子宮摘出術症例10例で麻酔導入時の高濃度イソフルラン吸入による循環動態変動に対するフェンタニル導入2分前投与の効果と,麻酔導入前後の血中カテコラミン濃度の変化を検討した。チアミラールおよびベクロニウムを静注,100%酸素およびイソフルラン5%とし,調節呼吸を5分間継続後気管内挿管を行った。脈拍数は,イソフルラン5%吸入群(I群)では導入後有意に増大したが,フェンタニル2μg/kg前投与群(F群)ではこの脈拍数の上昇は有意に抑制された。導入時,平均動脈圧には群間の差はなかった。I群およびF群とも,血中ノルエピネフリン濃度は導入後有意に増大したが群間の差はなかった。また,エピネフリン濃度にも群内,群間の差はなかった。本研究結果から,高濃度イソフルラン吸入時の頻脈抑制にフェンタニル前投与は有効であるが,この抑制作用は血中カテコラミン遊離抑制によらないものと考えられた。
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