におい・かおり環境学会誌
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36 巻, 5 号
SEPTEMBER
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特集(においと健康(Part 1))
  • 岩橋 尊嗣
    2005 年 36 巻 5 号 p. 249
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/25
    ジャーナル フリー
     ヒトの生体からは,さまざまなにおい物質が発せられ,それらは健康指標として,また疾病治療の面からも重要な生体情報となり得る.ヒトは,におい物質を含む多くの揮発性物質を呼気として,あるいは皮膚から排出しながら日常生活を送っている.しかし,排出される物質はどれも微量で正確な定量を行うには困難が多く,貴重な生体情報であることは認識されてはいるものの,実際の医療現場においては十分に活用されているとは言い難い.しかし,最近高性能な測定機器の開発も活発化し,においから得られる貴重な生体情報を効果的に活用できるケースもでてきている.そのような動向に注目し,今回「においと健康」という題材での特集を企画した.ヒトが発する微量なにおい物質をどのように測定し,そして,得られたそれらの生体情報が健康指標として,あるいは実際の治療情報としてどのように活用されているのかを,臨床医療の現場で活躍されている専門の先生方にお願いし,貴重な情報を提供いただいた.以下に掲載内容について簡単に紹介させていただく.
  • 角田 正健
    2005 年 36 巻 5 号 p. 250-260
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/25
    ジャーナル フリー
     口臭とは原因が何であろうと,呼気の不快なにおいを意味する.特に,口腔内に起因する悪臭が口臭と言われる.口臭は長い間悩みの種であった.口臭の最も多くの原因が,プラークが関与する歯肉炎と歯周炎であるにもかかわらず,つい最近まで,口臭が歯周病学であまり問題視されなかったことは,驚くべきことである.
     口臭の大部分の原因は口腔に関連するものであり,歯肉炎,歯周炎および舌苔が圧倒的な要因であることを,多くの研究結果が示している.口腔内の嫌気性細菌が,L-システインあるいはメチオニンなどの含硫アミノ酸などのタンパク質分解により,硫化水素とメチルメルカプタンを産生する.ガスクロマトグラフによる分析結果から,硫化水素,メチルメルカプタンおよびジメチルスルフィドの揮発性硫黄化合物が明らかになっている.
  • 山賀 孝之, 宮崎 秀夫
    2005 年 36 巻 5 号 p. 261-265
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/25
    ジャーナル フリー
     歯科外来における口臭測定の実際およびその考え方について述べる.口臭発生源の80%以上は歯科の専門領域である口腔由来であるといわれている.口臭の主要な原因物質は揮発性硫黄化合物(VSC)であり,歯周病の原因菌を含む嫌気性菌が産生する.口臭検査は官能検査による判定およびガスクロマトグラフやガスセンサーを使ったVSC濃度測定による機器分析が行われている.しかし,機器分析はあくまで補助的な検査方法で,最終的な診断には官能検査が重要である.
     口臭強度は歯周病の重篤度をよく反映するため,歯周病の重要な臨床マーカーの一つであると同時に,VSCは細胞組織に対する毒性が強く,歯周病の増悪因子であるという病的意義も持つ.また,口臭は一般的な歯科治療患者にとっても関心が高く,患者に口臭への関心を向けさせることは,口腔衛生の向上に対する動機づけとして有効かつ意義がある.
  • 坂本 真理
    2005 年 36 巻 5 号 p. 266-269
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/25
    ジャーナル フリー
     近年,さまざまな病気と呼気成分の関係について研究が行われている中で,アセトンは脂質代謝の過程で発生し,糖尿病や肥満の人の呼気中に高濃度で含まれていることがわかっている.脂質代謝の指標として呼気中アセトン濃度を測定することにより,糖尿病などの病気の進行度合や治療の効果を判断できると考えられている.
     そこで呼気中アセトン濃度を測定するための小型アセトン測定器を開発した.この測定器は半導体ガスセンサーを検出器に用いたガスクロマト方式で,多くのガスの混合物である呼気からアセトンを分離,定量することが可能である.また,小型ポータブルで取り扱い操作が簡単なため,臨床の現場での使用に適している.
  • 植田 秀雄, 小橋 恭一
    2005 年 36 巻 5 号 p. 270-274
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/25
    ジャーナル フリー
     呼気には,多くの成分が含まれていることは意外に知られていない.一説には400種類以上ともいわれ,いずれも生体代謝産物である.呼気中の成分はそれぞれ意味のある生体情報を持っている.つまり,ガス濃度の変化と疾病との関係が明らかにされれば,呼気という“非侵襲”生体試料が大きな意味を持つことになる.近年,わが国ではガス測定技術の進展とともに,さまざまな専用ガス測定器の開発とその臨床研究が盛んになってきている.他方,先ごろ「国際呼気研究学会」(International Association of Breath Research)が旗揚げされ,呼気研究の機運が世界的にも高まってきた.呼気ガス測定の実用化研究の結果,臨床活用範囲が広がることにより,医療面のみならず非侵襲であるため,日常の健康管理にも役立てられることになると考えられる.呼気(におい)測定の実用化は,将来的,社会的にまことに大きい意義がある.
  • 寺井 岳三, 植田 秀雄, 行岡 秀和
    2005 年 36 巻 5 号 p. 275-279
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/25
    ジャーナル フリー
     放屁の有無の測定は,腸管運動の機能の評価において重要である.とくに手術後の患者では,腸管の動きが抑制されるため,放屁の出現は,腸管の運動が回復したことを正確に示し,経口摂取開始の指標となる.放屁を客観的に評価する放屁モニターの,指標として用いることができるガスは,大気中にほとんど含まれず,放屁中に必ず存在する事が必要条件であり,炭酸ガス(CO2)と水素(H2)が適する.CO2は呼気に5%含まれるため,部屋の換気や部屋にいる人数により大気中のCO2は変動するが,H2は,呼気中に含まれる濃度がCO2に比べるとはるかに少ないため,測定に影響が少ない.H2を指標とした小型で,簡便な放屁モニターを試作し,CO2アナライザーと比較した結果,信頼性が高く,CO2アナライザーより優れていた.今後,H2を指標とした放屁モニターの臨床での実用化が期待される.
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