日本臨床麻酔学会誌
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35 巻, 4 号
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原著論文
症例報告
  • 仙田 正博, 松本 睦子, 倉迫 敏明, 山岡 正和, 稲井 舞夕子, 村上 幸一
    2015 年 35 巻 4 号 p. 425-429
    発行日: 2015/07/15
    公開日: 2015/09/18
    ジャーナル フリー
    頚椎手術後,デクスメデトミジン持続静注中に房室ブロックから心静止に至った.術前にβ遮断薬の内服はなく,心電図に異常はなかった.デクスメデトミジン持続静注は低用量で開始し,心静止発症後直ちに中止したが,短時間のうちに2度心静止を再発した.比較的大きな頚部への侵襲が増悪因子であるが,Ca拮抗薬やデクスメデトミジンの心刺激伝導系抑制作用およびフェンタニル持続静注も大きく関与したと考えられた.デクスメデトミジン使用中は厳重なモニタリングが必須である.
  • 中村 里依子, 行木 香寿代, 小西 純平, 寺門 瞳, 前田 剛, 鈴木 孝浩
    2015 年 35 巻 4 号 p. 430-433
    発行日: 2015/07/15
    公開日: 2015/09/18
    ジャーナル フリー
    症例は局所麻酔下に白内障手術予定の74歳の女性.眼科医によって施行された2%リドカイン3.5mLを用いた球後麻酔の数分後に意識消失と呼吸停止が生じ,その原因として局所麻酔薬の視神経鞘を介したくも膜下注入による脳幹麻酔が疑われた.マスクを用いた人工呼吸を継続した結果,球後麻酔から約30分後には呼吸努力が認められ,約65分後には意識清明となり,呼吸およびその他の運動機能も完全に回復した.球後麻酔といえども危機的合併症が発現し得ることを認識し,呼吸や意識の経時的観察,そして合併症が生じた際に迅速対応できる体制が重要と考えられた.
  • 加藤 弘美, 永田 洋一, 高木 佑芙紀, 秋永 泰嗣, 高田 和典, 佐藤 重仁
    2015 年 35 巻 4 号 p. 434-438
    発行日: 2015/07/15
    公開日: 2015/09/18
    ジャーナル フリー
    単冠動脈症は先天性心奇形の中でもまれなものである.今回われわれは,術前の心臓CTで指摘された単冠動脈症患者の部分弓部大動脈人工血管置換術,および合併する大動脈弁奇形による大動脈弁逆流症に対する大動脈弁置換術を経験した.単冠動脈症は心筋虚血の合併が多いとされているが,十分量の冠動脈拡張薬の投与,吸入麻酔薬の使用,経食道心エコーによる壁運動の経時的評価で,心筋虚血をきたすことなく麻酔管理を行うことができた.単冠動脈症では冠動脈の有意狭窄がなくとも,心筋虚血に配慮した麻酔方法および評価が大切であると考えられた.
短報
日本臨床麻酔学会第34回大会 教育講演
  • 田中 義文
    2015 年 35 巻 4 号 p. 447-455
    発行日: 2015/07/15
    公開日: 2015/09/18
    ジャーナル フリー
    アイントーベンの時代以来,心室筋の興奮ベクトルが心電計の陽極端子の方向に向くと心電計は+に振れるとの理論が長らく継承されてきた.この理論はR波および平均電気軸の説明に通用しても,STセグメント,T波形成の理論づけには役立たない.本稿で提唱する心電図の統一理論は心内膜側心室筋活動電位より心外膜側心室筋活動電位を引き算することにより体表心電図が発生するというもので,心電計の差動増幅回路の機能を素直に文章に表現しただけのものである.この考え方で活動電位の変化をシミュレートすると,病的心電図の再現はもとより,致死的状況で心外膜側心筋にまで興奮が及ばない墓石様心電図波形まで説明することができる.
日本臨床麻酔学会第34回大会 シンポジウム ─全身麻酔下帝王切開術のツール~貴方ならどれを選ぶ!?~─
日本臨床麻酔学会第34回大会 シンポジウム ─術中循環動態の把握─
  • 山田 達也, 清野 雄介
    2015 年 35 巻 4 号 p. 474
    発行日: 2015/07/15
    公開日: 2015/09/18
    ジャーナル フリー
  • 小竹 良文, 豊田 大介, 牧 裕一
    2015 年 35 巻 4 号 p. 475-481
    発行日: 2015/07/15
    公開日: 2015/09/18
    ジャーナル フリー
    最近の周術期管理において適正な輸液管理を行うことの重要性が指摘されている.特に心血管系合併症を有する高リスク手術症例および術後早期回復を目標とする症例において,その意義が大きい.従来は血圧,尿量,中心静脈圧などを指標とした輸液管理が行われていたが,最近,心拍出量を参照しながら行う輸液管理(目標指向型輸液管理)が注目されている.心拍出量をモニターし,fluid challengeによる輸液投与を行うことによって心拍出量自体が適正であるかどうか,前負荷が適正であるかどうかを同時に知ることが可能となる.
