日本応用動物昆虫学会誌
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20 巻, 2 号
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  • II. ヨコバイの発育段階における摂食習性の比較
    内藤 篤
    1976 年 20 巻 2 号 p. 51-54
    発行日: 1976/06/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    ツマグロヨコバイの摂食習性が,1齢幼虫から成虫にいたる発育段階によって変わるかどうかを,前報と同じ方法によって調査した。その結果,基本的な摂食習性は発育段階や性別によって変わることはなかったが,若干の相違がみられた。
    その1つは幼虫1齢期において,大維管束への挿入が特に少ないことであり,これは口針の長さと関連があるように思われる。
    幼虫期は一般に師部より木部への挿入が多く,成虫では雌において同様の傾向がみられた。
    唾液鞘物質による師部や木部の閉そくは,幼虫の発育段階が進んだものほど多くなる傾向がみられたが,成虫は4, 5齢幼虫と大差なかった。
  • 土生 昶毅
    1976 年 20 巻 2 号 p. 55-60
    発行日: 1976/06/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    マツカレハDendrolimus spectabilisは個体変異が大きく,化性の複雑な生活環が繰返されているようである。ここでは6地方の個体群について越冬状態,越冬後の発育,恒温条件下での発育を調べ生活環の地理的な変異を考察した。
    休眠越冬中の幼虫はその頭幅から判定すると北方の個体群では3∼4令で,しかも比較的そろっていた。一方南へ行くにしたがい体が大きく,また大きさにばらつきがみられ,5∼7令もしくは8令であった。越冬幼虫を京都で自然温度下で飼育した時,蛹化までの脱皮回数は北方の個体群ではほとんどが4同でそろっていたが南方のものは1∼4回とばらついた。蛹の生重量は北のものほど軽かった。成虫の50%羽化日は越冬令期の若い北方のものほど早くなる傾向が有ったが,羽化成虫の出現初日は南方の個体群ほど早くなった。羽化期間は越冬幼虫の令期のばらつき方に対応していて,北方の個体群では比較的そろっており(約1ヶ月),南方のものほど長期にわたって連続的であった(約2ヶ月)。
    長日,25°Cの恒温条件下で卵から羽化まで飼育したところ,いずれの個体群も成虫羽化が約30日にわたるが,発育完了に要する平均日数は北方の個体群ほど少なくなる傾向がみられた。幼虫の体の大きさや蛹の生重量は北方の個体群ほど少さくなる傾向があった。
  • 第1報 ウイルス感染による変態の異常
    石川 光一, 室賀 政邦
    1976 年 20 巻 2 号 p. 61-68
    発行日: 1976/06/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    ニカメイガ幼虫およびハチミツガ幼虫を用いて,CIVを接種した場合に,感染虫の変態に異常が起る現象について実験を行なった。
    (1) ニカメイガ非休眠終令幼虫に対して,CIVを経皮接種したところ,供試虫40頭のうち32頭がCIVに感染し,しかも感染虫全部が蛹への変態に異常を現わした。すなわち,幼虫と蛹の両形質をもつ中間型いわゆるプロセテリー,あるいは過剰脱皮幼虫などが出現した。
    (2) ハチミツガ終令(7令)幼虫に対して,高度に精製したCIVを経皮接種したところ,供試虫406頭すべてがCIVに感染し,変態に異常を現わした。すなわち,接種時期の違いにより,いろいろな程度に幼虫と蛹の形質を合せもつ中間型が出現し,これらの中間型をI∼VIをのタイプに分け,その特徴を比較した。
    (3) ハチミツガ幼虫において,終令後期にCIVを接種した場合,感染しているにもかかわらず蛹化する個体がみられ,それらの多くは成虫化したが,一部の感染蛹は第2次蛹を形成した。
    (4) ハチミツガの6令2∼3日目の幼虫にCIVを接種したところ,接種後3∼6日目までにすべてが幼虫脱皮を引き起した。これらの個体はすべてCIVに感染しており,しかもその大部分は終令幼虫のまま2ヵ月以上も生存した。一方,CIVを蛹に接種した場合,感染したにもかかわらず変態の異常は認められなかった。
