人と生活をともにする代表的な動物であるイヌ・ネコとにおいに関する話題を動物行動学の視点から提供する.前半は,不快なにおいと認識されやすい排泄物臭と体臭の意義と対応策について紹介する.後半は,イヌ・ネコの嗅覚の能力と嗅覚探索作業の動物福祉への応用,愛着行動に対する飼い主の体臭の影響について主に紹介する.
犬や猫の糞臭改善を謳うペットフードやサプリメントは数多く市販されている.その効果は,どの程度根拠が示されているのだろうか.本稿では,まず伴侶動物の糞臭の成分について紹介する.そして,ペットフード中のタンパク質成分,グレインの有無,およびプロバイオティクス,プレバイオティクス,吸着剤,さらには糞性状の観点から,ペットフード・サプリメントと糞臭との関係について概説した.続いて糞臭の評価の際に重要な官能評価について説明した.最後に,以前筆者らが行った,竹粉の混餌による犬の糞臭の改善効果を紹介した.
においやかおりを分析する手法として,ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)と固相マイクロ抽出(SPME)法を組み合わせたSPME-GCMS分析が頻用されている.SPMEファイバーは種類によって極性や保持力が異なるため,分析対象に合った液相を適切に選択することが分析するうえでの大きな課題となる.本稿では,ネコの糞臭気物質に対する最も吸着スペクトルの広い吸着剤の選定および,その吸着剤を用いた臭気分析の結果を報告した.
ダージリン紅茶セカンドフラッシュに特徴的な香気成分であるホトリエノールを就寝時に吸入し,睡眠に及ぼす効果を検討した.ホトリエノール揮散条件と対照の水揮散条件で,睡眠およびストレスに関する心理質問紙,活動量から求めた睡眠変数を比較した.その結果,ホトリエノール条件で,PSQI総合得点およびストレススコアの低下量,OSA因子得点のうち起床時眠気,入眠と睡眠維持,夢み,疲労回復の増加量は有意に大きかった.また,活動量計による睡眠変数の解析では,入眠潜時,総睡眠時間および睡眠効率が有意な変化を示した.以上の結果から,就寝時にホトリエノールを吸入することにより,睡眠状態が改善するとともに,主観的にも睡眠の質や睡眠感が良好になるという睡眠改善効果が認められた.
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