  • 門崎 衛
    2015 年 35 巻 4 号 p. 482-486
    発行日: 2015/07/15
    公開日: 2015/09/18
    ジャーナル フリー
    近赤外線を用いた局所組織酸素飽和度(rSO2)は,脳の酸素化評価を中心に使用されてきた.しかし,臨床での有用性や利用法の実際については,いまだ十分に理解されていない.加えて,前頭部rSO2は大血管手術麻酔における脳分離体外循環の評価に有効であることは広く知られている.しかし,四肢の阻血に対する血行再建の評価に有効であることや,全身麻酔における心機能を含めた患者評価のfirst alertとして重要であること,特にパルスオキシメーターが有効でない心停止や補助循環使用中患者に極めて有効であることはあまり知られていない.そこで,本文ではこれらの有用性を中心に解説する.
  • 小山 薫
    2015 年 35 巻 4 号 p. 487-491
    発行日: 2015/07/15
    公開日: 2015/09/18
    ジャーナル フリー
    重症患者での循環管理ではさまざまなモニターが使用されるが,循環管理の第一歩は患者を“診る,聴く,触る”ことである.しかしながら,酸素需給バランスを判断するためには混合静脈血酸素飽和度(SvO2)モニターが必要である.SvO2は動脈血酸素飽和度,ヘモグロビン値,心拍出量,全身酸素消費量の4つの因子から決定され通常は心拍出量の変化を反映するが,そのほかにもさまざまな応用が可能である.最近では中心静脈血酸素飽和度(ScvO2)の連続モニターが可能となり,SvO2同様の有用性が報告されている.SvO2,ScvO2ともにその有用性を最大限に発揮するためには連続モニターすることが重要である.
講座
  • 木山 秀哉
    2015 年 35 巻 4 号 p. 492-498
    発行日: 2015/07/15
    公開日: 2015/09/18
    ジャーナル フリー
    短時間作用性麻酔薬は,投与が誤って中断すると急速に薬物濃度が低下して術中に患者が覚醒するリスクを伴う.麻酔の適否は客観的,連続的な評価が望ましい.バランス麻酔に「深度」という一次元の概念は適用できない.BISは固有のアルゴリズムに基づいて脳波の原波形から算出される無次元の数値である.特に筋弛緩薬投与下あるいは全静脈麻酔では偶発的な術中覚醒を防ぐために脳波をモニターすべきである.BISによる術中覚醒の予防を検討した大規模試験は肯定的,否定的両方の結果がある.脳波モニタリングのもう一つの目的は過度の麻酔の回避である.低血圧,低BIS値,揮発性麻酔薬低濃度の,“triple low”状態が予後悪化と関連すると示唆されたが,最近の研究では術後死亡率増加との関連は示されていない.バイタルサインを注意深く観察して,麻酔薬が患者体内に確実に投与されていることの確認が必須である.
〔日本臨床モニター学会〕紹介
  • 尾崎 貴子, 金田 徹, 河原 博, 鈴木 利保
    2015 年 35 巻 4 号 p. 499-504
    発行日: 2015/07/15
    公開日: 2015/09/18
    ジャーナル フリー
    新しいディスポーザブル喉頭鏡ブレード(Metal Laryngoscope Blade Macintosh,Intersurgical社製;以下,DMAC)の有用性を,挿管訓練用マネキンを使用して評価した.その結果,約90%(11/12人)の麻酔科スタッフが操作性,使用感,形状について通常のブレードとほぼ同等であり,臨床使用可能であると評価した.また研修医において挿管時間に両ブレードで差がなく,約半数(5/9人)はほぼ同等以上と評価した.DMACの形状が従来のリユーザブルのマッキントッシュ型喉頭鏡ブレード(以下,MAC)と類似しているという特徴が功を奏し,MAC使用時と変わらない感覚で違和感なく挿管操作が行われたと考えられ,DMACは有用性の高いディスポーザブル喉頭鏡ブレードと考える.
