日本臨床麻酔学会誌
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24 巻, 10 号
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原著論文
症例報告
  • 橋本 学, 高地 明
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 24 巻 10 号 p. 593-598
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/05/27
    ジャーナル フリー
    頭頸部癌手術の既往がある場合, 挿管困難の発生頻度が高いと予想される. 国立がんセンター東病院で2000年1月から2002年12月までの頭頸部癌手術歴のある症例の挿管困難の発生頻度は, 同時期の乳腺手術と比して有意に高かった. そこで, 頭頸部疾患による挿管困難例に対する挿管用ラリンジアルマスク(ILMA)の有用性について検討した. 頭頸部癌手術歴, または放射線治療の既往があるため挿管困難が予想された17症例についてILMAと気管支ファイバーの併用を行い, 全例円滑な挿管が可能であった. ILMAと気管支ファイバーの併用は, 頭頸部癌手術後の挿管困難予想症例の挿管に有用である.
  • 鈴木 夕希子, 丸山 一男
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 24 巻 10 号 p. 599-603
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/05/27
    ジャーナル フリー
    冠動脈3枝病変を合併した, 高齢者(80歳代女性)の胃切除術2症例に対し, ランジオロール持続投与下に硬膜外麻酔併用全身麻酔を行った. 麻酔導入時から頻脈の予防にランジオロールの少量持続投与を開始した. 気管挿管後に血圧低下や徐脈を認めたが, 投与の一時中止やエフェドリンにて速やかに回復した. 麻酔中, 麻酔覚醒後を通じて血圧・脈拍は安定し心筋虚血を認めなかった. 高齢者虚血性心疾患患者に対するランジオロールの使用は頻脈の予防に有効であるが, 麻酔導入時の低血圧・徐脈の可能性を念頭に慎重な投与が必要である.
  • 下坂 典立, 橋本 学, 高地 明, 渋谷 鉱
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 24 巻 10 号 p. 604-607
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/05/27
    ジャーナル フリー
    巨大鼻尖部腫瘍のため麻酔導入時のマスク換気および挿管困難が予測された症例の全身麻酔を経験した. 70歳, 男性. 身長170cm, 体重50kg. 腎癌の鼻尖部転移に対し, 全身麻酔下鼻尖部腫瘍摘出術が予定された. 9.6×7.2×8.0cmの巨大腫瘍のため, マスク換気, 挿管困難が予測された. プロポフォール, フェンタニルを用いて鎮静を行い, 挿管用ラリンジアルマスクを挿入し, 換気が可能なことを確認した後, 気管支ファイバーガイド下に気管挿管を行った. 挿管操作時の腫瘍への接触を防止するため, 挿管用ラリンジアルマスクのハンドルの角度を調整した. 麻酔維持は酸素, 亜酸化窒素, プロポフォールで行い, 手術・麻酔は問題なく終了した.
  • 磯村 朗子, 田尻 治, 舘田 武志, 杉内 登, 笹野 淳, 小幡 由美
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 24 巻 10 号 p. 608-611
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/05/27
    ジャーナル フリー
    腹臥位および仰臥位での開頭術中, 空気塞栓を生じた症例を経験した. 症例1 : 腹臥位で後頭下開頭術中の体位変換直後に呼気終末二酸化炭素分圧(EtCO2), 経皮的酸素飽和度(SpO2)低下と血圧低下から空気塞栓が疑われた. 頭低位, 亜酸化窒素を中止し, 術野を生理食塩水にて満たし対処した. 術直後の経食道心エコーでは右房内に空気を疑わせる高輝度の所見を認めた. 症例2 : 仰臥位で前頭—頭頂開頭術中, 静脈洞損傷からの出血による術視野悪化に対し頭部挙上位としたところ, 直後に急激なEtCO2, SpO2低下と循環虚脱を生じた. 症例1と同様の対処に加え, 大腿静脈より中心静脈カテーテルを挿入したが空気は吸引できなかった. 開頭術では常に空気塞栓が生じる可能性を念頭におき, 特に術中の体位変換は慎重に行うべきである.
  • 林 裕二, 小田 俊昭, 齋藤 友久, 武井 純二
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 24 巻 10 号 p. 612-616
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/05/27
    ジャーナル フリー
    腹壁瘢痕ヘルニア根治術に対する硬膜外麻酔併用全身麻酔中, エフェドリンを投与した後にST上昇を認めた症例を経験した. 症例は52歳, 男性. 術前の心電図では異常所見を認めなかった. 術中, 血圧の低下に対しエフェドリンを投与したところ, 突然STの上昇を認めた. STはすぐに低下しはじめ, 1分後には自然に基線に戻った. 術後の心臓カテーテル検査では異常所見を認めず, エフェドリンのα受容体刺激作用により冠動脈攣縮が発生したものと考えられた. 硬膜外麻酔併用時の血圧低下に対するエフェドリンの使用は, 冠動脈攣縮を誘発する可能性があることに留意する必要がある.
掲載論文関連講座
  • 森島 久代
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 24 巻 10 号 p. 617-625
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/05/27
    ジャーナル フリー
    米国における医学部女性応募者数は2003~2004年度に男性応募者を上回る数に達した. これに伴い麻酔科を含めた専門科目を選択する女性医師の重要性が注目されるようになり, 教育機関における女性医師に対する男女差別の改善の必要性が浮き彫りになった. 本論文は米国における女性麻酔科医の現状と, 日米麻酔科医の現況に関する調査結果を紹介した. 最近, 教育機関における男女差別は著しく改善されたとはいえ, この傾向は日米ともいまだに存在し, 女性麻酔科医が助教授以上に昇進する機会は男性より低いのみか昇進までに年月を要した. 注目すべき結果は日本の若手女性麻酔科医は男性数をしのぐ数であるが, この傾向は30歳を超えると消失してしまう点である. これは米国と対照的であり, 女性自身の職業的意識が米国と異なっている点も認められた. さらに, 麻酔科領域で不足しているマンパワー充実のための暫定的な労働緩和策にも言及した.
