におい・かおり環境学会誌
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41 巻 , 5 号
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特集 (嗅覚測定法に関する最新技術動向)
  • 樋口 能士
    2010 年 41 巻 5 号 p. 305
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2016/04/01
    ジャーナル フリー
    機器分析とともに悪臭評価の一翼を担う嗅覚測定法については,国内外でその普及と技術的改善が進められている.国内では,悪臭規制を従来の物質濃度規制から臭気指数規制に改定する自治体が着実に増加し,また臭気指数測定業務に従事する臭気判定士の有資格者もその数を順調に増やしているなど,嗅覚測定法の重要性は益々高まっている.一方,海外では,長年にわたる複数国での検討結果に基づいて,嗅覚測定に関する詳細な内容の欧州規格(EN規格)が制定されて以降,その世界的普及が図られている.
    我が国における三点比較式臭袋法(排出水では三点比較式フラスコ法)による臭気指数測定に関しては,過去の詳細な検討結果から,既に精度管理や安全管理についてのマニュアルが策定されており,規制に用いられる公定法として,既に一定の技術水準には到達していると考えられる.また,臭気指数を簡易に測定するための手法についても,従来よりいくつかの提言がなされている.しかし,嗅覚測定についてより多くの需要が見込まれる現在,既往の知見を基に,臭気指数測定のより一層の体系化と効率化が求められており,環境省から委託を受けた(社)におい・かおり環境協会では,精度管理と簡易測定に関する検討が改めて実施されてきた.平成21年度末にはこれら検討会で一定の結論が得られたので,本特集では,その成果を広く本誌読者にご紹介する目的で,検討会に関係された方々にご執筆をお願いした.
    最初に久保祥三氏より,におい・かおり環境行政を主導されている立場から,嗅覚測定・臭気指数規制に関する現況や動向を総括していただいた.臭気指数規制の普及と同時に,かおり環境の保全や国際化対応の検討など,現在環境省で実施されている包括的なにおい・かおり施策を,最新の統計データとともにご確認いただきたい.
    次に樋口隆哉氏からは,嗅覚測定の精度確保に関する検討会で活躍された立場から,会での成果を総括していただいた.標準ガスを用いた精度管理については過去にも成果が得られているが,今回の検討会では,より現場の臭気に近い混合ガスを標準として用いることとし,その適切な組成や濃度レベルの検討を経て,環境試料用,排出口試料用にそれぞれ標準ガスが作成された.さらに,全国の測定機関の参加でこの標準ガスを用いた照合試験が行われ,その貴重な成果が紹介されている.
    畑野和広氏には,簡易嗅覚測定法に関する検討会で実際に試験測定をされた立場から,簡易測定法の選定過程を詳説していただいた.既往の数ある簡易法の中から,2名の被験者で適正な測定精度を確保できる方法として二点比較式臭袋法が選択され,さらに,悪臭現場での試験測定等を通じて,詳細な測定方法の検証がなされている.
    最後に筆者(樋口能士)は,簡易嗅覚測定法に関する検討会の1課題として,現場測定を目指した簡易測定器具の開発について紹介した.現場での測定という制約の中で,煩雑なにおい袋試料の希釈調整を容易に実現することを目的としており,開発に際しての基本的な考え方,現状での試作器の設計概要と試用結果等が議論されている.
    いずれも嗅覚測定に関する貴重で新規の情報であると同時に,紹介された内容の多くは,今後さらなる検討を要するものでもある.幸い我が国では,(社)におい・かおり環境協会を中心としたクロスチェック体制が確立し,測定従事者による団体も活発に活動している.今回の検討会の成果について,行政,測定事業者等,様々な立場からの意見が寄せられ,嗅覚測定法のさらなる技術改善に向けた議論が活発になることが期待される.そして,精度管理や簡易測定法が確立された結果,特に,依然として測定に至ることの少ない現場周辺での環境測定の実績が大きく増加することを,本特集企画の担当者として願っている.