〔日本医学シミュレーション学会〕第9回日本医学シミュレーション学会 巻頭言
〔日本医学シミュレーション学会〕第9回日本医学シミュレーション学会 シンポジウム ─医療安全とシミュレーション─
  • 安宅 一晃, 中川 雅史
    2015 年 35 巻 4 号 p. 507-511
    発行日: 2015/07/15
    公開日: 2015/09/18
    ジャーナル フリー
    近年,院外心停止の蘇生率の改善は著しい.しかし,院内心停止の生存率は改善していない.これら患者の多くが数時間前に症状の悪化が認められている.この変化を捉え,対応すれば予期せぬ心停止は防ぎ得る.欧米ではRapid Response System(RRS)が一気に広まった.RRSの構成としては,単に早く対応するチームではなく,4つの要素;①Afferent limb(気づき:病棟),②Efferent limb(対応チーム:RRT[Rapid Response Team],MET[Medical Emergency Team]),③データ管理・解析部門,④管理部門,を構築してお互いに有機的につなげる必要がある.
  • 太田 淳一, 二階 哲朗, 狩野 賢二, 日下 あかり, 齊藤 洋司
    2015 年 35 巻 4 号 p. 512-516
    発行日: 2015/07/15
    公開日: 2015/09/18
    ジャーナル フリー
    島根大学では2002年4月に医療安全管理室を設置し,日常的に活動を行っているが,臨床における実践力を養成するプログラムは作成されていない.急変時の対応も整備されてはいるが,初期対応も遅れがちで,ほとんど救命できていない現状がある.2012年10月より救命救急センターの稼働も開始しており,院内急変対応システム(RRS)の構築が必要であるとわれわれは考えた.RRS構築のために,これまでわれわれが行ってきた啓蒙活動と,実践力養成のためのシミュレーション教育について,報告する.
  • 菊地 研
    2015 年 35 巻 4 号 p. 517-522
    発行日: 2015/07/15
    公開日: 2015/09/18
    ジャーナル フリー
    「医療安全」では医療従事者は緊急事態に備えてBLS/ACLS(一次および二次救命処置)を修得しておくべきで,チームで行うシミュレーションでのBLS/ACLSトレーニングが有用である.蘇生では専門知識や専門技能の熟達に加えて,有効なコミュニケーションとチームワークが重要で,有効なコミュニケーションはエラーを最小限にし,良好なチームワークは蘇生の質を確保してくれる.そのようなチームで行う蘇生は救命の可能性を高めてくれる.この有効なコミュニケーションと良好なチームワークは,まさに「医療安全」での最重要事項である.このため,BLS/ACLSトレーニングは「緊急事態への備え」であると同時に,「医療安全」の推進に重要である.
  • 竹田 健太, 西 信一
    2015 年 35 巻 4 号 p. 523-527
    発行日: 2015/07/15
    公開日: 2015/09/18
    ジャーナル フリー
    兵庫医科大学病院では,医療安全管理部が中心静脈穿刺の院内認定制度を設けていたが,書類認定だけであった.また,院内全体の中心静脈穿刺の合併症についてもほとんど調査が行われていなかった.平成22(2010)年度より日本医学シミュレーション学会のCVCセミナーを参考にした院内独自のシミュレータを使用したCVCセミナーを院内で開催を行った.その受講医師が認定医師となり,認定医師が中心静脈穿刺を行うようにした.同時に,院内での中心静脈穿刺の実態調査を行い,院内全体の穿刺数や合併症をサーベイランスし,「CVCエコーガイド下挿入推進チーム」を院内チーム医療の一つとして活動し,院内の中心静脈穿刺の合併症発症の減少に取り組んでいる.
  • 駒澤 伸泰, 藤原 俊介, 南 敏明
    2015 年 35 巻 4 号 p. 528-532
    発行日: 2015/07/15
    公開日: 2015/09/18
    ジャーナル フリー
    日本医学シミュレーション学会SED実践セミナー(セデーショントレーニングコース)は各領域における鎮静の医療安全向上を目的として開発された.鎮静の医療安全向上には,受講生の行動変容が重要である.大阪医科大学ではコース終了時に今後の鎮静管理についての改善点のディスカッションを組み入れている.そして,病院全体での鎮静に関する医療安全向上のため大阪医科大学では医療安全管理室と医療総合研修センターと協調し,相互にフィードバックしてコース運営を行っている.鎮静安全管理の向上には継続的な教育システムの構築が重要である.
〔日本医学シミュレーション学会〕第9回日本医学シミュレーション学会 特別企画 ─望まれるシミュレーション教育像を再考する─
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