暗所や視認不可な場所で最大数十mm/年で進行する微生物が関与して誘起・加速する金属材料の腐食(微生物鉄腐食)は,突発的な石油パイプラインの破損を引き起こすなど,甚大な事故の原因となっている。福島第一原子力発電所の処理水タンクにおいても,細菌に由来する硫化水素が発生したことから,廃炉を進める上での新たなリスクとして懸念されている。本稿では,微生物鉄腐食の重要性,原因,現状の対策を俯瞰し,近年の基礎研究における進展である電気鉄腐食研究の世界的動向,ならびに筆者らのリスク評価技術開発の展望に関しても紹介する。
微生物は過酷な状況下でも蔓延っている。一つの理由として微生物がさまざまな機能を有していることが揚げられる。本解説では,過酷事故を起こした原子炉(スリーマイルアイランド原子力発電所やチョルノービル原子力発電所)での微生物に関する報告などから予想される燃料デブリの劣化への懸念を受けて,燃料デブリの劣化に係わる微生物機能について解説するとともに,最近行った微生物によるデブリ模擬体の劣化試験の結果の一部を紹介する。
メタンハイドレート(MH)の分布する東部南海トラフの海底表層からMH濃集帯までのコア堆積物について,メタン生成菌とメタン生成ポテンシャルの深度プロファイルを明らかにした。さらに,コア堆積物から多様な生きたメタン生成菌を培養することに成功し,これらの菌の性質を明らかにした。メタン生成菌の生育温度がメタン生成ポテンシャルの重要な要素であることを実験的に証明した。本研究により海底下の微生物によるメタン生成プロセスが明らかになり,微生物起源のMH形成過程や資源量評価につながると考えられる。
「すいへーりーべぼくのふね…」こう唱えて周期表に並ぶ元素名を記憶した方も多いのではないかと思います。森田らの研究グループは理化学研究所において1980年代の後半から新元素発見にむけた準備を始め,2012年までに3個の113番元素の原子の合成に成功しました。2015年の大晦日の早朝,国際純正・応用化学連合から一通のメールが届きました。私たちの研究グループを113番元素の発見者と認めるという内容で,長年待ち望んでいた「夢」がかなった瞬間でした。その後,元素名「ニホニウム」と元素記号「Nh」を提案し,「アジア初,日本発」の元素が周期表の一席を占めることになりました。これは日本の科学史上画期的な出来事であると考えます。約30年に及ぶ研究の過程,実験の詳細や苦闘を2回に分けてご紹介します。今回は,周期律発見と周期表拡大の歴史,日本の科学者の関与,ニホニウム発見への序章を紹介します。
日本原子力研究開発機構(JAEA)図書館では,福島第一原子力発電所事故に対応する研究開発の支援を目的に,関連情報を収集・整理し「福島原子力事故関連情報アーカイブ(FNAA)」として提供している。本稿では,FNAAの特徴である情報源への恒久的なアクセスの確保,利便性向上を目的とした分類構造の可視化,他機関データベースとの連携の各取組みおよび利活用の状況について紹介する。
WiN-JapanはWiN-Global年次大会を2022年5月に日本で開催した。「福島第一原子力発電所事故から11年が経過した廃炉と復興の進展」をテーマに,コミュニケーション戦略,廃止措置,カーボンニュートラル,ジェンダー・バランスなど最近の話題に関して活発な議論が行われた。本稿では,年次大会の内容を報告するとともに,最近のWiN-Globalの活動,海外の原子力界におけるダイバーシティ,ジェンダー・バランスの取り組みについて紹介する。
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