国立西洋美術館本館は,日本におけるル・コルビュジエ設計の唯一の作品として知られており,「ル・コルビュジエの建築作品‐近代建築運動への顕著な貢献‐」の構成資産のひとつとして世界遺産登録を目指している。そのため,美術館としての機能を維持しつつ,文化財として価値を損なわないよう,コルビュジエの設計理念を尊重し,保存・回復に力点を置いた改修計画の立案が課題である。本研究は,本館における空気調和・換気設備に関して,2009〜2010年に実施した検討をまとめたものである。本報(第2報)では,原設計復元時に計画されていない仕切り壁を撤去した場合のエントランスホールにおける環境予測について,CFD解析結果を示す。
本研究は,空調搬送系の省エネルギー設計法を開発することを最終目的とするものである。本報では,現在の一般的な設計法で課題となっている低負荷時の非効率な運転を解決する方策として,2次ポンプにおいて小流量・低揚程のポンプを直列配置するポンプ直列配置を提案し,ポンプ直列配置の省エネルギー効果について検討している。実在のシステムを再現した空調システムシミュレーションによりその効果を把握し,バルブ制御や吐出圧力制御の場合,最大60%の省エネルギーを実現できることを示した。また,配管が長いシステムや部分負荷運転が多いシステムにおいてより高い効果が期待できることを示した。
前報では、45~60℃の温水の利用を想定した低温再生型吸着材(ゼオライト)を用いた吸着式冷凍機の試作機を作成し、その性能評価を実施した。その際、従来の吸着式冷凍機とは異なり、吸着速度が脱着速度を上回る傾向が確認された。この傾向は、この速度差を小さくすることで機器性能が向上することを示唆する。そこで、本報告では、従来は吸着材熱交換器(吸着側)、凝縮器の順で循環させていた冷却水の流路を逆転させ、吸着材熱交換器温度の上昇を代償に凝縮器の温度を下降させることで、この速度差を減少させ、機器効率の向上を試みた。結果、試験条件下では、冷凍能力に関しては最大16%程度、熱COPに関しては最大8%程度の機器性能の向上が確認された。
省エネに寄与する新たなエアコン選定方法を提案するため,従来のエアコン選定に関する調査とその課題を抽出した。その結果,「畳数めやすの基になっている冷暖房負荷の値は1964年から改正されていないため,現在の住宅特性に合わない」,「多様なライフスタイルが考慮できない」といった課題が抽出された。これらの課題を基に,生活者が「住宅特性」,「ライフスタイル」,「選好項目」を入力することで,多様な住まい方に合ったエアコンを自動で選定できる,エアコン選定ツールを提案した。戸建住宅を対象としたツールのプロトタイプを構築したところ,畳数めやすで選定するよりもツールで選定する方が,省エネとなることが試算された。
空調設計において吹出し口配置等の検討を行うため、近年、CFD(数値流体力学)によって室内の気流解析を行うことが多くなっている。しかし、複雑な形状の吹出し口を有する室のCFD解析では、詳細なメッシュ分割を要するために計算負荷が増大し、実用性に欠ける。そのため、計算負荷の軽減を目的とした吹出し口のモデリングに関して様々な研究が行われている。本研究で対象としているのはライン型ディフューザであり、部屋寸法に対し吹出し口寸法が非常に小さい。そこで、本論文ではPV法の適用について検討を行い、吹出し口の寸法より大きい計算格子を用いた際の、実用的な境界条件の規定方法の提案を行う。