日本応用動物昆虫学会誌
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1 巻, 3 号
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  • I. 幼虫休眠を維持する頭部内要因について
    深谷 昌次, 三橋 淳
    1957 年 1 巻 3 号 p. 145-154_2
    発行日: 1957/09/30
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    ヨトウムシの前蛹からとったいわゆる活性化した前胸腺をニカメイチュウの休眠期幼虫に移植しても直ちに蛹化する個体はほとんどなく,多くのもの(32.0∼66.7%)は過剰脱皮をしてプロセトリーといわれる幼虫と蛹の中間型で幼虫態に近いものを生ずることがわかった(第2表参照)。一方この活性化した前胸腺を休眠期幼虫の遊離腹部あるいは頭部を除去したものの体内に移植するとかなりの高率(26.7∼60.0%)で蛹化の起ることが確かめられた(第3∼4表参照)。また幼虫の蛹化に関与する脳の臨界期は蛹化前2日(25°C)にあることが明らかにされているが(深谷,1955),この臨界期直前の脳を休眠期幼虫に移植した場合にも前胸腺を移植したときと同様に過剰脱皮が起ってプロセトリーを生ずる(第6表参照)。しかしこの場合に見られるプロセトリーはわずかに触角と尾脚に異状が認められる程度にすぎない。一方,結紮によって頭部を除去した幼虫に臨界期前の脳を移植すれば正常な蛹化(18.5%)を誘導することができる(第7表参照)。
    以上の結果から頭部内には活性化した前胸腺あるいは脳の働きを直接にかあるいは間接に阻止するような要因の存在することが明らかにされたが,上述したように休眠期幼虫が過剰脱皮をして種々な段階のプロセテリーを生ずるという事実からこの阻止的に働く要因はアラタ体そのものに由来することが推論される。したがって,アラタ体は幼虫の休眠期を通じてその活性を維持していること,しかもこうした状態が幼虫休眠の特徴的一面であることに注目する必要がある。
    またさらに休眠期幼虫に対し特殊の頭部結紮法(第2挿図参照)を適用して脳をアラタ体∼咽喉側神経球結合から切り離して前胸部に移動させると低率(3.7∼7.4%)ではあるが,短期間内に蛹化する個体を生ずる(第8表参照)。それは不活性状態にある脳が頭部内に存在する抑制的要因の影響力から離れると直ちに活性化されうることを示しているようである。
  • 立花 観二, 長島 親男
    1957 年 1 巻 3 号 p. 155-163
    発行日: 1957/09/30
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    従来完全虫体のままではきわめて困難であった幼虫背脈管搏動曲線の記録を,光電効果を利用することによって容易なものとし,またエーテル麻酔のもとで虫体活動電流を誘導してその搏動曲線を記録した。
    1) 虫体背面体皮より透視できる背脈管の心臓部へ一定光源を照射し,その反射光線の変化を光電管によってとらえ,これを電気的変化として搏動曲線を記録した。
    2) 光電効果を利用する搏動曲線記録装置は,光電流発生装置,増巾装置,記録装置の三つよりなる。
    3) エーテル麻酔を行った幼虫の背脈管搏動にともなう活動電流を虫体表面および虫体内部から誘導し,いわゆる心電図を記録した。
    4) 搏動にともなう活動電流を誘導しこれを記録する装置は電極,増巾装置,記録装置の3つよりなる。
    5) 光電効果の適用と活動電流を誘導する方法の2つによってえられたものを従来のものと比較し次のような考察を行った。
    i) ワモンゴキブリの機械曲線(YEAGER, 1938)とカイコのそれは波形が酷似し,収縮直前にノッチが存在する。カブトムシの活動電流にはノッチを欠き,波形も著しく特異であるが,機械曲線には収縮直前と休息期前に大きなノッチが存在する。
    ii) カブトムシ幼虫背脈管における心臓部の波形と大動脈部の機械曲線のそれは著しく相異し,前者では収縮期が短く,後者では長い。
    iii) 幼虫背脈管における自働性の中心は筋原性であるといわれているが,搏動によって,もっとも高い電位を示す個所は心臓部第1室の両側であること(第5図×印)を知った。
    iv) エーテル麻酔虫(カブトムシ3令幼虫)の搏動の虫体表面誘導による活動電位は,9∼15μV,虫体内誘導によるものはほぼ150μVであった。
    v) 心臓搏動と大動脈波,あるいは同一心臓内部においても誘導個所をずらせて同時記録すると,それぞれ収縮が後方より前方に移行する時間的経過をよく説明できる。
    6) 虫体背脈管搏動におよぼす薬剤その他の影響を,その搏動曲線の波形,振巾,周期などによって調査することが可能となった。
  • III. ウンカ類の長翅型と短翅型における形態的および生理的相違について
    岸本 良一
    1957 年 1 巻 3 号 p. 164-173
    発行日: 1957/09/30
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    トビイロウンカ,セジロウンカ,ヒメトビウンカについて,いろいろな形質の翅型による差を調べた。
    1) 形態的形質についてみると,前,後翅とも長翅型は完全で,短翅型は短く,不完全な発育しかせず,後翅はまったく痕跡的である。小楯板にも同様の差がみられ,長径においてその差がはっきりしている。
    2) 後脚の長さ,産卵管長では逆に短翅型のほうが大きく,羽化直後および産卵期間中の平均体重でもこの傾向が見られ,翅を除く一般的体型においては短翅型が大きいと考えられた。
