におい・かおり環境学会誌
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37 巻, 3 号
MAY
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特集(においセンサーの最新技術と今後の課題)
  • においセンサーの最新技術と今後の課題
    中津山 憲
    2006 年 37 巻 3 号 p. 153
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/16
    ジャーナル フリー
    2004年ノーベル医学生理学賞を受賞した,リチャード・アクセル教授とリンダ・バック博士により嗅覚受容体遺伝子が発見され,はじめてにおい受容体(においのセンサー)とその情報がどのように脳に伝達し処理されるかという嗅覚メカニズムの実態が解明された.
    つい最近まで嗅覚の本質が「最も謎に包まれた人間の感覚」として,ほとんど解っていなかったという事実は全く驚きである.
    一方,人工センサーの研究においては,センサー素子の進歩がめざましく,いわゆるガスセンサーとして開発された金属酸化物や金属酸化物半導体センサーは,さまざまな工夫で極めて低濃度のにおい成分を安定して検知できできるように改良されてきた.
    また,水晶振動子の表面に吸着された物質の質量で共鳴周波数が変化することを応用したにおいセンサーも多く開発され,表面に加工される吸着感応膜としては,目的により有機化学物質,生体物質,脂質などのさまざまな物質が単独あるいは複数の組合せで応用されている.このほかに色の変化を利用する光学的なにおいセンサーなど新しいセンサー素子の開発が進められている.いずれもにおい成分を電気信号に変換し数値化するものである.
    1980年代の後半には,においの強さを数値化する「においセンサー(ニオイセンサー)機器」が始めて開発され,においの現場に携帯できる簡便な測定器として商品化された.
    においセンサーが開発された当初は,においが物理量として定義できないという前提の中で,数値が何を意味しているのか,また臭気濃度や臭気指数との相関に関して,それぞれ開発したメーカーが独自で定義したための混乱や,悪臭防止法による臭気の測定方法(公定法)が制定されていた関係もあり,広く普及には至らなかった.
    におい・かおり環境協会は,「臭気簡易測定技術の活用に関する報告書」の中で,においセンサーの適応に関する詳細を発表しているので,参考にされたい.
    近年,人間の嗅覚メカニズムの研究が進むにつれて,嗅覚受容体から脳内処理までの仕組みを,人工のセンサーで模倣する試みが盛んにおこなわれている.嗅覚受容体のように,異なる特性を持つ複数のにおいセンサー素子集合体から得られる情報を解析するアルゴリズムやCPU(演算装置)の革新的進歩で,においの識別や強度を実用のレベル表現できるようになってきた.また,測定データの集積によりにおいの識別や強度(臭気指数相当値など)を,かなりの精度で表現できるようになってきた.悪臭防止法においては,公定法による測定が義務づけられている.しかし,この方法は,においの採取から測定結果がでるまでかなりの時間とコストを要するのと,連続測定ができないという問題がある.
    一方においセンサーは,あくまでも簡易測定ではあるが,連続的なモニタリングやリアルタイムににおいを測定できるという利便性から,悪臭問題のみならず,食品や医療の分野などさまざまな場面でのにおいセンシングに応用されている.
    今回の特集は,これら,においセンサーの研究開発の最前線で活躍されている諸先生よりさまざまな立場の知見から最新の情報と今後の課題について執筆をいただいた.
    南戸秀仁氏(金沢工業大学 高度材料科学研究開発センター)には,「においセンサーシステムの開発現状および応用分野」という題目で人間の五感とセンサーおよびセンシングの研究開発の第一線で活躍されている研究者の立場で,最新のにおいセンサーの動向を総括的に紹介いただいた.また,においのセンシングの難しさや,最近研究開発が活発化しているエレクトリックノーズ(システム)のケモセンサーをはじめ構成される原理やテクノロジーに関して解説いただいた.
    中本高道氏(東京工業大学理工学研究科)には,「においセンサーとにおいの記録再生システム」という題目で,水晶振動子式のにおいセンサーに長年取組んでおられる研究者として,原理やメカニズムおよび製造方法に関しても紹介いただいた.
    「においの記録再生システム」は,においの出力パターンと調合装置でにおい情報を記録すると同時に再生(再現)できるシステムで,調合し記録したにおいを電子情報として送受信し,その情報を再生できるという夢のような研究や,医療の現場の口臭センサーへの応用や,光学センサーで読み取る検知管悪臭センサーの紹介もいただいた.
