日本原子力学会誌ATOMOΣ
Online ISSN : 2433-7285
Print ISSN : 1882-2606
60 巻, 2 号
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巻頭言
ショートインタビュー
時論
Column
特集
  • 川村 慎一
    2018 年 60 巻 2 号 p. 78-81
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/04/02
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     福島事故の主要な教訓として,外的事象に対する防護,共通要因故障防止,設計を超える事態における事故進展防止,放射性物質放出による影響の緩和,設計を超える事態に対応できる緊急時能力の課題をとりあげ,柏崎刈羽原子力発電所を例として安全性向上の取り組みについて論じる。これを含む安全性向上策の柏崎刈羽原子力発電所6,7号機への適用については,新規制基準への適合性の観点から審査が進められている。

  • 南 安彦
    2018 年 60 巻 2 号 p. 82-84
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/04/02
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     原子力発電所の運転期間延長認可制度(平成25年7月施行)は,40年の運転期間について,認可を得れば1回に限り最大20年を加えた時期まで延長できるものである。高浜1,2号機及び美浜3号機については,新規制基準適合のための安全性向上対策の実施を計画するとともに,原子炉容器等に対する特別点検を実施して異常のないこと,及び安全上重要な設備等に対する劣化状況評価を行い60年の運転に対しても十分健全性を維持確保できることを確認したことから,運転期間延長認可申請を行い,原子力規制委員会の審査を経て,それぞれ平成28年6月と11月に運転期間延長の認可を得た。原子力発電所の今後の安定した長期運転のためには,安全性・信頼性の維持向上のためのきめ細かい保守管理活動を継続していくことが重要であるが,さらに,国内外の運転経験や高経年化に係る研究を含む最新技術知見に基づいて評価の充実や予防保全の観点を含む改善活動に努めていくことが重要である。

  • 江藤 和敏
    2018 年 60 巻 2 号 p. 85-88
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/04/02
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     いわゆる「新規制基準への適合性審査」に合格,再稼働した原子力発電所は,核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第四十三条の三の二十九に基づき,安全性向上評価,原子力規制委員会への届出,評価結果の公表を実施しなければならない。当社は,国内で初めて,川内原子力発電所第1号機の安全性向上評価を平成29年7月6日に,第2号機に関しては平成29年9月25日に原子力規制委員会へ届け出た。

     本稿では,これらの概要について述べる。

  • 新規制基準と安全目標の関係
    諸葛 宗男
    2018 年 60 巻 2 号 p. 89-92
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/04/02
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     原子力に対する社会的理解が厳しいことが,“唯一の被爆国”のせいだと主張する人がいるが,事実はそうではない。過去の世論調査データに拠れば戦後の世論は原子力発電に好意的だったが,原発が不祥事やトラブルを重ねるにつれて厳しい意見が増えてきたことが明確に表れている。つまり,多くの原子力専門家は厳しい意見の原因を自分たちと関係ない所に求めようとしているが,そうではなくて,原子力専門家自身の発言や行動の結果が厳しい世論になって跳ね返ってきている可能性が高いのである。もちろん,特定の組織や企業に原因を求めることは適切ではない。様々なことの積み重ねである。原子力に対する世論は,当然ながら福一事故後はさらに厳しくなっている。情報量が多く内容が難し過ぎるのも原因の一つだろう。社会・環境部会は日本原子力学会の情報発信も厳しい世論の原因の一端だったと反省している。その観点で学会からの情報発信をできるだけ判り易くすることも必要ではないかと考えている。本稿もその観点で市民の関心が高い規制基準の問題を取り上げている。

  • 我が国における活動事例
    山野 直樹
    2018 年 60 巻 2 号 p. 93-96
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/04/02
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     2011年3月の福島第一原子力発電所事故の社会的影響は,原子力・放射線に対する不安,嫌悪,忌避など,現在でも人々の意識下に沈着している。この傾向が今後も続くことは,原子力のみならず,医療を含む放射線利用や環境・エネルギー問題の合意形成にも大きな影響を与える。ここでは,消費者庁や学協会などの従来型,参加型のリスクコミュニケーションや筆者の地域参画型リスクコミュニケーションの実践経験を通して,市民との対話はいかにあるべきかを考える。