    3) 総産卵数は個体による変化が大きく,翅型による差ははっきりしない。同様に成虫寿命においても差ははっきりしないが,産卵期間中の平均体重などとともに考えれば,やや短翅型のほうが,産卵数においてもまさるようである。個体ごとにみて,産卵数と寿命の間にははっきりした正の相関が見られる。
    4) 産卵前期間では,短翅型のほうが明らかに短く,低温によってもあまり延長しないが,長翅型では低温によって大きく延長する。
    5) 羽化後,水以外の食物を与えず寿命を調べたところ,雌雄とも長翅型のほうが明らかに長い。
    6) 羽化後毎日体重を測定したところ,短翅型ではすぐに体重増加が見られるのに対し,長翅型では1∼2日おくれる。これによって産卵前期間の差が生ずるものと思われる。羽化直後から産卵開始までに体重は70∼80%増加する。産卵開始後も平均値を中心に20∼30%の範囲内で上下に変動しながら産卵を続ける。雄では体重の変化はほとんどない。
    7) 短翅型-長翅型関係をadult-jevenile関係とみなして,それぞれのもの適応的意義について論じた。
  • 立川 哲三郎
    1957 年 1 巻 3 号 p. 174-179
    発行日: 1957/09/30
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    In this paper I gave some notes on three chalcidoid parasites reared from various species of diaspidine scales in Japan.
    1. Records of their hosts are summarized as follows:
    1) Arrhenophagus chionaspidis AURIVILLIUS (Encyrtidae: Arrhenophaginae) Aulacaspis yabunikkei KUWANA (new host record)………Cape of Ashizuri, Shikoku. Phenacaspis cockerelli COOLEY (=P. aucubae COOLEY=P. dilatita GREEN=P. eugeniae MASKELL)………Cape of Ashizuri, Shikoku. Pinnaspis aspidistrae SIGNORET………Shizuoka Pref., Honshu (After Shizuoka Agr. Exp. Sta; ISHII). Host unknown………Atami, Honshu. (After HOWARD).
    2) Aspidiotiphagus citrinus CRAW (Aphelinidae) Aonidiella aurantii MASKELL………Kagoshima Prefecture, Kyushu (After SAKAI). Aspidiotus destructor SIGNORET………Matsuyama, Shikoku. A. cryptomeriae KUWANA (new host record)………Sakurasanri, Ehime Prefecture, Shikoku. Pinnaspis aspidistrae SIGNORET (=P. ophiopogonis TAKAHASHI)………Oita, Kyushu; Matsuyama, Shikoku. Host unknown………Yokohama, Honshu (After HOWARD).
    3) Azotus capensis HOWARD (Aphelinidae) Aulacaspis difficilus COCKERELL (new host record)………Matsuyama, Shikoku. Pseudaonidia duplex COCKERELL (new host record)………Matsuyama, Shikoku. Pseudaulacaspis pentagona TARGIONI………Tokyo, Honshu (After KUWANA; NAKAYAMA).
    2. The male of Arrhenophagus chionaspidis AURIVILLIUS was described from a unique specimen from Macao, South China, by Howard in 1898. It is remarkable that I had the good chance to rear the second male of the same species from Phenacaspis cockerelli COOLEY which was collected at the Cape of Ashizuri, Shikoku. After careful examinatian of this specimen which was mountedin balsam, I could find the noteworthy fact that the male antenna consists of 9-joints, and contrary to the original description of Howard (1898) the funicle is apparently 6-jointed and the club is solid (fig. 2: B), as is the case of many Encyrtid males. Therefore, I can assume that the male specimen examined by Howard (loc. cit.) might have been a malformed individual.
