本研究では,不燃性の膜天井内に天井カセット型4方向吹出パッケージエアコン(以下PAC)を配置し、膜からの放射効果を期待した空調方式を提案し,その有用性の検証を目的としている。本報では,通常の天井カセット方式と不織布の有無による2パターンの膜空調方式について冷房時の実大実験を行った。その結果、膜なしと膜あり(不織布なし)では、温熱環境特性に大差がなく、膜(不織布あり)では、膜なしと膜(不織布なし)に比べ、温度変化の少ない空間となっていること、膜による冷放射効果が大きいこと、膜を介してもPACにて負荷に応じた熱処理が行われていることが分かった。
本論文の目的は、ボイドを有するオフィスビルを対象に、自然換気設計初期段階で室内換気性状を予測可能なデータ蓄積及び外部条件に応じた自然換気口開閉運用方法の提案を行うことである。本報では自然換気のみによる内部熱負荷の除去に加え、自然換気利用運転モードとして自然換気と空調を併用するハイブリッド空調及び自然換気口の開度制御を行い、利用時間の拡大及び空調負荷削減量(除去熱量)の増大を目指した。各モードの年間除去熱量の把握、開度制御については開閉回数・段数による除去熱量への影響について検証を行った。
屋内位置測位手法のオフィスにおける設備制御や状況把握といった多角的な活用に関して活用目的別の評価基準を検討した。さらに、実環境において市販されているサーモパイル型人感センサーを用いた屋内位置測位システムの精度検証を行った上で、本基準を適用し、オフィスにおける活用の可能性について考察した。典型的な活用方法(照明制御、空調制御、位置情報)に対しては、空間解像度、時間解像度はほぼ実用に耐え得ることが示唆された。一方で、在不在と人数の検知精度に関しては、熱画像上の人と人の一体化といった多数の要因によって、センサー設置位置の環境による相対誤差およびそのばらつきが大きく、利用には工夫が必要であると結論付けた。
本研究は大空間における独立式放射冷房の基本性能を明らかにすることを目的としている。本報ではその第一段階として、室内温熱環境及び放射パネル単体の冷房能力の把握を目的に、実在施設に導入予定のフィン形状の異なる2種類の柵型独立式放射パネルを対象に実験室にて定常冷房実験を実施した。その結果、冷房時は床から0.7m以下の範囲において温度成層が生じる一方で0.7m以上の範囲においては鉛直方向・水平方向共に概ね均一な温度場を形成することを確認した。また、本実験におけるパネルAの定格冷房能力は 422.9W/m2、パネルBは545.5W/m2となり、パネルBがパネルAよりも平均で25.4%高い冷房能力を示した。