におい・かおり環境学会誌
Online ISSN : 1349-7847
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45 巻 , 4 号
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特集(嗅覚障害)
  • 小林 正佳
    45 巻 (2014) 4 号 p. 245
    公開日: 2018/02/13
    ジャーナル フリー

    医療分野における感覚器障害について,「目が見えない」という視力障害,「耳が聞こえない」という聴覚障害は,人々の日常生活の質:Quality of Life(QOL)を著しく低下させ,時には交通事故や転落事故など命をおびやかす危険を招くことがある.したがって,早くから視覚・聴覚障害に対する社会的関心は高く,その研究と治療法の開発もこれまで世界中で盛んに行われてきた.一方,嗅覚障害は「においが分からなくても命には関わらない」ということで,どちらかといえば重要視されず,また嗅覚そのものとその病態のメカニズムが長年不明であったこともあり,嗅覚障害は扱いにくく予後も良くない疾患とみなされてきた.そしてこれらのため,嗅覚障害診療の進歩は遅々としたものであった.

    しかし,1991年の Linda Buck,Richard Axel両博士によるにおい受容体遺伝子の発見を機に,その後わずか20年余りで嗅覚メカニズム解明の研究が飛躍的に進んだ.また人々の生活レベルの向上に伴い,嗅覚に対する社会的関心が高まった結果,医療機関を受診する嗅覚障害患者が増加し,嗅覚障害に取り組む施設も増加した.その結果,嗅覚障害の診療にも徐々に進歩がみられるようになった.

    この特集では,現在日本で嗅覚障害の専門外来を開設して嗅覚障害の診療に取り組んでいるエキスパートの耳鼻咽喉科医に,嗅覚障害の原因疾患ごとに,その病態と診療について詳しく解説をしていただいた.

    最初に小生小林正佳が嗅覚障害の定義,分類,疫学について解説した.嗅覚障害は感覚の強弱に基づく量的障害と異嗅症などの質的障害に分類でき,また嗅覚障害の発生部位に基づいた分類と原因疾患に基づいた分類もある.これらの分類は後述の各著者が紹介するさまざまな治療法選択の基礎となるので重要である.

    古田厚子先生(昭和大学)には嗅覚障害診断のための検査について解説していただいた.嗅覚障害を治療するためにはまず診断が重要で,そのための問診,視診,画像診断,嗅覚検査は必要不可欠な基本手順である.嗅覚検査については,本邦においてさまざまな検査法が開発され,診療において有意義に活用されている.

    都築建三先生(兵庫医科大学)には慢性副鼻腔炎による嗅覚障害を解説していただいた.慢性副鼻腔炎は嗅覚障害の原因として最多であり,その診断法と治療法を紹介していただいた.とくに近年,難治性である好酸球性副鼻腔炎による嗅覚障害患者が増加しており,これに対してステロイド薬などを用いた保存的治療(内科的治療)と内視鏡を用いた鼻内副鼻腔手術による外科的治療が行われている.

    近藤健二先生(東京大学)には感冒後嗅覚障害を解説していただいた.これは感冒発症に関与するウイルスが原因とされ,中高年の女性に多く,高度の嗅覚低下をきたすことが多い神経性嗅覚障害である.神経再生を目的とする保存的治療で改善することが報告されているが,改善には数カ月から年単位の長期間を要することが多いのも特徴である.

    志賀英明先生(金沢医科大学)には外傷性嗅覚障害を担当していただいた.ここは外傷性嗅覚障害の総説ではなく,少し視点を変えて,同著者が取り組んでいる外傷性嗅覚障害の原因部位を明らかにするための放射性アイソトープを用いた研究を紹介していただいた.外傷性嗅覚障害の機能改善過程を客観的に裏付ける検査法がまだ確立されていない現状において,本研究成果が臨床実用化できれば有用な治療効果評価法になることが期待できる.

    松脇由典先生(東京慈恵会医科大学)にはアレルギー性鼻炎による嗅覚障害を解説していただいた.花粉症をはじめ,もはや国民病とも言われるアレルギー性鼻炎は鼻閉により比較的高率に嗅覚障害をきたすが,嗅覚障害を主訴に医療機関を受診する患者数は意外に少なく,また予後も良好である.それゆえに,アレルギー性鼻炎の診療では,くしゃみ,鼻水,鼻閉,目のかゆみなどの症状に主眼が置かれる一方,嗅覚障害が適切に評価されていないことが問題として挙げられている.

    小河孝夫先生(滋賀医科大学)には老年性嗅覚障害と先天性嗅覚障害を解説していただいた.年々平均寿命が伸びて社会が高齢化している一方で,老化による嗅覚低下は60歳頃から始まるので,嗅覚障害によるQOLの低下は老年者人口の増加に伴い大きな社会問題になりつつある.また嗅覚障害は認知症疾患の早期症状としても注目を集めている.一方,生まれつき嗅覚がないのが先天性嗅覚障害であり,これには他の遺伝性疾患に合併して生じる例とそうでない例がある.老年性と先天性,これらの共通した特徴は回復困難なことであり,そのような嗅覚障害を有する患者がQOLを少しでも良く保つことができるように,どのように対応すべきかが今後の社会にとって重要な課題である.

    以上の特集は嗅覚障害の診療のおおよそを網羅したものになったと思う.この特集号を読破していただき,嗅覚障害に対する耳鼻咽喉科医の日々の取り組みとともに,原因疾患にもよるが,嗅覚障害は適切な診断と治療がなされれば,実は治る例が結構多いのだということもお分かりいただければ幸甚である.