—日本臨床麻酔学会第23回大会—
シンポジウム 術後疼痛管理の合併症・副作用防止対策
  • 中塚 秀輝, 佐藤 健治, 佐藤 哲文, 谷西 秀紀, 森田 潔
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 24 巻 10 号 p. 627-636
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/05/27
    ジャーナル フリー
    術後の硬膜外ブロックは, 現在では質の高い術後疼痛管理法として広く用いられている. しかし, 副作用が出現すると鎮痛処置が制限されるため効果不十分となり, 患者満足度はますます低下する. またまれではあるが, さまざまな重篤な合併症が報告されている. 副作用や合併症の発生による入院期間の延長は, 結果としてコスト増加を引き起こす. 術後硬膜外ブロック中によくみられる副作用として, 悪心・嘔吐, 掻痒感, 下肢のしびれ感・運動麻痺, 低血圧, 呼吸抑制, 尿閉などがある. これらは, ある程度の頻度で必ず起こるが, 適切な対応により生命を脅かすような重篤な副作用となることは少ないため, 大きな注意が払われないことが多い. 術後痛研究会およびわれわれの調査結果でも, 悪心・嘔吐が最も多く30~50%, 下肢の運動麻痺・しびれが約30%で続き, 掻痒感も約20%の症例に認められた. 硬膜外ブロックの重篤な合併症としては, 硬膜外血腫, 膿瘍, 髄膜炎や脳炎, 全脊髄くも膜下麻酔, 局所麻酔薬中毒のように永続的な神経障害を残す, あるいはときとして致命的ともなる重篤な合併症が知られる. 最近, 硬膜外腔の貯留物が脊柱管を前方に圧迫することによって神経症状を呈するEpidural Compartment Syndromeという概念も報告されている. これらの重篤な合併症の発生はまれであるが, 硬膜外鎮痛法を用いるときは常に念頭におく必要がある. 合併症防止対策としては, 術後回診による一人ひとりの患者に応じた対応を確実に行うとともに, 病棟での管理であるということを念頭におき, 安全を最優先に考えたうえでの対処が必要である. 他科医師や看護師の教育とともに副作用に対する対応や器械の操作など基本的なことはマニュアルで示し, さらに講義など教育の場を設けて周知をはかる必要がある.
  • 石村 博史, 滝塚 敦, 石黒 良彦, 岩垣 圭雄, 門屋 辰男, 竹中 伊知郎
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 24 巻 10 号 p. 637-646
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/05/27
    ジャーナル フリー
    術後硬膜外持続疼痛管理中における排尿機能障害について前向きに調査した. 主要開胸術・開腹術を受けた120例で留置されていた膀胱留置カテーテル (以下導尿カテーテル) を抜去した後, 15例に導尿カテーテルによる反復導尿が必要となった. 残り105例では自立排尿と硬膜外持続疼痛管理が両立可能であった. 尿閉をきたした15例中の8例では, 泌尿器科学的異常がその後に明らかにされた. 4例では泌尿器科学的異常が疑われた. 3例の症例で, 硬膜外持続疼痛管理が尿閉の原因と考えられた. これらの調査結果を踏まえ, 術後排尿機能と硬膜外持続疼痛管理との両立について考察した.
  • 田中 裕之
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 24 巻 10 号 p. 647-654
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/05/27
    ジャーナル フリー
    小児の術後疼痛管理の合併症・副作用とその対策について自己調節鎮痛Patient-Controlled Analgesia (PCA) を中心に述べた. 嘔吐は学童期以降の静脈内PCAで多く, 掻痒は硬膜外PCAで多かった. 対策は薬物療法のほかに持続投与を減量する方法がある. 痛みが強い場合は非ステロイド性抗炎症薬やアセトアミノフェンの併用が有用である. 硬膜外PCAではカテーテルの管理も重要である. 副作用や合併症には早期発見, 早期治療が原則である. そのためには患者の年齢に応じた副作用の特徴を理解し, パルスオキシメータの使用および鎮痛効果と鎮静レベルの定期的な評価が重要である. 術後疼痛管理チームによる定期的な回診が望ましい.
  • 神立 延久, 柴田 康之, 廣川 満, 堀場 清, 小松 徹
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 24 巻 10 号 p. 655-664
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/05/27
    ジャーナル フリー
    術後鎮痛目的にフェンタニル持続静脈内投与した457症例でその有効性と合併症・副作用について検討した. 病棟帰室時意識清明, 帰室後傾眠傾向, 覚醒不良であった症例はおのおの299例 (65.4%), 148例 (32.4%), 10例 (2.2%) であった. また, 不穏・せん妄を3例 (0.7%) に認めた. 舌根沈下を生じた症例が17例 (3.7%) あった. 短時間の無呼吸を2例 (0.4%) で認めた. 術後SpO2 < 90%呈した症例は20例 (4.4%) であった. 徐脈 (心拍数 < 50bpm), 低血圧 (収縮期血圧 < 90mmHg) を呈した症例はおのおの10例 (2.2%), 43例 (9.4%) であった. 術後嘔気を生じた症例は97例 (21.2%) で, そのうち55例 (12.0%) に嘔吐を認めた. 約半数の症例は術後鎮痛が十分得られた. フェンタニル持続投与による術後鎮痛法は重篤な合併症がみられず, 術後痛対策の一法として有効であると考えられる.
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