におい・かおり環境学会誌
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44 巻 , 4 号
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特集(口臭とその低減対策)
  • 大平 辰朗
    2013 年 44 巻 4 号 p. 229
    発行日: 2013/11/25
    公開日: 2017/10/11
    ジャーナル フリー

    口臭は古くから人の悩みとなっており,人と会う機会がなくならない限りは口臭の悩みはなくならないだろうと言われている.自分の口臭が気になる場合もあれば,他人の口臭に気づいたという場合も少なくない.身体から発するにおいの内,自分の口臭が気になる人や他人の口臭が気になる人の割合は全体の8割を占めているという調査結果もあり,関心の高さが伺える.口臭の多くは口腔内に原因が存在しており,特に,舌背に存在する舌苔から産生する揮発性硫黄化合物(Volatile Sulphur Compounds : VSCs)は口臭の主なる原因といわれており,それらは虫歯や歯周病の原因となることもある.また,一方で口臭には加齢性のもの,疲労や緊張時などの生理的な口臭をはじめ,歯周炎,副鼻腔炎,糖尿病,精神病性障害などの病的な口臭もある.このように口臭は人とコミュニケーションをとる上で問題になるだけでなく,健康との関連性も非常に大きいものであることがわかってきている.そこで本特集では「口臭」に関する最新の研究の一端を紹介していただくことにした.

    最初に,角田氏らにより「口臭への対応と口臭症治療」と題して,口臭ならび口臭症の定義,口臭の検査・診査,診断と治療などについて医学的な見地から興味深い内容をわかりやすく紹介いただいた.実際の診療面においては,最近では口臭の臭気発生の原因疾患を治療し臭気レベルを改善するだけでは不十分であり,口臭が原因で引き起こされる精神病性障害などの心理的なケアが必要となっており,口臭が引き起こす疾患の複雑さが医療現場に携わっていない面々にもその詳細が伝わってくる.

    第二に,横川氏により口臭の主な原因物質である硫化水素,メチルメルカプタンといったVSCsに対して吸着力のある口腔内の歯科治療などに用いる材料に関する最新の知見を紹介いただいた.VSCsは,歯周組織に悪影響を及ぼし,歯科材料の黒化も引き起こすため,VSCs吸着剤は口腔の健康と虫歯予防において有用である.ここでは吸着剤として歯科用の材料であるミクロ孔を有するセラミックス,ゼオライトやハイドロタルサイトの様々な環境下での適性について紹介されている.ゼオライトは交換性カチオンを銀で置換すると,気相,液相共に硫化水素を除去できるが,銀の溶出が見られること,またハイドロタルサイトを500°Cで熱処理すると,硫化水素を液相でも良好に除去できること,ミクロ孔のセラミックスは口腔内のVSCsを除去できる材料として期待できることなど最新の材料工学的な知見も紹介されている.VSCsの気相,液相下での吸着実験などはにおい対策を専門とする読者にとっても興味を引く内容となっている.

    第三に,口臭低減策の一種として小林氏らにより「プロテアーゼ含有凹凸タブレットの生理的口臭低減効果」について紹介いただいた.舌苔は古くなった口腔上皮や食べ物の粕,バクテリアなどから構成されており,タンパク質に富んでいる.そのタンパク質が舌苔上のバクテテリアによって分解されてVSCsが産生される.そのためVSCs除去が口臭の低減化には重要となる.プロテアーゼ含有タブレットを用いることで効率的に舌苔が除去でき,VSCs濃度を低減できるという機能を活用し,それらを食品へ応用するといった見地での研究例の紹介もされており,たいへん興味深いものとなっている.

    最後に,永田氏により「ユーカリ抽出物配合チューインガムの口臭抑制効果」について紹介いただいた.口臭の主な物質であるVSCsは歯周病原性細菌をはじめとするタンパク質分解活性の強い口腔細菌が剥離上皮細胞や白血球を構成するシステイン等のタンパク質を分解して産生する.ユーカリ葉抽出物には歯周病原性細菌の増殖を抑制したり,の細菌の産生するタンパク質分解酵素活性を抑制したりする働きが見出されている.したがって,ユーカリ葉抽出物を用いることで口臭の主な物質であるVSCsの産生が抑制されることになる.ここでは実際にユーカリ葉抽出物をチューインガムに混入した状態で,VSCs産生の抑制効果を検討しており,それらの効果に関する知見は実用上実に興味深い内容となっている.

