日本臨床麻酔学会誌
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25 巻, 1 号
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原著論文
  • 小出 康弘, 原田 高志, 中村 京太, 岡崎 薫, 山田 芳嗣
    2005 年 25 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/25
    ジャーナル フリー
      6時間を超える開腹手術において, 細胞外液補充液を無作為に2群に分け, Mg非配合群 (ヴィーン® F) 16例とMg配合群 (フィジオ® 140) 14例について, 血液生化学検査を経時的に計測した. イオン化Mgは, Mg非配合群で経時的に低下したが, Mg配合群ではその低下が有意に抑制された. ClはMg配合群で手術開始6時間後に高値となり, 両群間の変化に有意差が認められた. 出血量, 輸血量, 輸液量, 尿量は両群間に有意差はなく, Mg非配合群ではイオン化Mg低下率は総輸液量と有意な相関が認められた. 2mEq・l -1 のMgを含有した細胞外液補充液の術中使用はイオン化Mgの低下を抑制するために有用である.
  • 自見 宣郎, 住吉 理絵子, 水野 圭一郎, 森本 文子, 秦 恒彦
    2005 年 25 巻 1 号 p. 8-12
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/25
    ジャーナル フリー
      1993年から10年間の症例を対象とし, 小児の硬膜外麻酔における局所麻酔薬中毒 (局麻薬中毒) について調査・検討した. 局麻薬中毒を17例 (手術室9例, 病棟8例) に認めた. 使用薬剤は全例メピバカインであった. 発生17例に対して気道保持, 酸素投与, 抗けいれん薬投与などで対処し, 神経学的後遺症を残さなかった. 局麻薬中毒の主たる原因は, 局麻薬の血管内注入によるものではなく, 局麻薬の過量投与・長時間投与によるものと考えられた. 小児の硬膜外麻酔で局麻薬中毒を防止するには, 局麻薬が過量にならないよう適切な量を投与することが必要である.
症例報告
  • 白石 としえ, 相良 武士, 内野 博之, 石井 脩夫
    2005 年 25 巻 1 号 p. 13-17
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/25
    ジャーナル フリー
      BIS (Bispectral Index) モニタリングにおいて, 脳波の導出部位は前頭部を前提としている. しかし前頭部が術野となる脳外科手術において, 手術そのものがBISセンサーの貼付を妨げ, BIS導出が困難な症例がある. われわれはすでに後頭部BIS導出の有用性を報告してきたが, 今回はその結果に基づいてAwake Craniotomyを施行した代表的な2症例を提示し, その有用性を検討した. 今回の2症例ではBISの導出も良好であり, 臨床的に許容できる値を示し前頭部の代用として活用できる可能性が示唆された. Awake Craniotomyにおいて, 術中意識レベルの評価や調節を行う場合, 後頭部導出のBIS値を参考にすることは前頭部導出のBIS値を推測するうえで有用な方法と思われた.
  • 宇田 良子, 池田 栄浩, 村尾 浩平, 松本 早苗, 中尾 慎一, 新宮 興
    2005 年 25 巻 1 号 p. 18-21
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/25
    ジャーナル フリー
      再発した卵巣腫瘍の切除術中にカルボプラチン, マイトマイシンCを腹腔内投与した直後, アナフィラキシー反応を呈した症例を経験した. リンパ球刺激試験ではカルボプラチンが陽性であった. カルボプラチンは投与回数に伴い, 過敏性の発現率が増加するとの報告がある. 本症例は手術前にカルボプラチンを腹腔内に1回, 静脈内に9回投与されていた. 術前よりカルボプラチンを複数回投与されている場合には, 手術中の腹腔内投与によりアナフィラキシー反応を引き起こすことがあり, 注意が必要である.
脳・脊髄障害の術中モニタリング
  • 村川 雅洋
    2005 年 25 巻 1 号 p. 24
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/25
    ジャーナル フリー
  • 中根 正樹, 根本 千秋, 丸 浩明, 村川 雅洋
    2005 年 25 巻 1 号 p. 25-32
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/25
    ジャーナル フリー
      経頭蓋超音波ドプラー法 (TCD) による脳血流速の測定は, 過去20年以上にわたり, 頭蓋内疾患の診断・評価を始め, 頸動脈再建術などの動脈遮断時や体外循環を用いた心臓・大血管手術時の脳虚血モニターとして応用されてきた. TCDは使いこなすのに若干の知識と熟練が必要であるが, 非侵襲的かつリアルタイムなモニタリングであるため, 手術時モニタリングとしての有用性は高く評価されている. 本稿では, TCDの原理に始まり, 各種疾患におけるTCDモニタリングの有用性, 測定上および結果の解釈における注意点などを概説する.
