我が国の核燃料サイクルの中核と位置付けられていた「もんじゅ」。その廃炉はなぜ決まったのか。私たちはそこから,何を学ぶべきか。さらにそれは,今後の核燃料サイクル政策に,どのような影響をもたらし,私たちはどうふるまうべきなのか。座談会では「もんじゅ」の設計や建設,運転,そして廃炉に関わってきた当事者を交え,これらの問題を議論した。その結果,「もんじゅ」のような国家プロジェクトのあり方や進め方については強力なリーダーシップが必要で,その不在こそが失敗の大きな一因であり,このことは今も解決されることなく,温存されたままではないかとの指摘がなされた。
原子力規制委員会の「もんじゅ」への勧告は,最終的に「もんじゅ」を廃止措置に追い込む結果となった。あれから2年。「もんじゅ」の意義をここに改めて問う。日本のエネルギー事情の将来を俯瞰しすれば,資源のないわが国のエネルギー事情の事情にとって核燃料サイクルを閉じることのできる高速炉の意義はなんら変わるところがない。いまここで「もんじゅ」をやめてしまう訳にはいかない。今からでも遅くない“「もんじゅ」を活用すべき!”―行政経験豊かな碩学が改めて世論に問いかける。
日本の核燃料サイクル政策が,不透明になりつつある。高速炉開発に深く関わってきた河田東海夫氏は「将来の化石燃料の生産減退・価格上昇に備えたオプションとしての高速炉技術を保持しておくことは必須」と述べるとともに,「海水ウランを回収すれば軽水炉直接処分で十分との意見もあるが,それでは高レベル廃棄物の処分場面積は高速炉の場合の6倍に増える」と指摘する。また,いったん衰退した技術を復活させることは難しく,「高速炉時代が来た時に日本や米国は,中国に頼らざるを得なくなる」と危惧。「将来世代のために,エネルギー全体を見通した上で十分な知恵を出し合うことが必要だ」と述べた。
六ヶ所再処理工場の化学処理の主工程は実質的に完成しており,現在は新規制基準に基づき重大事故までを含めた安全対策の強化に取り組んでいる。当面はこの工事の完了と本格操業の実現が最も重要であるが,一方,廃炉の増加による軽水炉の発電容量削減との整合性や,プルサーマル対象炉の再稼動,分離プルトニウム保有への理解の訴求など,周辺との関係にも意を用いる必要がある。さらに軽水炉リサイクルの能力の限界を踏まえれば,資源の乏しいわが国の将来にとって切り札となる高速増殖炉とその核燃料サイクルの準備も重要である。
我が国の動力炉開発方針とその経緯,原子力エネルギーに対する今日的なニーズなどを踏まえ,2030年あるいは2050年に向けての新型炉開発計画に求められる要素を整理した。新型炉開発計画を策定するにあたり,技術的成熟度に加え,多様な評価軸をもってレビューを実施し,それを踏まえた定期的な見直し戦略的柔軟性とエネルギー自立を調和させる枠組みが求められる。2050年に向けての我が国の技術力と組織力のチャレンジである。
原子力機構は高速炉サイクルの開発当初から,軽水炉サイクルに対し経済的競合性を持つシステムとすることを開発目標の一つとして掲げその研究開発を進めてきた。本稿では,高速増殖炉サイクル実用化研究開発(FaCT)フェーズⅠにおけるナトリウム冷却高速炉及び燃料サイクル施設の設計をベースに,追加的な安全対策費や社会的費用を考慮し,高速炉サイクルの発電コストを試算した結果を紹介する。
WEO2017では,2040年にかけて,経済性のあるエネルギー資源の枯渇化や,気候変動問題を踏まえれば,米国,欧州,アジアの主要な電力市場において,太陽光・風力発電といった再生可能エネルギー導入拡大の国際的なトレンドの中にあっても,原子力発電は重要なエネルギー源となることが示唆されている。日本では,将来のエネルギー情勢の緊迫化と温室効果ガス排出削減への国際的圧力の高まりの可能性を踏まえ,原子力を有望な技術オプションとして長期的に維持することが重要であると考えられる。
核融合炉においてトリチウムの取扱は燃料制御と安全確保の観点から重要である。核融合炉の継続的な運転のためにはブランケットシステムでのトリチウム増殖が必須であるとともにトリチウムの閉じ込め,回収等によるロスを低減させることも必要不可欠である。そのためにはプラズマ対向壁中でのトリチウム蓄積の理解とその効率的な回収手法の検討が必要である。ここではプラズマ対向壁タングステン中でのトリチウム蓄積とその除染手法の検討状況について解説する。
本シリーズでは欧米や日本にあるいくつかの大学における原子力教育の事例を紹介する。原子力教育カリキュラムの内容や教員の待遇,あるいは共同利用施設の運用などは,各大学でさまざまに異なる。ここでは各大学の事例を紹介してそれらの差異を考察することで,日本の大学における原子力教育の今後の改善に資することができることを期待したい。第1回目となる今回は東京工業大学の教育事情を紹介する。
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