  • 海外の事例と日本への展開
    村上 朋子
    2018 年 60 巻 2 号 p. 97-100
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/04/02
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     原子力問題に限らないが,賛否両論がある事項,あるいはベネフィットとリスクとをはかりにかけて判断しなければならない問題の議論にあたっては,誰が「関係者(=ステークホルダー)」なのか,何のために議論をするのか,といった,いわばステークホルダーの定義とコミュニケーションの目的を明確化することは必須である。事業者や政府は,「国民全体」を対象とした画一的なアプローチに偏っている我が国の広報のあり方を見直し,例えば類似傾向を持つステークホルダー毎の対話の機会を増やす等の改善に取り組むことが望まれるとともに,特定の事業やプロジェクトの推進が目的である場合は,そのことを明言するべきであろう。

連載講座
  • 第5回 IAEAの核データ事業
    大塚 直彦, 河野 俊彦, 国枝 賢, 大澤 孝明
    2018 年 60 巻 2 号 p. 101-105
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/04/02
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     IAEA核データセクション(NDS)は,核データの収集・整備・配布・教育を通じて,原子力・非原子力分野における核物理の成果の平和利用を半世紀以上にわたり支援している。これらはいずれも国際協力事業であり,核データの先進国である我が国の大学・研究機関の核データ研究者が長年にわたって貢献している。本稿ではセクションの概要と実施事業を紹介する。

  • 第4回 第一原理計算によるタングステン中の水素の研究
    大澤 一人
    2018 年 60 巻 2 号 p. 106-110
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/04/02
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     核融合炉材料として利用が予定されているタングステンと水素および水素同位体との相互作用を第一原理計算によって研究した。核融合炉にタングステンを使う理由の1つは水素を全く固溶しない金属という点が期待されたからである。ところが,実験では表面近傍に相当な量の水素が残留し,計算でも空孔に多くの水素が捕獲されることがわかった。さらに,空孔中の水素は特異な配置をするなどの結果が得られた。本稿では,このような他の金属にないタングステンの特異性も述べる。また,熱力学的モデルにより有限温度の状態も解析した。

  • 第10回(最終回) 線量評価とリスクコミュニケーション
    斎藤 公明, 高原 省五, 植頭 康裕
    2018 年 60 巻 2 号 p. 111-115
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/04/02
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     日本原子力研究開発機構では,1F事故により放出された放射性物質に起因する外部被ばく線量,内部被ばく線量を評価するとともに,リスクコミュニケーション活動を継続して実施してきた。外部被ばくに関しては,統計的に被ばく線量分布を評価する手法,詳細な空間線量率の測定により個人線量を現実的に推定する手法をそれぞれ開発し評価を行った。内部被ばくに関しては,県民健康調査の中でWBCによる多数の住民を対象にした測定と線量評価を実施した。約250回におよぶ「放射線に関するご質問に答える会」を開催し,住民の不安に対応する活動を行った。

部会トピックス
  • 寺地 巧, 渡邊 豊, 久宗 健志
    2018 年 60 巻 2 号 p. 116-119
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/04/02
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     水化学は原子力安全に直接関与する重要な技術分野である。しかし,震災以降プラントが長期停止した状況に陥り,技術伝承や将来に関して不安視する声が聞かれるようになった。そこで,水化学部会では人材育成・将来構想をテーマにパネル討論を行い,更に若手と年長者22名を集めて10時間に及ぶ議論を行った。世代や立場により様々な意見はあったが,被ばく低減や腐食問題の解決に対して果たすべき役割は大きく,またそのポテンシャルを秘めた技術分野であることを再認識するに至った。今後は水化学ハンドブックや水化学ロードマップの改訂作業により次世代を育成しつつ,世界水準をリードすることが部会に課された使命と考えられる。

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