醤油や味噌は伝統的な調味料であり,日本では広く毎日食べられている.醤油や味噌のかおりは消費者にとってもその品質を左右する重要な要因である.日本の醤油には300種以上香気成分がある報告されているが,カラメル様香気のHEMFが醤油のかおりの鍵化合物とされていた.私たちは,HEMFが醤油や味噌の発酵熟成中に,メイラード反応と酵母の代謝によって生成されるメカニズムを明らかにした.さらに,ロースト様のかおりをもつ2FMも醤油や味噌の重要な香気成分であること,本醸造醤油の発酵中に生成することも報告した.また,2FMの異性体で加熱肉様の香気をもつ2M3Fの濃度は醤油の加熱によって増加し,官能検査により醤油の加熱肉様の香気に寄与することも報告した.
日本酒の香りは,ビール,ワイン,ウイスキーなどの他のアルコール飲料とは明確に異なった特徴を有している.また,その製造工程も他のアルコール飲料とは異なった独特のものである.日本酒の香気寄与成分についてはこれまで多くの報告がされている.しかし,日本酒の香気成分の含有状況や組み合わせが製造工程の過程でどのように変化するかについての系統だった研究はほとんどなされていない.本研究では,日本酒の香気特性について,製造工程に着目して検討を行った.その結果,日本酒の香気にいくつかのエステル類が重要な役割を果たしている知見を得た.
焼酎は,日本を代表する伝統的蒸留酒である.その製造方法および微生物は,焼酎の特徴香気に重要な役割を果たしている.本稿では焼酎の中でも特に芋焼酎の特徴香気成分とその生成メカニズムについて紹介する.芋焼酎の特徴香気成分の一つであるモノテルペンアルコールやβ-ダマセノンはサツマイモに由来し,発酵過程における麹の酵素の働きや,酵母の代謝,蒸留時の加熱による化学変化によって生成する.また焼酎の香味には,麹に由来する香気成分も寄与しており,甘香やキャラメル香,ロースト香と刺激味と濃厚さ等が付与されている.
北九州市小倉周辺の伝統的家庭料理で,魚のくさみが少ないと言われる魚の“糠炊き”のにおいに関する知見を取りまとめた.煮魚調理の際ゴボウなどは脂質酸化物の生成を大きく抑制するが,アミン類の抑制は期待できないと考えられる.しかし,ぬかあるいはぬかみそを添加すると,トリメチルアミンとカルボニル化合物の生成を抑制した.ぬかみそ炊きでは保存時のオクタナールの生成抑制効果が大きかった.官能検査ではぬか炊き試料は魚臭さおよびにおい強度の抑制効果が大きく,ぬかみそ炊き試料はぬかみそ漬け漬物の食体験のない若年者に嫌われた.ぬかみその発酵臭を改善することが重要であると考えられた.
本研究では実使用環境を想定した住宅のトイレに芳香消臭剤を設置することで,便器内から発生させた擬似排便臭がどれだけ感じられなくなるかを嗅覚試験によって検証した.消費者を対象に「9段階快・不快度表示法」および「容認性評価」によって検証を行った結果,芳香消臭剤を設置することによって擬似排便臭の不快度および非容認率が改善することがわかった.
また,異なる香りの芳香消臭剤と比較した場合,消臭効果に差が見られた.さらに本試験の結果は芳香消臭脱臭剤協議会の自主基準に基づいた消臭剤効力試験法による評価結果と同様の傾向が見られたため,実使用環境を想定した空間における芳香消臭剤の消臭効果を検証できていると考える.
2018年11月に北京で第7回全国悪臭測定と管理技術検討会が開催された.
本検討会の内容について,国家環境保護悪臭汚染抑制重点実験室の王先生の講演を中心に紹介する.
また,天津市環境保護科学研究院も見学させていただいた.
中国における臭気指数測定に使用されている器材等についても紹介する.