日本臨床麻酔学会誌
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43 巻, 1 号
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原著論文
症例報告
〔日本区域麻酔学会〕 症例報告
日本臨床麻酔学会第41回大会 教育講演
  • 中山 秀章
    2023 年 43 巻 1 号 p. 31-37
    発行日: 2023/01/15
    公開日: 2024/01/15
    ジャーナル フリー

    心不全患者の睡眠関連呼吸障害は,50%と高頻度であり,そのうち半分は中枢性睡眠時無呼吸(CSA)であり,閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)とCSAの間で病型の変化が生じる.また,客観的には眠気があるのに,自覚的眠気が乏しいことが特徴である.その病態には,呼吸の不安定性や体液移動が影響する.治療は病型により,OSAでは持続陽圧呼吸療法(CPAP)が第一選択となる.CSAを呈する場合には,心不全に対する十分な薬物療法を行うことが重要で,残存するCSAに対し,CPAP,ASV,酸素療法が行われる.ASVによる多施設ランダム化比較試験では,予後の改善は示されていない.周術期には,麻酔等の影響で,睡眠関連呼吸障害が顕在化,病型変化する可能性がある.

  • 香取 信之
    2023 年 43 巻 1 号 p. 38-46
    発行日: 2023/01/15
    公開日: 2024/01/15
    ジャーナル フリー

    従来のワルファリンに加え,直接凝固因子阻害薬が経口抗凝固薬に加わることによって,その周術期管理には薬剤に応じた対応が求められるようになった.抗凝固療法患者の周術期管理では出血リスクと血栓リスクの両方を考慮した対応が必要である.手術・侵襲的処置に伴う出血リスクを評価し,患者の血栓症リスクを適切に評価したうえで抗凝固薬の継続・休止を含めた周術期管理を計画する.抗凝固療法患者の周術期管理で悩ましいのは緊急手術への対応だが,近年では特異的拮抗薬が開発されている.しかし,特異的拮抗薬は高額な製剤が多く,その適応と投与方法を理解しておく必要がある.

日本臨床麻酔学会第41回大会 シンポジウム ─Awake craniotomyの麻酔を上手に行うために─
  • 岡本 浩嗣
    2023 年 43 巻 1 号 p. 47
    発行日: 2023/01/15
    公開日: 2024/01/15
    ジャーナル フリー
  • 立花 俊祐
    2023 年 43 巻 1 号 p. 48-52
    発行日: 2023/01/15
    公開日: 2024/01/15
    ジャーナル フリー

    Awake craniotomyの麻酔管理を行う上で,「すみやかで安定した入眠と覚醒」や「手術中,とくに覚醒期において生じうる痛みや合併症の予防」を提供することが重要である.日本における他施設と同様にわれわれの施設でも,Awake craniotomyの管理は,プロポフォールを主軸とした静脈麻酔と頭部神経ブロックを併用したAsleep-Awake-Asleep(AAA)法で麻酔を完遂している.当施設では過去に12〜84歳の患者の麻酔を経験したが,それぞれの背景因子は多様で,周術期管理について改善すべき点がある.小児や高齢者など年齢に基づいた管理の層別化を図るだけではなく,Awake craniotomyの完遂を妨げうる因子を事前に把握し,それらのリスク因子を意識した管理を行うことも洗練された麻酔を目指すために必要である.

  • 鎌田 ことえ
    2023 年 43 巻 1 号 p. 53-59
    発行日: 2023/01/15
    公開日: 2024/01/15
    ジャーナル フリー

    覚醒下開頭手術が本邦に導入されて20年以上になる.いうまでもなく外科手術の目標は確実な病変摘出であるが,脳神経外科領域では新規かつ永続的な神経脱落症状の出現をも回避しなければならない.外科的侵襲による体性感覚,聴覚,視覚機能の経時変化は,各種誘発電位をはじめとした神経生理学的モニタリングによって,ある程度評価できるようになった.しかしながら運動機能や言語機能は意識下の患者でないといまだ評価困難であり,本術式の意義は非常に大きい.本稿では,運動機能および言語機能への障害を最小限とするために必要な術中モニタリングに関する最近の知見を紹介するとともに,麻酔科医として果たすべき役割について考えたい.

