紫外線ランプを空調機内部に設置することで空気中の微生物の殺菌効果を期待する場合,流れ場および放射場が均一でないために,殺菌効果もまた均一にはならない。期待する殺菌性能を担保するためには,通過する空気の紫外線照射量の最小値を評価する必要がある。そこで,ランプの設置決定法として,流れ場において空気の滞在時間が最短となる経路を特定し,その経路上にランプを設置することで殺菌効果の底上げを図ることを提案する。本稿では,簡易形状および実形状を対象に数値解析を行い,従来ランプ配置と提案手法によるランプ配置の殺菌効果を比較した。その結果,提案手法に基づくランプ配置によって紫外線照射量の最小値を向上できることを示した。
筆者らは吸着材ハスクレイを用いて,低温廃熱を利用することができるオープンサイクル型の吸着材蓄熱システムを開発してきた。ハスクレイの耐久性などの材料開発とシステム開発を行った後,定置型蓄熱システムとオフライン熱輸送型システムの実証試験を実施した。オフライン熱輸送システムではコージェネレーションシステムで蓄熱し,スイミングセンターへトレーラーで蓄熱材を輸送してプールの水などの昇温熱源として供給した。夏期・中間期・冬期に渡って吸着材蓄熱システムを評価し,この実証試験によって90%以上の再生効率が確認された。本システムの蓄放熱特性を評価し,既報の数値解析モデルと比較した結果から,本数値解析モデルが設計ツールとして活用できることを確認した。
本報では、前報で構築したシステムシミュレーションを用いることで、中央式空調システムの VAV・VWV・CO2 濃度制御に関して要求風量演算式における積分時間や給気温度制御における補正値、各 PI 制御の比例ゲインといった詳細制御パラメータの影響を算出・分析した。負荷の状況によって消費電力量や室温の制御性への影響が変化することや、ダンパ開度制御の比例ゲインといったある一つのパラメータ変更がシステム全体へ影響を及ぼすことが確認された。パラメータがシステム挙動に及ぼす影響を理解することで、より適切な VAV・VWV システムのデータ分析や設計が可能になると期待される。
本研究では、強化学習による土壌熱交換システムの最適運用制御則の確立を目的としている。本論文では、実在建物に導入されている土壌熱交換システム(地下ピット)を対象に、汎用制御シミュレータにより構築した方策ベース強化学習アルゴリズムの一つであるPPO( Proximal Policy Optimization)を用いて、省エネ性能の確保と結露発生の抑制を両立させた制御則の構築及びその有効性を検証する。以下に得られた知見を示す。1) 学習の収束には 200 回程度の試行回数を必要とした。2) Random 制御・DDQN との比較により、PPO は、省エネ効果・結露抑制効果の双方において、最も高い制御性能を示した。
20フィートのコンテナ施設は、構築が早くて移動が便利であり、また低コストであるというメリットもあるので、近年、室外での医療用途関連検査屋、移動式オフィス、展示スペース、簡易式チキンカー、移動式露店として さまざまな目的で使用されている。 このようなコンテナの室内換気および室圧要件も徐々に多様需要が生じている。無害な排気を前提として、低コストで簡易なファン設備により室内の陰圧効果とファンの性能を調査するため、中・高効率フィルターを付けずに CDC の最小基準圧力差-2.0Pa、換気回数 6〜12T / h条件を持って実験検証を行った。実験結果は、扉、ガラリなどが閉ま る状態で-2.0Paを満たされれば、少なくとも8回換気が必要、ガラリ ON の場合は、10 回換気以上が必要となる。屋内の-10Pa の目標値を達成するため、扉、ガラリ等が閉まる状態で少なくとも 18回換気が必要であり、ガラリONだと 30 回以上の換気回数が必要である。 さらに、ファンの設置場所について、コンテナ中央位置につけると室内全体の陰圧効果が良く、ファンの吸込み口から離れると陰圧効果は低下することが証明された。