  • 1957 年 1 巻 3 号 p. 179
    発行日: 1957年
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
  • I. 抵抗性品種の検定法についての一つの試み
    湯嶋 健, 富沢 純士
    1957 年 1 巻 3 号 p. 180-185
    発行日: 1957/09/30
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    イネカラバエに対するイネの抵抗性については従来から多くの研究があり,またその検定法についても幾つか報告されている。このなかで最も普通に用いられているのは傷穗率による方法と傷葉率による方法の二つである。最近岡本(1955)はこれらの検定は苗代において若い苗を用いて行うべきであると主張しているが,この方法はイネの生育程度が各品種とも均一である点で優れている。岡本(1955)はさらにこの方法によった傷葉率は傷穗率と高い相関のあることを述べている。しかし逆に相関のない品種が幾つかあることもまた事実である。
    そこで,われわれはこの問題を孵化幼虫あるいはある程度生育した幼虫をイネに接種する方法(湯嶋・富沢,1957)を用いて,何が本当にイネの抵抗性を表示するものであるかを調べて見た。その結果,傷葉の出現状況,幼虫の死亡あるいは蛹の形成を時間的に追跡することによってつぎのようなことがわかった。
    1) 傷穗率の多少は必ずしも抵抗性の強弱を示さない場合があり得る。
    2) 抵抗性品種でも幼虫の食入率は感受性の品種と相異が見られない。
    3) 抵抗性品種に食入した孵化幼虫は短期間のうちに死亡が起る。このことは2令の幼虫を接種した場合にも見られるが,3令の幼虫を接種した場合には感受性品種との相異がほとんど見られない。したがって,抵抗性品種のもっている要因は若令幼虫に対して強く働くものであろうと考えられる。
    4) 傷葉率による方法はもしも蛹化がすみやかに行われたならば,感受性であるにもかかわらず,傷葉数の減少を引き起すことになってしまう。したがって岡本(1955)の方法は苗代イネを用いて,時間-死亡率曲線を各品種について求めるというように改めるのがよいのではないかと提唱した。
  • 二宮 栄一
    1957 年 1 巻 3 号 p. 186-192
    発行日: 1957/09/30
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    In this account a record is given of the food-habits of 12 species of aphidophagous Syrphidae commonly found in crop fields in Nagasaki. Food lists of Ischiodon scutellaris FABR., Paragus quadrifasciatus MEIG., P. tibialis FALLÉN, Sphaerophoria cylindrica SAY, Sph, javana WIED., Syrphus torvus O.S. and Epistrophe aino MATS., with notes of their attacking dates of plant-lice, are given. Those of Syrphus ribesii L., S. serarius WIED., S. bilineatus MATS., Metasyrphus corollae FABR., and Epistrophe balteatus DE GEER were previously published by the writer in 1956. The plant-lice attacked by the 12 syrphids amount to 40 species, which belong to 20 genera, Aphis, Macrosiphum, Amphorophora, Capitophorus, Myzus, Rhopalosiphum, Hyalopterus, Macrosiphoniella, Brevicoryne, Phorodon, Pseudocerosipha, Megoura, Acyrthosiphum, Glyphina, Neophillaphis, Periphyllus, Prociphilus, Eulachnus, Lachnus, and Oregma, about 83 per cent of which belong to the tribe Aphidini of the Aphididae, being parasitic on 65 species of plants including common crops. Among these syrphids, Epistrophe balteatus may rank first in attacking as many as 37 species of plant-lice, while Syrphus torvus and Epistrophe aino may be the lowest ranking on the list, devouring merely 4 species of aphids respectively. The nonconcentricity of aphidophagous capacity is also discussed. With regard to to the aphidophagous capacity of syrphids, single aphidophagous capacity may be distinguished from complex aphidophagous capacity, the former consisting of any single species of syrphids and the latter being composed of more than two species of them. Because of their simultaneous employment of single aphidophagous capacity in the destruction of the same or different plant-lice on different kinds of plants, the aphidophagous capacity of syrphids can not be exclusively concentrated on the destruction of a spefcific plant-lice on a specific crop during the same season. Complex aphidophagous capacity, in the same way, can not be exclusively concentrated upon the control of a specific aphid on a specific plant. In other words, during the same season, any single or complex aphidophagous capacity employed in the destruction of a specific aphid on a specific crop may simultaneously be dispersed toward the same or different aphids on different plants.
