普通ガラス窓にブラインドを設けない重構造,中構造,軽構造の基準階のモデル室を想定し,家具を平板に置換し,既報の家具の吸熱応答係数を用い,家具を含むモデル室の16元熱平衡式を連立して解くことによって,家具の熱的遅れを考える場合の基本重み係数を求める方法および基本重み係数と著者らの提案した窓透過日射の室内各表面への動的配分比の計算式で計算した日射熱取得の配分比とを合わせて,家具の熱的遅れを考える場合の重み係数を計算する方法を示す.従来の空気調和・衛生工学会のレスポンスファクタ法を用いた日射による負荷計算方法の中では,家具の熱的遅れが無視されているが,家具に吸収された単位パルス励振に対する基本重み係数の初値は1.0で与えられている.その結果,ブラインドのない中構造に対する日射による負荷を計算する場合には家具に対する重み係数の即時値は0.2であり,重み係数の初値は0.3990である.本論文の中構造モデル室の計算結果によって,家具に吸収された単位パルス励振に対する基本重み係数の初値は0.2491となり,家具に対する重み係数の即時値は0.0735となり,日射による負荷計算用重み係数の初値が0.2078となることがわかった.この結果と従来の学会の数値との間に差が大きく存在することがわかった.本論文では,ASHRAEの室伝達係数と差分法に基づくスウェーデンのプログラムBRISの計算結果から換算した日射による負荷計算用重み係数を求めた結果,ASHRAE,BRISの数値と本論文の計算結果に比べると,SHASEの重み係数の初値はほぼ2倍大きくなることがわかった.空気調和・衛生工学便覧(第11版)に記述された基礎理論と計算手順は有効ではあるが,家具の熱的遅れが考慮されていない.ここでは幾つかの計算結果を基に家具の熱的遅れを考えたブラインドを設けない場合の窓透過日射による負荷計算用重み係数を提示した.負荷計算用重み係数と間欠空調の除去熱量重み係数との間には深い関係があることから,家具の熱的遅れを考慮して除去熱量重み係数を確認することが必要と考えられる.
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