ヒートアイランド対策として用いるのに適した,近赤外光線再帰反射に基づく外装材の表面形状の最適設計手法を提案した。最適解の探索手法として遺伝的アルゴリズムを用い,評価対象である形状ごとの反射分布特性の推定にはレイトレーシング法を用いる。この手法では,設計目標を目的関数として設定することにより,各表面形状のパフォーマンスを定量的に評価することが可能である。また,設計目標への達成度を適切に評価することができる目的関数の選定を行った。この研究で提案された手法によって最適化された表面形状は,設計目標を達成していた。外装材の最適設計手法のプロトタイプを提案することができた。
近年、デマンドレスポンスや不具合検知・診断といった建築設備の高度な運用が期待されている一方、これらに必要な空調システムシミュレーションの構築やデータ分析は手作業に依るところも大きく容易ではない。本研究では Brick Schema を活用し、空調システムシミュレーション構築支援・活用フレームワークを提案する。提案フレームワークの活用例としてまず熱源システムのBrickモデルを構築し、機器オブジェクトの作成や隣接する機器の温度・流量に基づく対象機器の入口温度等の算出を自動化する手法を示した。次に、Brick モデルのグラフ構造を活用したシミュレーション結果の分析がスケーラブルに実行可能であることを示した。
本研究は,排気や還気を処理して再度室内に給気する空気循環系について,動的定常濃度という概念を適用し,対象室の換気効率を求めるためのトレーサガス実験法の開発を目指すものである。本報(第2報)では第1 報に引続き,空気循環系における動的定常濃度を用いた空気齢分布の算出方法を示すとともに,空気齢測定の原理の確認や適切なデータ収集のタイミングに関する知見を得るためにCFD解析を実施した。その結果,漏気なしの条件での動的定常濃度から得られる空気齢分布は,開放系におけるパッシブスカラーの空間一様発生による空気齢分布と一致すること,漏気がある場合の空気齢は,測定開始から時間が経過すると,漏入口付近で漏気がない場合の空気齢分布からの乖離が見られるが,循環換気量による名目換気時間の1.0~1.5倍程度,漏入口付近を除けば数倍程度のタイミングでデータ収集を行なえば,精度良い空気齢測定が可能であることを明らかにした。