    本特集では口臭に関わる最新の知見として,口臭の組成,産生の機構,口臭が関連する症例,口臭の低減策などを紹介した.本稿の読者においては,口臭の対策や低減法の開発などの点で多くの接点があるものと思われる.ここで紹介した内容は口臭に関する多くの研究のほんの一部にすぎないが,本特集を機に,多くの読者が「口臭とその低減対策」について認識を深めていただければ幸いである.

    最後に,ご多忙中にもかかわらず,執筆をご快諾いただいた方々に,本紙面を借りて厚く御礼申し上げます.

  • 角田 正健, 喜多 成价, 久保 伸夫, 角田 博之, 福田 光男, 本田 俊一
    2013 年 44 巻 4 号 p. 230-237
    発行日: 2013/11/25
    公開日: 2017/10/11
    ジャーナル フリー

    口臭は古くから人々の悩みの種となっている.誰であっても“におい”のない口(呼気)はあり得ないにもかかわらず,他人の反応が気になる.生理的なにおいであっても,時には体調の変化・ストレス・緊張などで強くなることもある.あるいは,自覚症状のないまま進行した疾病が原因で,強い口臭が認められることもある.しかし嗅覚の特殊性から,自分自身でその臭気レベルを知ることは困難である.したがって思い悩むことになる.このような臭気である口臭への対応と,心の病である口臭症に関する日本口臭学会の治療指針を紹介する.

  • 横川 善之
    2013 年 44 巻 4 号 p. 238-245
    発行日: 2013/11/25
    公開日: 2017/10/11
    ジャーナル フリー

    口臭は,硫化水素,メチルメルカプタンといったVSCsなどの臭気物質が原因である.VSCsは歯周組織に悪影響を及ぼし,歯科材料の黒化も引き起こす.よって,VSCs吸着剤は口腔の健康と虫歯予防に有用である.今回,歯科用の基礎材料としてミクロ孔を持つセラミックス,ゼオライトとハイドロタルサイトに注目した.ゼオライトの交換性カチオンを銀で置換すると,気相,液相共にH2Sを除去できるが,Agの溶出が見られた.ハイドロタルサイトを500°Cで熱処理すると,H2Sを液相でも良好に吸着除去できた.ミクロ孔セラミックスは口腔内のVSCsを除去し得る材料として期待される.

  • 小林 隆嗣, 吉松 大介, 宮﨑 秀夫
    2013 年 44 巻 4 号 p. 246-252
    発行日: 2013/11/25
    公開日: 2017/10/11
    ジャーナル フリー

    タンパク質を主成分とする舌苔を除去すると,口気中の揮発性硫黄化合物(volatile sulfur compounds : VSCs)濃度が低下することが知られている.本研究では舌苔を効率よく除去するように設計されたタブレットの評価を行った.被験者にプロテアーゼ含有/非含有タブレットを3回舐めてもらい,舌苔をスコア付けした.タブレットを舐める前後で口気中VSCs濃度をガスクロマトグラフィー法で測定した.プロテアーゼ含有タブレットを舐めることで,舌苔スコアが減少し,口気中の硫化水素とメチルメルカプタン濃度が有意に減少した.

  • 永田 英樹
    2013 年 44 巻 4 号 p. 253-260
    発行日: 2013/11/25
    公開日: 2017/10/11
    ジャーナル フリー

    ユーカリ抽出物の口臭抑制効果を調べるために,ユーカリ抽出物配合チューインガムを用いて無作為化比較対照試験を行った.被験者を無作為に高濃度群(0.6%ユーカリ抽出物配合チューインガム摂取),低濃度群(0.4%ユーカリ抽出物配合チューインガム摂取)およびプラセボ群(プラセボガム摂取)に分け,12週間ガムを摂取させた.試験開始時,4,8,12および14週目に官能スコア,総揮発性硫化物レベルおよび舌苔スコアを測定した結果,高濃度群,低濃度群ともプラセボ群と比較して有意な改善が認められた[Tanaka et al, J. Periodontol., 81, 1564-1571,(2010)].本解説では前述論文の研究を中心に概説する.

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