開催することで,放射線への理解を浸透させること。「対面・対話・密」によるコミュニケーションの中で行ってきた活動はコロナ禍において厳しい状況におかれた。それでも伝える取り組みを継続するという強い意志のもと,この3年活動を継続してきた。本稿では,2023年3月に行われた企画セッションにおける講演を紹介するとともに,セッションを通じて再確認・再共有された本活動の意義と,今後とも長く将来にわたって活動を継続していくために必要なことは何かをまとめ,本活動の理解者や協力者が増えることを期待する。
植物が行う光合成は可視光のエネルギーを利用して行われる。赤外線はエネルギーが低いため酸素発生型の光合成には利用されないと考えられてきた。しかし近年,複数の生物において赤外線の一部である遠赤色光(700~800nm)で酸素発生型光合成が可能であることが報告されている。私達はナンキョクカワノリから遠赤色光を吸収するアンテナタンパク質Pc-frLHCを精製し,クライオ電子顕微鏡によりその立体構造を明らかにした。励起子カップリングの計算から遠赤色光に吸収を持つクロロフィルを同定し,アップヒル型の励起エネルギー移動過程について推察した。生物が環境適応の過程で獲得した効率的なアップヒル型の励起エネルギー移動メカニズムから得られる知見は,将来的には産業分野における量子制御技術へ繋がるかもしれない。
本研究専門委員会(本委員会)では,東京電力ホールディングス株式会社(東電)福島第一原子力発電所(1F)事故後の核分裂生成物(FP)挙動を予測可能な技術に高めて廃炉作業に貢献することと,1F事故進展事象の把握で得られた情報をソースターム(ST)の予測技術の向上に反映させ,原子炉安全の一層の向上に繋げることを目標とした活動を実施している。この2年間では,分野毎に拡大幹事会(担当幹事と有志者)を組織し,これまでの12年間の1F実機調査や1F関連研究で得られた情報を調査し,1F廃炉における燃料デブリやFP挙動の予測,およびST予測精度向上に必要な,今後本委員会で重点的に取り組むべき技術課題を決定した。今後委員会を延長し,決定した取り組むべき技術課題の解決に向けた道筋の議論を進める。
「原子力産業界におけるダイバーシティ推進と働き方改革」をテーマに,7回にわたる連載が行われた。この連載では,原子力分野の企業や研究所などの取り組みや現状について紹介が行われた。最終回では,これまでの連載記事を総括して,原子力産業界におけるダイバーシティ&インクルージョン(D&I)や働き方改革に関する課題,活性化への期待がもたれる技術や取り組み,そして今後の展望について触れ,まとめとする。
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