  • 佐藤 威仁, 西脇 公俊
    2023 年 43 巻 1 号 p. 60-67
    発行日: 2023/01/15
    公開日: 2024/01/15
    ジャーナル フリー

    Awake Craniotomy(AC)の術中麻酔管理では,術中に患者を覚醒させる必要があるためにさまざまな副作用(合併症)が発生する.ACの麻酔を「上手に」行ううえで重要な点は,起こりうる合併症を想定したうえで術前評価を行い,それが発生しないよう患者の覚醒前に予防策をとることであると考える.ACは麻酔科として総合的な知識・技量が求められる挑戦的な手術であるが,麻酔科医として,患者の術前評価を適切に行い,十分な予防策を講じたうえで,合併症発症時には迅速かつ適切に対応することが求められる.

  • 溝田 敏幸
    2023 年 43 巻 1 号 p. 68-73
    発行日: 2023/01/15
    公開日: 2024/01/15
    ジャーナル フリー

    Awake craniotomyにおける覚醒不良は,重要な脳機能を温存しながら脳腫瘍やてんかん焦点などの脳実質病変を最大限に摘出するというawake craniotomyの目的達成を妨げる重要な問題の一つである.しかし,awake craniotomyにおける覚醒不良についてはその評価・予測・治療ともほとんど報告がなく,有効な予測法や対処法は確立されていないというのが現状である.本稿では,awake craniotomyにおける覚醒不良に関するわれわれの取り組みを紹介しながら,覚醒不良の予測因子,評価方法に関する研究の現状を述べる.

日本臨床麻酔学会第41回大会 シンポジウム ─救急集中治療を学ぶことで麻酔科医の技量はどう変わったか?─
  • 氏家 良人
    2023 年 43 巻 1 号 p. 74
    発行日: 2023/01/15
    公開日: 2024/01/15
    ジャーナル フリー
  • 鈴木 昭広
    2023 年 43 巻 1 号 p. 75-79
    発行日: 2023/01/15
    公開日: 2024/01/15
    ジャーナル フリー

    筆者は過去に麻酔・蘇生・ペインクリニックに加え,救急・集中治療の専門医取得を目指した.理由は,医療過疎地では,一つの科の専門医より,一人の医者として働けることが重要であると痛感させられたためである.6年という短い間であったが,この時間は医者としての自分にとっての最大の宝であり,「空飛ぶ麻酔科医」として救急・集中治療だけではなくドクターヘリや災害医療などを含めた医者の総合力を知る絶好の機会となった.その結果,麻酔も救急も集中治療も,共通の根を持つ表現型にすぎず,専門医制度で区分けすることに強い違和感を感じる.麻酔科医はそれらの領域で活躍するための種を持ち合わせ,少し水と肥料をやるだけで他科医師とは比べ物にならない成長を遂げられる.病院前~ERといった手術前の初期対応,手術麻酔,そして術後ICU管理とペイン・鎮痛ケアをシームレスに行うことは,麻酔科医としてあるべき生き方の選択肢の一つではないだろうか.羽を失い,地上におりた今でもその思いは同じである.

  • 竹内 宗之, 橘 一也
    2023 年 43 巻 1 号 p. 80-84
    発行日: 2023/01/15
    公開日: 2024/01/15
    ジャーナル フリー

    麻酔科医が集中治療を研修することに利点があることは自明である.術後経過を知ることで,患者が安全に,快適に,そして早く回復するために必要な麻酔が何かを感じることができる.その上でさらに小児集中治療を学ぶことには,以下のような利点がある.①個別化診療をする習慣が身に付く.②患者やモニターから情報を得る能力が向上する.③鎮静薬の使い方が上手になる.④呼吸循環相互作用の影響について経験を積める.⑤家族説明が上手になる.⑥論文にする題材がたくさんある.これらを生かすために,成人を主に診療している麻酔科医が,普段慣れない小児集中治療において,安全で安心な研修ができる体制を作ることも重要である.

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