日本臨床麻酔学会誌
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38 巻, 1 号
選択された号の論文の25件中1~25を表示しています
原著論文
  • 渡邊 朝香, 奥山 克巳, 石田 千鶴, 諸石 耕介
    2018 年 38 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2018/01/15
    公開日: 2018/03/08
    ジャーナル フリー

    当院では,小児において全身麻酔下でMRI撮影を行っており,検査中の気道確保は主に声門上デバイスi-gelを使用している.i-gelサイズ2を使用した症例におけるi-gelの先端位置を,MRI画像から調査した.対象41症例を後方視的に調査し,先端位置のメルクマールとして頸椎の高さとした.結果,先端位置は頸椎(C)5-6が最も多く,解剖学的にも適切であった.さらにC5/6群における画像上の挿入長と身長,体重,年齢との関係を検討した.挿入長に関しては平均値8.9cm,体重と最も相関がある傾向であった.画像からi-gel先端の適切な位置が判断できた.i-gelサイズ2では,挿入長は平均8.9cmで先端は適切な位置と考えられた.

症例報告
日本臨床麻酔学会第36回大会 教育講演
  • 中江 文
    2018 年 38 巻 1 号 p. 36-41
    発行日: 2018/01/15
    公開日: 2018/03/08
    ジャーナル フリー

    昨今の脳科学,とりわけイメージング技術の進歩により痛みは脳内のネットワークで理解するという考え方が普及しつつある.さらに,麻酔薬によって意識を低下させることにより脳内のネットワークに影響が生じるという報告がある.鎮痛薬に鎮静作用があること,われわれの研究の結果生じた鎮静薬による痛み評定の低下はネットワークの変化という事象で説明可能である.すなわち,痛みと意識は独立した事象ではなく,互いに影響を及ぼし合う事象であると言える.今後麻酔管理を行うときには,「鎮痛・鎮静・筋弛緩」ではなく,「脳内ネットワークの抑制・有害反射の抑制・筋弛緩」という概念により,鎮痛薬と鎮静薬を独立したものと理解するのではなく,相補的なバランスとして理解すべきである.

日本臨床麻酔学会第36回大会 シンポジウム ─インフォームドコンセント─再考──
  • 鈴木 利保, 横田 美幸
    2018 年 38 巻 1 号 p. 42
    発行日: 2018/01/15
    公開日: 2018/03/08
    ジャーナル フリー
  • 水野 樹
    2018 年 38 巻 1 号 p. 43-49
    発行日: 2018/01/15
    公開日: 2018/03/08
    ジャーナル フリー

    手術患者と麻酔科医間の相互作用過程を意味するインフォームドコンセントにより,手術患者には,術前に計画された麻酔の処置に関する包括的で偏りのない情報が提供される.また,手術患者には同意取得のために,麻酔に伴う合併症や危険性が知らされる.術前の手術患者への言葉でのインタビューを補足して,麻酔の処置,合併症,危険性の説明用映像が時に用いられている.麻酔説明用映像では,麻酔科医は麻酔計画に関する価値ある情報を提供している.術前の手術患者による麻酔説明用映像の視聴は,一般的に麻酔に関する情報獲得を高め,理解度を向上させ,満足度を高める.一方,麻酔説明用映像を通じた麻酔に関する術前情報の提供は,術前の手術患者の不安度を軽減することもある.術前の言葉でのインタビューを補足して,麻酔説明用映像が多くの手術患者に容易に提供されることで,より多くの手術患者に大きな利益がもたらされるであろう.

  • 坂本 麗仁, 鈴木 利保
    2018 年 38 巻 1 号 p. 50-57
    発行日: 2018/01/15
    公開日: 2018/03/08
    ジャーナル フリー

    本邦においてインフォームドコンセント(以下IC)は医療行為を行う上で外すことのできないものになっている.最近の民事訴訟を概観すると,説明義務違反などのICに関する過失について争点となっていることが散見される.しかし緊急時には医療行為を迅速に行わなければ,患者の生命・身体に重大な危険が生じることから,患者からICを取得することなく医療行為を行うことが容認されているのが現状である.これにより各病院での緊急時ICの取り扱いはさまざまであり,今まで全体像について知る由がなかった.本稿では,神奈川県下の各病院群での緊急手術時の麻酔ICの状況を俯瞰し,問題点を抽出したのち,今後のあり方について述べさせていただく.

  • 阿部 望, 吾妻 俊弘, 山内 正憲
    2018 年 38 巻 1 号 p. 58-62
    発行日: 2018/01/15
    公開日: 2018/03/08
    ジャーナル フリー

    神経ブロックに関するインフォームドコンセントについて,近年の判例と,関連施設へのアンケートを基に実情と問題点を検討した.代替手段や合併症の頻度など,最高裁判決で求めている必要な情報の説明が不足している可能性がある.この要因として,高齢者へのわかりやすい説明が求められる一方,社会(判例)が求める情報量は増加していることがある.また,神経ブロックと関連した麻酔方法の選択肢が多彩で,手術を遂行するために必須の手技ではないことから,より丁寧かつ詳細な説明が必要である.その一方で,麻酔科医の人的・時間的制約から,インフォームドコンセントが不十分になりやすい.説明した内容の十分な記載も重要となる.