    (5) ハチミツガ終令3日目の幼虫に対して,紫外線照射および熱処理により不活化したCIVを高濃度で接種したところ,ほとんどが蛹化し,さらにその半数以上は正常に羽化した。
  • 新井 哲夫
    1976 年 20 巻 2 号 p. 69-76
    発行日: 1976/06/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    (1) ミカンコミバエDacus darsalis HENDELの羽化の日周期性を解析する実験を行ない,次の結果を得た。
    (2) 温度周期(25:20°C)を与えると,全暗(DD),全明(LL)のいずれの条件でも温度上昇時刻の頃に羽化が集中した。また明暗周期を与えると,25°Cでは暗→明後2時間以内に羽化が集中したが,20°Cでやや遅れる傾向がみられた。
    (3) 温度周期の後に25, 20°Cに移すと羽化リズムが持続されたが,15°Cでは消失した。明暗周期の後には,DD, LLのいずれでも羽化リズムは持続した。
    (4) 温度周期(25:20°C,各12時間)の位相を変えると,老熟幼虫を餌から取り出して12日目までの変化ではほぼ新しい周期に同調して羽化するが,13日目では,位相の変化量に応じて異なる結果が得られた。
    (5) 蛹化後3日目に蛹を土から取り出し,2∼4日目に明暗周期(25°C, 12L:12D)を180度転換させると新しい周期に同調して羽化したが,7∼8日目だと,もとの周期に同調して羽化した。
    (6) 非24時間の温度周期の場合,温度周期が24時間またはその約数に近いと温度周期に同調して羽化するが,それよりずれると温度周期に同調できなくなる。また24時間に近いと羽化のばらつきが小さく,その倍数の周期の羽化のピーク間隔は,約24時間であった。
    (7) 暗→明の単一刺激によっても羽化時刻は設定されるが,羽化開始前48時間以内に与えられた場合のみ有効であった。一方,明→暗の単一刺激は効果がなかった。
    (8) 温度周期(25:20°C,各12時間)と明暗周期(12L:12D)を組み合わせると,明暗周期に関係なく,温度上昇後2時間以内に羽化のピークがみられた。
    (9) 以上の結果から,この種の羽化時計の性質を2, 3指摘した。
  • 村本 寛樹, 早田 栄一郎, 平野 千里
    1976 年 20 巻 2 号 p. 77-80
    発行日: 1976/06/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    A semi-quantitative laboratory bioassay method was devised for the female sex pheromone of Brachmia macroscopa. The bioassay was carried out with male moths, 5 each in a 200-ml Erlenmeyer flask, at 25°C in the light. They were kept under continuous illumination for 3 days after emergence, subsequently in the dark for 6hr, then again in the light for 30 to 60min. The number of males rapidly walking or running with wing-fanning within the first 1min after the introduction of a test sample applied on a square filter paper (1.5×1.5cm) was used as a measure of response. Mean male response was 70% to the pheromone at the concentration of 0.1 female equivalent and about 50% at the 0.01 female equivalent.
