ヒト皮膚表面から放散するアンモニアは体臭の原因となり,ヒトの快・不快感に影響する.難消化性のラクチュロースは大腸に直接届き,ビフィズス菌増殖因子として働く.ビフィズス菌が産生する乳酸や短鎖脂肪酸の作用などにより,肝性脳症患者では血中アンモニア濃度が低減することが知られている.しかしながら,ラクチュロース摂取が皮膚からのアンモニア放散に及ぼす影響については報告例がなかった.そこで本研究では,健常者12名を対象にパッシブ・フラックス・サンプラー-イオンクロマトグラフ法を用いて,ラクチュロース摂取に伴う皮膚アンモニア放散フラックスの変化を調べた.ラクチュロース摂取量は食品用量である4 g/日とした.その結果,摂取8日目後から皮膚アンモニア放散フラックスは有意に減少した.また便中ビフィズス菌数は,ラクチュロース摂取後に有意に増加し,便中ビフィズス菌数と皮膚アンモニア放散量との間に負の相関が見いだされ,皮膚アンモニアの放散には,腸内環境も関わっていることがわかった.
佐賀平野の農業用排水路では,生活雑排水の流入増加による臭気が問題となっている.本研究では農業用排水路の用水および底泥に着目し,におい嗅ぎガスクロマトグラフィー(GC-O)およびにおい物質データベースをもちいた新しい分析手法による臭気物質の推定を試みた.分析の結果,7つの臭気物質(2-メチルフラン;ピリジン;チアゾール;硫化アリル;ベンジルメチルスルフィド;酢酸ベンジル;ベンジルエーテル)を推定でき,本手法の有効性が示された.本手法の高度化をすすめることで,農業用排水路だけでなく都市河川も対象とした,臭気物質の簡便・迅速な分析技術を提案できると期待される.
宮崎県産のキンカンから分離した酵母は,MALDI-TOF-MSを用いた微生物同定法と26S rDNAのD1/D2領域の塩基配列解析により,Hanseniaspora uvarumと同定された.この酵母を用いて試作したパンは,チーズの様な香りがした.GC-MSによって検出された香り成分を比較した結果,3-メチル-1-ブタノールやフェニルエチルアルコールの割合が低く,一般的なパンでは目立たない香りが強く感じられたのではないかと推測された.
イチゴの栽培で大量に廃棄されているランナーの有効活用法として,焙煎茶の開発を検討した.官能評価において,焙煎したランナーは葉や茎と異なり香ばしく甘い特徴を有していることが判明した.また,ガスクロマトグラフ質量分析により,焙煎したランナーには5-methylfurfural,vanillinなどの香気成分が多く含まれることを明らかにした.この研究によって農業廃棄物の削減が進展することを期待する.