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  • 小林 正佳
    45 巻 (2014) 4 号 p. 246-251
    公開日: 2018/02/13
    ジャーナル フリー

    嗅覚はにおいを感じる化学感覚で,これに異常が生じた状態を嗅覚障害という.嗅覚障害は量的障害と質的障害に分類され,量的障害には低下と脱失があり,質的障害には異嗅症,嗅盲,嗅覚過敏,その他(悪臭症,自己臭症,幻臭,鉤回発作)がある.嗅覚障害は障害発生部位に基づいて呼吸性,嗅粘膜性,混合性,末梢神経性,中枢性の5つに分類される.嗅覚障害の原因疾患は慢性副鼻腔炎,感冒,頭部外傷の順に多く,これらを嗅覚障害の三大原因という.嗅覚障害の有病率は米国で人口の1〜3%であるが,日本ではまだ調査報告がなく,不明なので今後の疫学調査が望まれる.

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  • 古田 厚子
    45 巻 (2014) 4 号 p. 252-261
    公開日: 2018/02/13
    ジャーナル フリー

    嗅覚の異常を自覚した患者の多くが耳鼻咽喉科を受診する.耳鼻咽喉科における嗅覚障害の診察の手順として,問診,視診,画像診断,嗅覚検査が挙げられる.嗅覚障害を的確に診断し,適切な治療を行うためには,これらの結果を総合的に判断して,嗅覚障害の原因の特定と障害部位の同定を行い,嗅覚障害の程度を評価する必要がある.本稿では基準嗅力検査および静脈性嗅覚検査など嗅覚検査を中心に嗅覚障害の診断に必要な検査について解説する.

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  • 都築 建三
    45 巻 (2014) 4 号 p. 262-270
    公開日: 2018/02/13
    ジャーナル フリー

    慢性副鼻腔炎は嗅覚障害の原因で最多である.嗅覚障害は慢性副鼻腔炎患者の60~80%に認め,呼吸性,嗅粘膜性,その混合性嗅覚障害が考えられる.診断は,問診,内視鏡を用いた視診,CTおよびMRIの画像検査,嗅覚検査による.近年増加傾向にある好酸球性副鼻腔炎は,早期から嗅覚障害が出現し難治性である.治療は,鼻局所洗浄,マクロライド系抗生物質や副腎皮質ステロイド薬(全身・局所)などの薬物を用いた保存的治療と内視鏡下副鼻腔手術(ESS : endoscopic sinus surgery)などがある.これらを組み合わせて治療して嗅覚の改善が期待できる.

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  • 近藤 健二
    45 巻 (2014) 4 号 p. 271-277
    公開日: 2018/02/13
    ジャーナル フリー

    感冒後嗅覚障害は,上気道のウィルス感染罹患後に上気道炎症状が消失したあとも嗅覚障害が持続する状態である.発症は中高年齢の女性に多く,嗅神経上皮および中枢嗅覚伝導路の傷害による神経性嗅覚障害と考えられている.内視鏡検査,画像検査では異常を認めず,上気道炎罹患後に嗅覚低下を自覚したという病歴が本疾患の診断の決め手となる.基準嗅力検査では中等症以上が大半で高度低下,脱失例が半分以上を占める.治療は本邦では亜鉛製剤,漢方製剤,ステロイド点鼻および内服,ビタミン製剤,代謝改善剤などが使用されている.また嗅覚トレーニングが回復に有効との報告もある.機能回復には長期間(1年以上)かかることが多い.

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  • 志賀 英明
    45 巻 (2014) 4 号 p. 278-281
    公開日: 2018/02/13
    ジャーナル フリー

    外傷性嗅覚障害の原因部位を明らかとするため放射性アイソトープのタリウム−201(201Tl)鼻腔内投与によるSPECT-MRIタリウムオルファクトシンチグラフィ(SMTオルファクトシンチ)の研究を発展させてきた.SMTオルファクトシンチ検査により外傷性嗅覚障害における末梢嗅神経の連続性の減少と嗅球体積減少との関連が明らかとなった.また外傷性嗅覚障害モデルマウスを用いた実験から嗅神経の連続性と嗅球重量との相関も確認された.外傷性嗅覚障害に対する漢方治療成績も明らかとした.

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  • 松脇 由典
    45 巻 (2014) 4 号 p. 282-286
    公開日: 2018/02/13
    ジャーナル フリー

    アレルギー性鼻炎を有する患者の54~67%が嗅覚低下(嗅覚脱失,嗅覚低下)を自覚し,21~45%で嗅覚検査の有意な閾値上昇を認める.嗅覚障害の原因疾患別には鼻副鼻腔炎,感冒罹患後,頭部顔面外傷後の次に頻度が多い.アレルギー性鼻炎の嗅覚障害は,鼻粘膜の肥厚や鼻汁過多に伴う鼻閉によるいわゆる呼吸性嗅覚障害がメインで,既存のガイドラインでの治療法の選択は,少なくとも中等症以上の鼻閉型または鼻閉を主とする完全型が適応となる.比較的予後良好とされ,適切な治療により改善しうる病態と考えられている.

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  • 小河 孝夫
    45 巻 (2014) 4 号 p. 287-297
    公開日: 2018/02/13
    ジャーナル フリー

    老年性嗅覚障害は60歳代以降でみられ,加齢とともに徐々に悪化し,嗅覚障害により日常生活の質は大きく低下してしまう.身体能力が低下し,栄養摂取が不良となりやすい高齢者にとって,こうした問題は特に重要になってくる.先天性嗅覚障害は生来嗅覚がないというまれな疾患である.嗅覚障害のみを臨床症候として呈する非症候性とKallmann症候群などの症候性がある.MRI検査により嗅球などの嗅覚系構造が検出できるようになり診断精度が向上している.嗅覚障害に伴うハンディキャップについての理解と性腺機能不全など嗅覚障害以外の他の全身合併症についても精査する必要がある.

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