  • 玉木 佳男, 大沢 敏郎, 湯嶋 健, 野口 浩
    1976 年 20 巻 2 号 p. 81-86
    発行日: 1976/06/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    ハスモンヨトウ(Spodoptera litura (F.))の処女雌が放出する物質をロ紙吸着法で採取し,低沸点エステルを構成するアルコールアセテートに誘導して検索したところ炭素数8から18にいたる飽和直鎖アルコール10種のほか,(Z, E)-9, 11-TDDA (A), (Z, E)-9, 12-TDDA (B), (Z)-9-tetradecenyl acetate (TDA) (C), (E)-11-TDA (D),および未同定のTDDA 1種を検出した。これらのうち処女雌がアセテートとして放出しているのはA, B, CおよびDの4化合物であった。これら4化合物の生物活性を野外で検討したところ,ハスモンヨトウ雄成虫に対する誘引活性は,AB混合物(リトルア)が最も高かった。化合物CおよびDは化合物AおよびBのいずれにも置換しえず,リトルアに対する共力効果も認められなかった。また,化合物Cは添加量が多くなるとリトルアの誘引活性を明らかに阻害した。したがって,化合物CおよびDはハスモンヨトウの誘引性性フェロモン成分ではない。
  • 村越 重雄, 磯貝 彰, 張 清芬, 上門 敏也, 桜井 成, 田村 三郎
    1976 年 20 巻 2 号 p. 87-91
    発行日: 1976/06/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    植物地上部(主として葉)のメタノール抽出物が,カイコの生育に悪影響をおよぼすことを確認された,アボカド中に含まれる活性成分の単離を行なうとともに,それら活性物質ならびに関連化合物が4眠交雑種カイコ幼虫の生育におよぼす影響を調べた。
    アボカド生葉より2種の活性成分が単離され,一方はdimethylsciadinonate (Ia)に一致し,他方は長鎖の新化合物,1-acetoxy-2-hydroxy-4-oxo-heneicosa-12, 15-diene (IIa)と決定された。また,春の生葉中にはIIaが多く,Iaは少なかったが,秋の生葉中からはIaのみが単離された。
    Iaを人工飼料中に100ppm以上添加し,4齢起蚕より連続投与したところ,幼虫の生育は阻害され,3眠蚕が出現した。また,関連化合物のIbとIcにも類似の活性が認められ,その活性の強さは,Ic>Ia>Ibの順であった。
    IIaを人工飼料中に200ppm以上添加すると,4齢幼虫は2日後より吐液して虫体縮小し,強い生育阻害が認められた。3齢幼虫に対しては,70ppmでも幼虫脱皮後の4齢で中毒症状を現わした。IIaのテトラヒドロ誘導体であるIIbは,IIaと類似の活性を示したが,フラン誘導体であるIIcには,まったく活性がみられなかった。
  • 田中 一行, 川上 敏行, 竹田 寛
    1976 年 20 巻 2 号 p. 92-100
    発行日: 1976/06/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    性フェロモンの生成に日周性をもつエリサン誘引腺の微細構造について観察した。
    1) 誘引腺細胞の外表面は,多くの表面突起によっておおわれ,クチクルの断面には突起部をはじめ,その全面に多くの孔道が観察された。
    2) エンドクチクルの孔道内には,孔道内小管が認められた。孔道内小管は樹枝状に連絡し,その内腔には微粒状物や暗物質を内在している。
    3) 腺細胞の上縁は等間隔かつ連続的な深いおち込みにより,おうとつしている。その陥部はよく発達した微絨毛によって埋められ,その突部は孔道の基部である落穴状構造の底部と接している。細胞の基底部には細胞膜のおち込みによる細線状の多くの陥入がみられた。
    4) 核は分岐核であり,物質産生活動の活発であることがうかがわれた。ミトコンドリアは細胞の上部に多くゴルジ装置には大形の空胞がみられ,発達した微小管が細胞の縦に走行し,その先端が細胞上縁の突部に集中してみられるなど,細胞質に特異性が示された。
    5) 微小管は微絨毛を貫通して,クチクルの孔道および孔道内小管に連絡しているようにみられた。
    6) 誘引活性をもたない昼間の腺細胞は,夜間の腺細胞にみられた脂質滴や基質成分をかなり消失している。このことから,これらの物質が性フェロモンの担体ないしその素材として用いられているように思われる。
  • 中尾 舜一, 大串 龍一
    1976 年 20 巻 2 号 p. 101-109
    発行日: 1976/06/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    The ecological investigation was carried out on the predaceous Coleoptera in various citrus orchards in the collective pest-controlled area, Chiziwa-machi, Nagasaki Prefecture, Japan, and the following results were obtained. In either controlled or uncontrolled citrus orchards, the population densities of Pseudoscymnus hareya, Hyperaspis japonica, Stethorus japonicus, Scymnus rectus, Scymnus ishidai and Telsimia nigra were relatively high. Only in the controlled orchard, Pseudoscymnus hareja and Stethorus japonicus were found comparatively in large numbers. Comparison of the predator density between the controlled and uncontrolled orchards revealed that the density in the former was much lower than that in the latter, being as low as only about 1/10. In the controlled area, the larger number of species and a little higher predator density were found in the adult tree orchards (tree age above 10 years) whereas in the young tree orchards (tree age below 10 years) the predators of the scale insects were not found at all but only the predators of aphids and citrus red mites. Thus, there was a difinite relation between the predator and pest densities. The predator density was low immediately after the spray of pesticides, and showed a gradual increase with the lapse of days. Comparison of the number of all insects other than the major pests between the controlled and uncontrolled orchards showed that relatively large numbers of both Coleoptera and Hymenoptera were found in the uncontrolled orchards.