  • 入田 和男, 甲斐 陽一郎, 野田 祐紀子, 永田 太郎, 濱崎 亜弓, 高橋 成輔
    2005 年 25 巻 1 号 p. 33-41
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/25
    ジャーナル フリー
      急性期医療の現場では, 脳血流量と脳酸素消費量を直接評価することは困難であるが, 内頸静脈血酸素飽和度によりその相互関係を推し量ることが可能である. 光ファイバーを装着したカテーテルを用いることによって連続モニターが可能であり, 処置に対する内頸静脈血酸素飽和度の反応を観察することによって, その変動の原因診断ならびに治療の妥当性を評価することができる. したがって, 脳酸素需給バランスがダイナミックに変動する状況において, とくに有用である. 内頸静脈血酸素飽和度は, ヘモグロビン濃度や動脈血の二酸化炭素ならびに酸素分圧, 平均動脈圧など, 呼吸・循環・代謝の影響を受けることから, 脳指向の全身管理という観点からも重要な情報源となる. 脳虚血の有無は, 代謝の指標 (内頸静脈血pH・PO2・PCO2・乳酸値・血糖値) や内頸静脈血温も参考に評価する. 内頸静脈血酸素飽和度ならびに内頸静脈血は急性期医療の現場において, 情報量の少ない脳由来のシグナルとして貴重なものである.
  • 安川 毅, 藤井 智子
    2005 年 25 巻 1 号 p. 42-50
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/25
    ジャーナル フリー
      手術中や集中治療領域において脳虚血の監視は近年, ますます重要となっている. 頸動脈内膜剥離術や上行・弓部大動脈人工血管置換術は, 術中に一時的に脳血流を遮断あるいは脳灌流を行うので, 脳虚血を監視するために術中モニタリングの工夫が試みられている. そのモニタリングの一つである近赤外分光法 (NIRS) は手技的に計測が簡単であり, 内頸動脈領域など局所脳動脈領域のモニタリングとして有用で, 他のモニターとの組み合わせにより信頼性を増す. しかし椎骨動脈領域を含む全脳のモニタリングには限界があり, 今後の検討が必要である.
  • 鈴木 恭一, 松本 正人, 佐々木 達也, 児玉 南海雄, 中根 正樹, 村川 雅洋
    2005 年 25 巻 1 号 p. 51-59
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/25
    ジャーナル フリー
      脳動脈瘤手術症例220例に対して運動誘発電位 (MEP) を用いた脳血流不全のモニタリングを施行した. 刺激は大脳皮質の運動領野を直接電気刺激し, 刺激と対側の母指球筋から筋電図を記録した. 麻酔はプロポフォールを用いた完全静脈麻酔で, ベクロニウムを点滴静注し筋弛緩レベルを一定に保った. 術中MEPに変化を認めなかった193例では, 術後に運動麻痺は認めなかった. 25例で一過性のMEP変化を認め, このうち14例では術後に運動麻痺は認めなかったが11例で一過性の運動麻痺を認めた. 術中MEPが消失し回復しなかった2例で重度の運動麻痺が永続し, 頭部CTにて内包に梗塞巣が出現した.
  • 丸谷 雅人, 菊地 臣一, 紺野 慎一, 矢吹 省司
    2005 年 25 巻 1 号 p. 60-67
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/25
    ジャーナル フリー
      術中脊髄機能モニタリングの適応と, 脊髄誘発電位 (SCEP) を用いたモニタリングの問題点を検討した. 手術症例616例を対象として, 術中の神経障害発生頻度を術式別に調査した. 神経障害発生率が高い術式は, 胸椎後方侵入前方除圧術, 脊髄動静脈奇形摘出・凝固術, 髄内腫瘍摘出術, 後頭頚椎後方固定術, 胸腰椎前方固定術, 胸椎後方除圧術, 側弯矯正前方固定術, および側弯矯正後方固定術であった. SCEPを用いてモニタリングを行った60例を対象とし, モニタリングの問題点を検討した. 髄内腫瘍摘出術で後索障害の予防が困難, 灰白質障害の検知が不能, 錐体路障害を検知できない症例が存在, および脊髄障害発生を誤認する可能性などが問題点であった.
—第10回硬膜外麻酔研究会—
シンポジウム「硬膜外腔と広がり」
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