手術好発年齢にある喫煙者90名(55±11歳[平均±標準偏差])と非喫煙者90名(57±15歳)に対して,スパイロメトリー(%VC,FEV
1.0%)と,動脈血液ガス分析(pH,PaCO
2,PaO
2)を行ない,呼吸器の機能面に対する喫煙の影響を検討した.スパイロメトリーでは,%VCは非喫煙群99±17%に対し喫煙群97±17%で有意差を認めなかったが,FEV
1.0%は非喫煙群の83±6%に対し喫煙群は76±11%と有意に低下していた.動脈血液ガス分析では,pHは非喫煙群74.0±0.04に対し喫煙群74.0±0.02,PaCO
2は非喫煙群41.1±3mmHgに対し喫煙群41.4±3mmHgで,ともに両群間での有意差を認めなかった.PaO
2はConwayらの予測値により%PaO
2(=100×PaO
2/(102.5-0.22×年齢))に標準化して比較した.%PaO
2は非喫煙群の99±10%に対し喫煙群では92±15%と有意に低下していた.また喫煙群のFEV
1.0%と%PaO
2はともに,喫煙強度の指標であるBrinkman指数(1日の平均喫煙本数×喫煙年数)に相関して低下する傾向が認められた.以上より,大量喫煙者は閉塞性換気障害ばかりでなく,肺での酸素化能の低下も合併している可能性が高く,周術期には同年代の非喫煙者に比べ,より注意深い呼吸管理が必要であると考えられる.
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