日本臨床麻酔学会誌
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21 巻, 9 号
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  • 辻口 直紀, 山蔭 道明, 小瀧 正年, 並木 昭義
    2001 年 21 巻 9 号 p. 409-415
    発行日: 2001/11/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した36名の患者で,手術時の循環動態,覚醒状況,術後鎮痛,副作用ならびに患者の満足度を,3種類の麻酔法で比較した.麻酔法は,プロポフォール+フェンタニル群(PF群),プロポフォール+硬膜外麻酔群(PE群)ならびにセボフルラン麻酔群(S群)とした.PE群では,術直後より0.25%ブピバカインの硬膜外持続投与(4ml・hr-1)を開始した.覚醒までの時間はPF群とPE群がS群よりも短かった.術後のVASは術後24時間値でPE群が他の2群と比較して良好であった.術後の悪心・嘔吐は,覚醒直後でPF群およびPE群で嘔気を訴えた患者は認められなかったが,S群では58.3%でみられ,他群に比較して有意に多かった.硬膜外麻酔を併用したPE群では,「満足している」と答えた患者が83.3%を占めた.また,全身麻酔単独のPF群およびS群では,「やや不満である」と答えた患者がともに41.7%を占めた.満足度は3群間それぞれに有意差を認め,特にPE群とS群の患者に有意差(p=0.012)があった.PF群は,S群に比較して覚醒の質は優れていたが,PE群ほどの患者の満足度および術後鎮痛効果は得られなかった.
  • Bispectral Indexを用いての検討
    中山 雅康, 一瀬 廣道, 山本 修司, 中林 賢一, 林 路子, 並木 昭義
    2001 年 21 巻 9 号 p. 416-420
    発行日: 2001/11/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    硬膜外麻酔併用プロポフォール麻酔時,亜酸化窒素(N2O)の併用がプロポフォールやフェンタニルの使用量,覚醒時間,術後悪心・嘔吐に及ぼす影響を検討した.下腹部手術患者50名を,N2O使用の有無により対照群とN2O群に分類した.硬膜外麻酔にはリドカインを使用し,プロポフォールによりBispectral Index値を40~60に維持した.プロポフォールの平均投与量は,N2O群で4.6±1.1mg・kg-1・h-1と,対照群の6.7±2.3mg・kg-1・h-1と比べ有意に少なかったが,麻酔コストはN2O群の方が高値だった.他の麻酔薬使用量,覚醒時間,術後悪心・嘔吐の頻度に群間差はなかった.本麻酔法でのN2O併用の利点は認められなかった.
  • 真尾 秀幸, 伊東 義忠, 河東 寛, 神津 将仁, 合田 由紀子, 藤澤 恵理
    2001 年 21 巻 9 号 p. 421-426
    発行日: 2001/11/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    重症筋無力症患者11例で麻酔導入直前の血清抗アセチルコリン受容体抗体価を測定し,ベクロニウムの初回投与量,維持量との関係を検討した.結合抗体は6例で陽性,阻止抗体は10例で陽性であった.結合抗体陽性例のベクロニウムの初回投与量は対照に比べて有意に少なく,維持量は結合抗体価と有意の負の相関を示した.また,結合抗体陽性例は結合抗体陰性例に比較して,結合抗体陰性例は対照に比較して有意に維持量が少なかった.抗アセチルコリン受容体結合抗体陽性の重症筋無力症例のみならず,結合抗体陰性例でもベクロニウムに対する高い感受性をもち,抗アセチルコリン受容体阻止抗体の存在が示唆された.
  • 山下 幸一, 渡海 裕文, 今津 康宏, 神元 裕子, 真鍋 雅信
    2001 年 21 巻 9 号 p. 427-429
    発行日: 2001/11/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    54歳,女性,3ヵ月前に左前頭葉星状神経腫に対して全身麻酔下に腫瘍摘出術を行った.失語および一過性の意識消失発作を繰り返し,頭部CTにて脳腫瘍の増大を認めたためオンマイアチューブ留置術が予定された.麻酔は急速導入で行った.導入直後,換気不全に陥った.喉頭展開したが声帯は確認できず声門と思われる隙間に気管挿管を行った.挿管後の換気は容易で手術を予定どおり行った.抜管後,気管支内視鏡検査を行い呼吸性に動揺する巨大喉頭肉芽腫を発見した.再度,意識下に挿管して喉頭微細手術を行い,摘出後発声が可能となった.失語を中枢神経障害による症状と考え喉頭の検索を十分行わなかったことが原因と考えられた.
