におい・かおり環境学会誌
Online ISSN : 1349-7847
Print ISSN : 1348-2904
ISSN-L : 1348-2904
47 巻, 1 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
特集(生物におけるにおい)
  • 清水 邦義
    2016 年 47 巻 1 号 p. 1
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2020/09/01
    ジャーナル フリー
  • 広津 崇亮
    2016 年 47 巻 1 号 p. 2-9
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2020/09/01
    ジャーナル フリー

    動物のにおいに対する嗜好性・感じ方は常に同じではない.同じにおい物質であっても濃度が変わると,嗜好性が変化する.例えば,インドールというにおい物質は,低濃度のときはジャスミンのような花の香りがするが,高濃度になると糞尿臭がする.このような現象は経験的には知られていたが,高等生物は神経系が複雑であるため解析が難しく,その仕組みの大部分が謎のままであった.そこで,単純な神経系をもつ線虫C. elegansを用いて,においの濃度によって嗜好性が変化する仕組みを解明する取り組みが行われており,本稿ではその成果について紹介する.

  • 芦谷 竜矢, 楠本 倫久
    2016 年 47 巻 1 号 p. 10-16
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2020/09/01
    ジャーナル フリー

    樹木に含まれる揮発性テルペノイド成分の節足動物と微生物に対する活性について,著者らの近年の研究を中心にまとめた.節足動物については,アレロパシー物質のスクリーニングに用いるブラインシュリンプ幼生致死活性,シロアリに対する抗蟻活性,ダニ類に対する致死・忌避活性について述べた.微生物については,有害藻類に対する生育抑制活性,木材腐朽菌に対する抗菌活性について解説した.精油組成の変化が抗菌活性に与える影響や,北欧米で林業被害が深刻化しているマツノネクチタケ属に対する抗菌活性物質の探索等,近年の研究についても紹介する.

  • 藤田 弘毅
    2016 年 47 巻 1 号 p. 17-24
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2020/09/01
    ジャーナル フリー

    植物は外敵に対抗するファイトアレキシンを効率よく生産する方法を用意している.それは,直接に自個体,あるいは自身の一部が外敵のアタックを受ける前に,他の個体あるいは外敵の侵入を受けている自身の一部から揮発性の物質でそのストレス情報を受けあらかじめファイトアレキシン生産の準備をしておくことである.すでに,数多くの情報伝達物質が報告されているが,植物個体を用いる方法では完全な環境コントロール下での研究が難しく,特に樹木ではサイズも堅さも生化学・分子生物学的な研究に向かない.そこで,筆者らは培養細胞をこの情報伝達研究に適用し,良好な結果を得たので紹介する.

  • 宮崎 雅雄
    2016 年 47 巻 1 号 p. 25-33
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2020/09/01
    ジャーナル フリー

    多くの動物は,生活環境に自分のにおいを残して縄張りを主張する.一方,自分以外の動物に残されたにおいを嗅ぎつけた動物は,におい主の種や性,年齢,個体情報を識別する.これはにおい主の情報が自身の生存や種の存続に必要不可欠だからである.例えばにおい主が敵のものであれば忌避することで自身の生存につながり,同種の異性で繁殖適期の個体であると分かれば,近隣を探すことで子孫を残すためのパートナーが見つかり,種が存続する.また動物個体から分泌されるある種の化学物質は,同種の仲間に特定の行動を誘起したり内分泌系を変化させる生理活性を有し,フェロモンと称される.においやフェロモンは自分が不在の時も生活空間に残すことが可能で自己の情報を相手に伝える媒体として利用できる.このように動物の嗅覚は,種間,異種間コミュニケーションにとても重要である.本稿では,哺乳動物のにおい,フェロモンの受容機構から筆者らが研究しているネコの嗅覚コミュニケーションについて紹介する.

  • 鷲岡 ゆき, 大貫 宏一郎, 清水 邦義
    2016 年 47 巻 1 号 p. 34-43
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2020/09/01
    ジャーナル フリー

    月桂樹の葉,ベチバーの根のにおいについては,低濃度提示条件にて,持続的注意力の低下抑制効果を示した.一方,モミ精油および酢酸ボルニルについては,高濃度群においては視覚刺激作業中の注意力の低下傾向が観察されたが,低濃度群においては,視覚刺激作業中の注意力の低下を抑制することがなく,作業後の覚醒度の低下を誘導した.このように月桂樹の葉やベチバーの根のかすかなにおいは,注意力の維持が必要な作業,例えば,自動車運転等に有用だと考えられるし,モミ精油や酢酸ボルニルは,不眠症等の睡眠障害の予防や改善効果が期待される.

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