  • 石川 真士, 坂本 篤裕
    2018 年 38 巻 1 号 p. 63-66
    発行日: 2018/01/15
    公開日: 2018/03/08
    ジャーナル フリー

    医療事故調査制度は,医療に起因あるいは疑われる予期せぬ死亡を対象に第三者機関が情報収集・分析し再発を防止することを目的としている.本制度施行からの9カ月間における相談件数は1,381例であり,約20%は患者遺族からの申し出であった.背景には不信と疑問があり,インフォームドコンセントの重要性がうかがわれる.起因となった医療は外科手術が最も多く,その管理を担当する麻酔科医にとっても無関係ではない.各施設においては,インフォームドコンセントのガイドラインを作成し,それに準じて行う必要がある.今回,医療事故調査制度における注意点,当院におけるインフォームドコンセントへの取り組みについて述べる.

  • 加藤 愼
    2018 年 38 巻 1 号 p. 67-72
    発行日: 2018/01/15
    公開日: 2018/03/08
    ジャーナル フリー

    インフォームドコンセント(IC)が法的に問題となるのは,医療紛争における説明義務の違反としてである.診療における説明義務に法律的な根拠1)を求めるとすれば,まず医療機関と患者の間に存在する診療契約であろう.最高裁判決も医師の説明義務は診療契約に基づくものと示している.もともと診療契約は,委任契約という特殊な契約に準ずるものであり,その特殊な形態ゆえ,受任者(医師)側にはいくつかの義務が民法上規定されている2).診療契約における説明義務もこうした義務の延長線上にある3).麻酔にかかわる問題として,手術治療における術前の説明を考えてみると,説明義務に関する基本的な定義は固定しているものの,個別の臨床において,どんな場合にどこまでの説明を求められるのか,リスクの説明はどの程度すべきなのか等ICの課題について,必ずしも医療者の認識は定まっていない.現在もしばしば訴訟の場で争われているところでもある.IC再考の参考として,説明義務に関する最近の裁判例からいくつかを紹介する.

〔日本医学シミュレーション学会〕第12回日本医学シミュレーション学会 シンポジウム ─これからの医学シミュレーション教育─
  • 上嶋 浩順, 石川 有里恵, 大嶽 浩司
    2018 年 38 巻 1 号 p. 74-77
    発行日: 2018/01/15
    公開日: 2018/03/08
    ジャーナル フリー

    シミュレーション教育を広めることは大変難しい.その最も大きな理由としてシミュレーション教育の必要性をわからない人が多いためである.そのためシミュレーション教育の必要性を説明しなければならない.まず,起こるべき可能性の高い重篤な合併症を理解させる.その上でその合併症についての必要な知識を教える.そしてその教育が結果につながることを説明する.上記のことを実践するためには,実体験の講義やエビデンスだけではなく超音波やビデオ画像などイメージをつけやすい媒体をうまく利用することが重要である.

  • 駒澤 伸泰, 三根 大乗, 趙 崇至, 西原 功, 田中 源重, 南 敏明
    2018 年 38 巻 1 号 p. 78-82
    発行日: 2018/01/15
    公開日: 2018/03/08
    ジャーナル フリー

    大阪医科大学麻酔科学教室教育病院群では定期的に多診療科・多職種・多病院参加型の周術期危機管理セミナーを開催している.2017年6月までに気道管理,循環管理,中心静脈管理,産科危機管理,災害管理,医療ガス安全管理,呼吸器外科危機管理,産科心肺蘇生対応,深部静脈血栓症管理,消化器外科危機管理の各テーマに関してシミュレーション講習会を10回開催した.多診療科・多職種連携を目的としたこの講習会に第10回までに合計445名が受講した.Off the job trainingによりさまざまな経験年数のスタッフの参加・討議が可能となる.さらに多病院で行うことによりさまざまな病院の特性,新たな知見や医療安全上の注意点を学ぶことができ,自身の病院に円滑に還元することができる.周術期管理チームの養成のために,学会活動だけでなく,各施設における実際的な訓練が必要でありさまざまなシミュレーション教育法が活用できる.

  • 八木(佐伯) 街子
    2018 年 38 巻 1 号 p. 83-87
    発行日: 2018/01/15
    公開日: 2018/03/08
    ジャーナル フリー

    本稿では,看護教育で実施されているシミュレーション教育の中でも,看護師特定行為研修でのシミュレーション教育を実践例として示し,設計方法と実施結果について述べる.シミュレーションを実施する際には,シミュレーションに関する設計指針が必要であり,自治医科大学看護師特定行為研修センターではThe International Nursing Association for Clinical Simulation and LearningのStandards of Best PracticeSMを参考にした.この方法により,学習者の身体診察や医療面接の能力が向上しただけでなく,看護師の役割,相互理解や他職種連携の意識が深まる結果となった.

  • 淺田 義和
    2018 年 38 巻 1 号 p. 88-92
    発行日: 2018/01/15
    公開日: 2018/03/08
    ジャーナル フリー

    本論文ではTechnology Enhanced Learningという観点と医学シミュレーション教育との関連性,および医学シミュレーション教育を「評価」する際の理論について整理する.学生や医療者などの成人学習者を対象とした教育においては学習目標・評価方法・教育内容といった要素を考慮した教育設計が求められる.シミュレーション教育であれば,教育内容に関しては何らかのTechnology(シミュレータ,eラーニングなど)が活用されるが,その導入にあたっては学習目標や評価方法との関連性を考慮する必要がある.また,質の高い教育を目指すにあたっては,形成的評価と総括的評価,二つの異なる視点での学習者評価(assessment)に加え,教育全体の質評価(evaluation)という視点も考慮する必要がある.

〔日本区域麻酔学会〕
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