  • 白石 義人, 横山 順一郎, 渥美 和之, 佐藤 直史, 百瀬 和子, 山口 尚子
    2001 年 21 巻 9 号 p. 430-433
    発行日: 2001/11/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    人工心肺による体外循環中の脳血流・代謝の指標として近赤外分光法による脳内酸素飽和度の測定は有用である.無侵襲モニタといわれるが,長時間のプローブ装着により水疱形成を生じた症例を経験した.症例は,58歳,女性.I型解離性大動脈瘤の診断で上行および弓部大動脈置換術を予定し,22°Cの低体温下で脳分離循環,循環停止を併用して行った.人工心肺離脱と止血が困難で手術時間26時間45分,麻酔時間29時間40分と長時間になった.ICU入室前,発光ダイオードに一致した皮膚の発赤に気づいた.翌日水疱の形成がみられたが,その後,痂皮を形成し1週間で治癒した.術中脳内酸素飽和度が低下し,低酸素脳症が危惧されたが神経学的後遺症は生じなかった.この症例を経験し,熱傷の原因を調べるため低体温下に体外循環を使用したときのプローブ温と周辺環境の温度を測定して比較検討した.結論として低体温による体外循環を用いる場合,INVOSのプローブ装着は経験上同一部位では12時間以内に止めておくのが望ましい.
  • 黒沢 さおり, 金谷 憲明, 並木 昭義
    2001 年 21 巻 9 号 p. 434-436
    発行日: 2001/11/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    CATCH22症候群は,22番染色体長腕(22q11.2)の部分欠失に起因する隣接遺伝子症候群であり,心血管異常(cardiac defects),異常顔貌(abnormal facies),胸腺低形成(thymic hypoplasia),口蓋裂(cleft palate),低Ca血症(bypocalcaemia)を特徴とする.今回,口蓋裂を伴ったCATCH22症候群の1例の麻酔を経験した.本症例では良好な麻酔管理が行えたが,本症は多発合併奇形を有することが多く,術前の十分な検索,評価が必要である.
  • 藤林 哲男, 安田 善一, 鈴木 久人, 森 芳映, 江口 広毅, 福田 悟
    2001 年 21 巻 9 号 p. 437-442
    発行日: 2001/11/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    術中予期せぬ大量:出血(4,500g)に対する急速輸液で高度血液希釈(Hb2g•dl-1以下)を呈した症例を持続血液濾過により管理した.腎移植後に総腸骨静脈血栓症を生じ,局麻下に大腿より血栓除去が開始された.患者が腹痛と腹部膨満を訴え,血圧低下を認めたため,下大静脈損傷を疑い麻酔科医による管理となった.進行する腹腔内出血のため準備血なしで開腹止血術が開始された.開腹時に出血量4,500gを認め,急速輸液(6,000ml)により血圧を維持し得たが,Hbは測定不能の2g•dl-1以下となった.この時点で輸血が届き持続血液濾過を用いた血液濃縮を試行し,動脈血液ガスの悪化やアシドーシスを認めず無事手術を終了した.大量出血に対する急速輸液が原因の高度血液希釈に対し,術中持続血液濾過の有用性が示唆された.
  • 内藤 嘉之, 有沢 創志, 澤田 正樹
    2001 年 21 巻 9 号 p. 443-446
    発行日: 2001/11/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    頬部から舌根・中咽頭周囲組織に広がる海綿状血管腫を有する13歳,女性に対し,intratumoral ligation法による頬部血管腫圧迫形成術が行われ,術後出血に対してタイオーバー法による圧迫止血術が追加施行された.術後舌根から中咽頭周囲にかけての血管腫残存部に著しい腫脹がみられ,遷延性の気道狭窄を引き起こしたため,15日間にわたって気管挿管による気道確保を余儀なくされた.頬部手術創のタイオーバーを解除したところ,気道狭窄は速やかに改善し抜管可能となった.中咽頭部気道の可逆性狭窄をきたしたメカニズムとして,頬部海綿状血管腫の圧迫により血管腫内の血流分布が中咽頭周辺部へ著しく偏り,同部の腫脹を引き起こした可能性が考えられた.
  • 五十洲 剛, 管 桂一, 藤井 真行
    2001 年 21 巻 9 号 p. 447-450
    発行日: 2001/11/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    マンニトールが原因と考えられた高カリウム血症の2例を経験した.2例はいずれも高齢で脳動脈瘤のクリッピング術の術中,マンニトール500ml投与後に起こり,症例1はカリウム値が6.27mEq•l-1,症例2は6.20mEq•l-1まで上昇した.2症例の高カリウム血症の原因は,著明な代謝性アシドーシスがなかったことより,マンニトール投与による血漿浸透圧の上昇により細胞内液が細胞外に移行するのに伴い,細胞内カリウムが細胞外液に移行したためと考えられた.高齢者でマンニトールを使用する際は,定期的な電解質チェックが必要である.
  • 卯月 みつる, 藤村 直幸, 稲垣 尚人, 荒川 穣二, 表 哲夫, 並木 昭義
    2001 年 21 巻 9 号 p. 451-454
    発行日: 2001/11/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    ミニトラキオトミー施行後に,低酸素血症,心停止に至った症例を経験した.症例は66歳の女性で多発性骨髄腫で療養中,呼吸不全となり人工呼吸管理を行った.呼吸状態改善後,抜管したが,喀痰貯留が認められたためミニトラキオトミーを施行した.施行直後,チューブ挿入部,気道内からの出血がみられ,低酸素血症から心停止となった.蘇生後,気管支鏡検査を行ったところ,喀痰と凝血塊により右主気管支が閉塞しているのが発見された.ミニトラキオトミー施行前に気管支鏡検査により気道の性状を確認し,十分な喀痰除去を行うことは,合併症予防に有用であると考えられた.
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