    (以降全文はPDFをご覧ください)
  • 南戸 秀仁
    2006 年 37 巻 3 号 p. 154-163
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/16
    ジャーナル フリー
    21世紀は,「かおり」の時代だという.「におい」や「かおり」の文化は,人類文明とともに築き上げられ,食物に香味と心に豊かさを与えてきたが,「におい」や「かおり」はいつも我々の身の回りに存在して,常に我々の生活と深くかかわっているにもかかわらず,空気と同様に,忘れられがちな存在で,しかもわからない面が多い.
    このような「におい」や「かおり」を,人間や犬に代わって検知をする「におい」センサーシステム,すなわちエレクトロニックノーズ(e-Nose)の研究開発が活発化してきている.本稿では,このエレクトロニックノーズシステムの開発現状について概観するとともに,そのコア技術であるケモセンサーの原理・特徴およびセンサーシステムの応用分野について言及する.
  • 中本 高道
    2006 年 37 巻 3 号 p. 164-171
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/16
    ジャーナル フリー
    食品,飲料,化粧品,環境計測などの分野では,においを簡便かつ客観的に測定できるセンサーが要求されている.水晶振動子ガスセンサーはかおりの強さとセンサー感度に相関があり,簡便に多様なセンサーを製作することができるので,このセンサーの原理と製作方法を紹介する.水晶振動子ガスセンサーを応用して,複数の要素臭の混ざったにおいを記録し,記録したにおいを再生するにおい記録再生システムの実験について述べる.さらにニーズが見込まれるセンサーとして低濃度の硫化物を検出して識別する口臭センサー,ガス検知管と光学センサーを利用した悪臭センサーについても紹介する.
  • 喜多 純一, 岡田 昌之, 赤丸 久光, 木下 太生
    2006 年 37 巻 3 号 p. 172-178
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/16
    ジャーナル フリー
    におい識別装置の原理を紹介後,実用に向けてのいくつかの工夫と,それらを利用した実際の応用を解説した.工夫としては,GC/MSで良く利用される捕集管を用いて湿度干渉を低減するものと,においの強さと質が絶対値として求まる解析方法について紹介した.また,その応用例として,畜産臭,油汚染土壌,大気連続測定などを紹介した.
  • 吉栄 康城
    2006 年 37 巻 3 号 p. 179-184
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/16
    ジャーナル フリー
    におい検知素子の感応材料として酸化インジウム(In2O3)半導体を用い,表面処理などを行って,新しい汎用型のにおい検知素子を開発した.In2O3型検知素子では,応答・復帰特性および湿度特性が改善され,測定時間の短縮と試料中湿度による測定誤差の低減など,実用的に優れた性能を実現した.無臭ガス(H2 (水素),CH4 (メタン)など)に対する感度の抑制も良好である.本報では,In2O3型検知素子の概要について述べ,臭気指数管理のためのポータブル型「ニオイセンサ」の活用および定置型「臭気モニタ」による環境臭気の管理など,アプリケーションについても取り上げる.
  • 岡野 達夫, 岩本 秀久, 田口 正, 森住 勉司, 根岸 稔
    2006 年 37 巻 3 号 p. 185-189
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/16
    ジャーナル フリー
    当社は金属酸化物半導体においセンサー素子を複数個使用したにおい測定装置をシリーズ化して開発し,登録商標e-noseとして既に各分野で広くご活用いただいている.
    におい測定装置と嗅覚との相関性は,機器測定値(におい強度)を嗅覚測定における臭気指数や臭気濃度などに相当する単位で表現する場合に問題となる.
    機器測定値(におい強度)と嗅覚単位との相関を示す検量線を測定対象の各複合臭に対して作成することによって問題解決した.
  • 加藤 喜美子, 瀬戸口 泰弘
    2006 年 37 巻 3 号 p. 190-194
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/16
    ジャーナル フリー
    においへの関心の高まりや快適なにおい環境を追求するため,多くのにおいを検知できる半導体型ガスセンサーがにおいセンサーとして利用されてきている.におい測定装置や,においによる機器制御など,さまざまな用途に適用されるとともに,センサー特性もにおいセンシングに適したものへの要求が高まりつつある.ここでは,半導体型センサーの特性向上手法や,最近のにおい検知用のセンサーについて概説し,におい情報を最大限抽出する方法の一例として動的非線形応答の利用を紹介する.最後に現状のにおいセンサーの応用例について述べる.
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