1) 不妊虫放飼法によるウリミバエの根絶防除においてしばしば難防除地域になる,ホット・スポット(不妊虫放飼効果からの野生個体群の空間的なエスケープ)の出現地域を防除開始前に予測するために,トラップによる誘殺虫数と主要寄主植物の採果数からその地域の特徴を明らかにした。
2) 沖縄本島南部におけるウリミバエの季節的発生消長は,トラップによる誘殺虫数と沖縄県内で本種の主要野生寄主であるオキナワスズメウリ,クロミノオキナワスズメウリと栽培寄主であるニガウリの採果数の季節変化から,四つのZoneに分けることができた。すなわち,Zone Iは,1日1,000トラップ当りの誘殺虫数が年間を通して1,000以上という高い値で推移し,冬春期に野生寄主,夏秋期に栽培寄主と連続して豊富に存在する地域である。Zone IIは夏秋期の誘殺虫数が1,000以上で推移するが,冬春期は,野生寄主が比較的少ないため誘殺数は連続して1,000以下になる地域である。栽培寄主の少ないZone IIIの地域は冬春期に野生寄主が多く,トラップ誘殺虫数もこれを反映した消長を示す地域である。Zone IVは寄主植物が少なく誘殺虫数が年間を通して低い値で推移する地域である。
3) Zone Iに相当する糸満市では不妊虫の放飼開始から4か月を経過した時点でのS/N比が1以下,追加放飼をした後も4前後で推移したのに対し,Zone IIに相当する豊見城村では,S/N比が不妊虫の放飼開始直後から急激に高くなり,4か月頃から野生虫がほとんど採集できない状況になった。
4) 以上の結果,Zone Iの地域は,不妊虫放飼法による本種の根絶防除においてしばしば難防除地域となり,より強い防除圧を必要とするホット・スポットになりやすいことが明らかにされた。
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