  • 腰原 達雄, 山田 偉雄
    1976 年 20 巻 2 号 p. 110-114
    発行日: 1976/06/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    1. 小型プラスチック容器を用い,ナタネの芽ばえを飼料とするコナガ幼虫の簡便な飼育法を考案確立した。この方法による継代飼育も可能である。
    2. 幼虫は芽ばえの子葉,茎を摂食し発育を遂げた。発育は良好で,ナタネ芽ばえ(種子重7g)を収容した容器の幼虫飼育密度を100頭とした場合,蛹化率は高く90%以上にも達した。幼虫発育速度,蛹重,蛹から羽化した成虫の産卵数は,キャベツ葉で生育したものと同等であった。
    3. 7gのナタネ種子を用い,発芽直後の芽ばえに成虫3対を2∼3日間放飼,産卵させ,幼虫を飼育すると,25°C恒温条件下で成虫放飼約15日後には蛹化がほぼ終了し,約100頭の蛹を得ることができた。
    4. 飼料の芽ばえは更新することなく幼虫を飼育できた。蛹化は,幼虫発育終了間ぎわに容器内に挿入した,波形に折目をつけたろ紙片下面で大部分が行なわれ,蛹を容易に採集できた。
  • III. 増殖能力
    植松 秀男
    1976 年 20 巻 2 号 p. 115-119
    発行日: 1976/06/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    マダラツヤコバチの増殖能力に関与する要因について調査し以下の結果を得た。
    1. 羽化直後の成虫には成熟卵は認められず,本種はFLANDERS (1950)が定義しているsynovigenicな型のpolyootene typeに属する種で,一時の成熟卵の蔵卵数は10個以下である。
    2. 産卵は羽化後1∼2日以内に開始され,産卵期間は30日内外である。1日当りの産卵数は2∼6個で一生の間に平均106卵を産む。50%の累積産卵率は羽化後12日に達成される。
    3. 成虫の寿命および母虫の大きさと総産卵数の間にはそれぞれr=0.7810, 0.7305の有意な相関が認められ,寿命が長いほど,また大きい個体ほど多産である。成虫の寿命は産卵の有無によって影響されない。
    4. 母虫の日令あるいは大きさは子世代の生存率に影響し,日令の若いそして体の大きい親に由来する卵の成虫羽化までの生存率は高かった。日令の進んだ親は雄のみを産む傾向があった。
    5. 25°C, 60%RH, 14時間照明の恒温槽内でのマダラツヤコバチの純繁殖率は36.004で,1世代に要する平均時間と内的自然増加率はそれぞれ32日と0.112/♀/日であった。
    6. 野外におけるマダラツヤゴバチの最も高い増殖率6.4は,寄主(フタスジコバチの蛹)密度が急激に高くなる9月以後に認められ,これは室内で求めた純繁殖率の17.8%に相当する。
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