におい・かおり環境学会誌
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39 巻, 2 号
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臭気対策・かおり施策
特集1・2
  • 中津山 憲, 岩橋 尊嗣
    2008 年 39 巻 2 号 p. 93
    発行日: 2008/03/25
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    哺乳類(人間を含めた)の嗅覚メカニズムは,腐敗した食べ物や飲料とする水の異臭に対して極めて感度が高いとされている.このため極微量のにおいに対しても先天的な忌避反応や恐怖反応をおこすとされている.これは,この水を飲んだら「体に悪い」という我々の異常な反応に直接結びついているのであろう
    過って,わが国はおいしい水を生で飲める国として知られていた.しかし,水源や取水場水質悪化の影響で水道水のにおい(特にカビ臭や塩素臭)がひどくなり,直接飲料とするのが躊躇される状況が昭和40年代頃より続いていた.
    これら,においの原因となっているものは,生活・工場廃水や藻類・菌類に由来のものや,浄水処理工程から発生する成分に起因していることが明らかになってきた.
    安全な飲料水を配水するため,「水道法」に基づく水質基準値が定められている.においや味の項目に関する基準値は「異常なにおいや味がしないこと」とされてきたが,平成15年の改正でカビ臭の代表的な原因物質を特定し,水質基準項目に追加された.法規制と浄水技術の改良努力の結果,近年は大都市における水道水が市販のボトルウォーターよりおいしいといわれるようになってきた.
    本特集では,水道水のにおいや味の研究で活躍されている専門の方々,厚生労働省健康局水道課 服部麻友子氏には,「水道水質基準と異臭味」という題で,水道法に基づく水質基準や快適性の配慮からカビ臭の原因物質であるジェオスミン,2-メチルイソボルネオールが追加された経緯および,異臭味被害の状況など最新の情報を解説いただいた.
    また,国立保健医療科学院 水道工学部 秋葉道宏氏には「水源における水道水のにおい発生源とその対策」という題で,水道水のにおいの発生源と発生メカニズムや水質汚染の実態,および最新の対策技術や浄水技術を実例を基に解説いただいた.
    特集2 : プラスチック製食品容器のにおい
    岩橋尊嗣
    新エポリオン株式会社研究開発室
    現代社会,私達の身の回りにはプラスチック製品が満ち溢れている.プラスチック類は安価で大量に利用できるため,主たる用途として,食品向けのガラス製容器や金属製容器の代換えとして急速に普及した.食品分野においては,容器類,フィルム類などプラスチック製品がなければ,流通は成り立たないのが現状である.それほど私達の日常生活に深く関わっている.しかし,プラスチック類の持っている特性は良い事ばかりではなく,時にはネガテイブに働く.一般的にプラスチックはガス状物質(分子)を透過したり,構造中に分子を取り込む性質がある.それらのガス状物質が有臭であれば,プラスチックににおいが付着してしまう.一方,プラスチックは,高分子化合物であるにも関わらず臭気を有する場合がある.すなわち,プラスチックがにおうということは,高分子物質ではなくヒト嗅覚に到達する揮発性物質が存在しているということである.原因はいろいろと考えられており,たとえば,未反応モノマー,低分子量物質,添加剤 等々が挙げられる.さらに,プラスチックを成型加工する場合,加熱溶解しなければならない.そのときに,さまざまな熱分解物質が生成するといわれている.プラスチックに関わる臭気は“ポリ臭”として一括され,その複雑な実態はいまだ不明な部分も多いようである.
    本特集では,松井氏(九州大学農学研究院)にプラスチック臭一般について,さらにプラスチックへのにおいの移行性などについてご執筆いただいた.また,喜多氏((株)島津製作所)には,におい識別装置を使用してのプラスチック臭の評価法についてご執筆いただいた.文末には,ポリスチレンに関するにおい物質についての資料を紹介した.
    最後に,ご多忙中にも関わらず本特集のご執筆にご協力していただきました諸先生方に,紙面を借り深謝申し上げます.
特集1(水道水のにおい)
  • 服部 麻友子
    2008 年 39 巻 2 号 p. 94-101
    発行日: 2008/03/25
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    水道により供給される水が備えるべき要件は,水道法に基づく水質基準として規定されており,このほか,水質管理目標設定項目等を定め,各項目の検査を実施することにより適切な状態を確保している.水道水の水質基準等への適合状況は総体的には極めて良好であるが,鉛,臭素酸等において基準に適合しない場合もあり,改善のための施策が講じられている.カビ臭の原因物質であるジェオスミン,2-メチルイソボルネオールは,快適性についても十分な考慮が払われるべきという考えから,平成15年改正により水質基準項目に追加された.
    湖沼の富栄養化等の水道水源状況の悪化により,水道原水がカビ臭等による異臭味被害を受けた場合には,水道事業者が応急的な対応を行っているが,依然として,給水栓まで異臭味の被害を受ける事例がみられる.異臭味被害人口は平成2年度のピーク時に2000万人台まで増加したが,近年は300万人前後で推移している.水道事業者によっては活性炭やオゾンを活用した高度浄水処理の導入が進められている.
  • 秋葉 道宏
    2008 年 39 巻 2 号 p. 102-107
    発行日: 2008/03/25
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    本稿は,水源の発生源とその対策について述べたものである.水道水の臭気は,生物作用,人為的な化学物質,浄水処理中に塩素等との反応生成物が原因で発生する.また,水道原水汚染とは異なるが,配水管等のライニングに由来するものが発生源となることもある.日本の主要な水道水源は河川表流水である.河川水質の保全にあたっては,その流域内に利害関係者が多く,水源の保全を水道事業者独自で取り組むのは限界があるので,河川の流域協議会の活用により実施する必要がある.
特集2(プラスチック製食品容器のにおい)
【参考情報】
技術論文
  • 吉田 和之, 磯本 淳貴, 今井 秀秋, 光田 恵, 柏原 誠一, 松田 克己
    2008 年 39 巻 2 号 p. 126-134
    発行日: 2008/03/25
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    一般住宅の臭気対策の基礎データを取得することを目的として,調理で発生した焼肉臭の主成分の分析を行うとともに,カタログ等でにおい低減が表示されている各種市販内装材の臭気低減効果と持続性能の評価を行った研究である.
    最初に,GC-におい嗅ぎとGC-MSにより,焼肉臭の主成分がアルデヒド類や硫黄系化合物であることを明らかにした.次に,20Lのステンレス製容器中で市販の珪酸カルシウム系の内装材が焼肉臭気を低減することを明らかにした.
    実際の住環境に近い1m3のボックスを用いて,臭気低減効果を臭気濃度等で評価したところ,焼肉臭が珪酸カルシウムやアルミ珪酸塩系の内装材により低減されることが確認された.また,珪酸カルシウムとアルミ珪酸塩系内装材の効果持続性の相違がデシケーターを用いた促進試験で明らかにされた.
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