  • XI. リンゴ樹における昆虫群集の水平構造
    福島 正三
    1957 年 1 巻 3 号 p. 193-200
    発行日: 1957/09/30
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    1) リンゴ樹におけるハダニおよび昆虫群集の水平構造を明らかにし,群集構成種の季節的移動,相互関係などについて二,三の考祭を行った。
    2) 群集の構成を方位別にみると,南面の個体密度が最も大で,西,北,東面および中央部の順に小となっている。しかし種数の分布は必ずしも上と一致しない。
    3) 5月より10月末までのリンゴ樹における群集の動きに3つの山がみられ,南,西面の群集の変化がこれと最も並行性を保つ。群集の方位別変遷は下表のとおりである。
    4) リンゴ樹の枝葉間の気象条件のうち,温度,湿度,照度,日射量をみると,東面においては他よりも高温,低湿,高照度でかつ日射量大となっている。この場合高温と個体密度の間には必ずしも並行性がみられない。
    5) 調査期間内では群集構成種間の季節的水平移動は著しくない。なお害虫と天敵との間に二三の相互関係がみとめられた。
  • 上田 金時
    1957 年 1 巻 3 号 p. 201-203
    発行日: 1957/09/30
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    ニカメイチュウのチトクロームオキシダーゼの活性度を,スペクトロフォトメーターによって休眠幼虫から羽化に至るまで測定した。酵素標品は生体重量(g)当りで1:1,000に稀釈した。
    チトクロームオキシダーゼの活性度は幼虫の最終令期すなわち休眠期に高く,化蛹期に近づくに従って減少し,蛹期の前半期に最低となり,次に羽化に近づくに従ってふたたび増加し,U字型曲線の消長を示した。
  • IV. 飼育密度の影響による幼虫期の発育促進とその機構について
    平田 貞雄
    1957 年 1 巻 3 号 p. 204-208
    発行日: 1957/09/30
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    幼虫を1頭の単独区と5頭の集合区の2区に分けて飼育し,3時間おきに発育の進み方を観察し両区の各令の発育所要時間をくわしく知り,かつ脱皮および就眠曲線の虫令に伴う変化を比較検討したところ次の諸点が明らかになった。
    1) 集合区では単独区の約90%の期間で発育を終えるが,このような発育の促進は主として摂食期間が短縮されることによるものであり,眠期間は両区でほとんど差がない。
    2) 発育速度の個体変異は両区ともに虫令が進むにつれて大きくなるが,集合区では単独区に比べて若令期に大きいが3令頃で同じくなり,以後の令期では小さく虫令に伴う増大の程度が低い。
    3) 就眠および脱皮曲線は両区ともに若令期は単峯型で,3令頃に2峯型となり,その後虫令が進むにつれて多峯型となる。このように曲線がいくつかの山に分れることは就眠および脱皮の機能発現に日週期性が存在することによる。すなわち発育速度の個体変異が大きく,したがって全個体が就眠および脱皮するのに要する期間が長く数日間にまたがる単独区では山の数が多く,そうでない集合区では山の数が少ない。
  • I. 孵化に及ぼす減圧の影響について
    後閑 暢夫, 山中 浩, 藤田 節也
    1957 年 1 巻 3 号 p. 209-212
    発行日: 1957/09/30
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    コナマダラメイガは種々の貯穀類,食品類の害虫として知られている。本実験では25°Cにおいて減圧の程度と処理日数が孵化に及ぼす影響について究明した。
    すなわち,99本の試験管にそれぞれ0.55gのミルクココアと卵20粒を入れ,これらを3つに分けそれぞれを760mmHg, 380mmHg, 190mmHgとした。減圧処理後1, 2, 3, 5, 7, 9, 11, 14, 17, 20, 23日後におのおのの区から3本ずつ取り出し常圧に戻し,その際の孵化数とその後の孵化数の増加を調べた。
    その結果380mmHgの場合は,760mmHgに比し孵化率においては有意な差が認められるが,380mmHg区内においては処理日数の差による孵化率の差の有意性は認められない。また経過日数と孵化率関係も処理日数による差はなく,孵化を遅延する作用はない。
    190mmHgの場合は前の2区に比し孵化率は非常に明かな差があり,5日以上処理した区は孵化率は0%である。また処理日数の差によっても孵化率に有意の差が認められた。
  • 竹沢 秀夫, 近岡 一郎, 二宮 融
    1957 年 1 巻 3 号 p. 213-215
    発行日: 1957/09/30
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
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