  • 久保 祥三
    2010 年 41 巻 5 号 p. 306-311
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2016/04/01
    ジャーナル フリー
    悪臭の規制には,臭気物質濃度による規制と人間の嗅覚での評価に基づく規制がある.後者による我が国の規制は臭気指数規制と呼ばれ,精度管理や安全面に配慮が必要であるものの,あらゆる物質のにおいに対応できるなどの利点がある.臭気指数規制が導入されている地域は現在30%にとどまっているが,環境省では,臭気指数規制の導入を推進するために様々な取組みを実施している.さらに,簡易測定法の開発や測定精度確保の検討,国際化への対応などの活動も進行中である.同時に,脱臭技術の評価や事業者への脱臭技術情報の提供,良好なかおり環境の創出を推進する取組みも行っている.
  • 樋口 隆哉
    2010 年 41 巻 5 号 p. 312-318
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2016/04/01
    ジャーナル フリー
    実際の臭気指数測定を念頭に置いた嗅覚測定法の精度管理体系を確立するために,模擬臭気標準ガスを作成した.環境試料用としては畜産業の豚舎の臭気,排出口試料用としては下水処理場の沈砂池の臭気を対象とした.文献および現地調査に基づいて臭気成分と濃度を決定し,ガスボンベに調製した.各模擬臭気標準ガスの臭気指数は複数の測定機関における繰り返し測定結果に基づいて決定した.これらの模擬臭気標準ガスは,測定機関内での自主的な精度管理,測定機関間での比較試験,その他の調査・研究に活用することが期待される.
  • 畑野 和広
    2010 年 41 巻 5 号 p. 319-327
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2016/04/01
    ジャーナル フリー
    地方公共団体の職員が悪臭苦情に迅速に対応できるよう,二点比較式臭袋法,6-4選択法,Nasal Ranger®法および六段階臭気強度表示法の4種類の測定法について,簡易嗅覚測定法としての適用性を検討した.費用面や操作性に加えて,測定結果の公定法との相関性,分析機関間のバラツキ,個人閾値のバラツキ,パネル2名での精度等について総合的に検討した結果,二点比較式臭袋法で最も良好な結果が得られた.同一希釈倍数での測定を2回繰り返すことにより,6名のパネルでの測定結果は公定法とほぼ同等の結果が得られた.
  • 樋口 能士
    2010 年 41 巻 5 号 p. 328-333
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2016/04/01
    ジャーナル フリー
    敷地境界などでの環境大気の臭気指数を現場で簡易に計測することを想定して,臭気試料の捕集からその希釈による呈示試料の作成までを容易に実施するための器具の開発を行った.試料空気の無臭空気による希釈方法として,容積計量と流量制御の2方法が考えられたが,一定の精度確保と試作の容易さから容積計量形式を採用して試作器を作成した.この試作器を用い,被験者嗅力を監視しながら現場での嗅覚測定を行った.その結果,試験室で公定法を用いた場合と比較して若干低い値が計測され,公定法との十分な相関が得られなかった.器具の更なる改善とともに,被験者の現場臭気に対する順応への対策等が課題として挙げられた.
研究論文
  • 後藤 なおみ, 松葉佐 智子, 五味 保城, 戸田 英樹, 小早川 達
    2010 年 41 巻 5 号 p. 334-348
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2016/04/01
    ジャーナル フリー
    本研究では,人為的に特定の役割を付加された臭気の質的側面に着目した分類を「臭質カテゴリー」と呼んだ.我々は都市ガスの臭質を例にとり,「都市ガスを原因とする危険をユーザーに知らせる」という役割を担った都市ガスの臭質カテゴリーに「都市ガスの新しいにおい」として新規の臭質が導入される状況を想定した.そして,ユーザーが新規の臭質を「都市ガスの新しいにおい」として認識することにより,新規の臭質が都市ガスの既存の臭質カテゴリーに追加され,カテゴリー内の臭質の種類が増えていく過程を学習と捉えた.既存の臭質と新規の臭質との弁別課題を用いて学習を行った後,3か月間にわたって新規の臭質の再認課題を実施することにより,(1)学習効果の時間的持続性,(2)再学習の効果,(3)学習および再学習における臭気の提示頻度の効果,の3点について検討した.その結果,本方法では臭質カテゴリーに新規の臭質のみを追加することは容易ではなく,追加されるべきでない臭質が誤って追加される可能性が示された.
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