昨今では長期化する新型コロナウイルスの流行に伴い、感染症の収束だけでなく共存が目指されている。特に長時間を執務空間内で過ごすことが想定される執務者については、マスクやパーティションを利用するなどの対策が講じられることが多い。しかし、この方法では新鮮空気が執務者に供給されにくく、執務者の健康や快適、知的生産性などへの悪影響が考えられる。そこで本研究は、ブースごとに新鮮空気を供給する、ブース型置換換気を用いたパーソナル空調を提案し、その性能の把握を目指す。本論文では、給気量やブース高さをパラメータとした実大実験による温度・CO2 濃度・飛沫核分布測定から、本システムの性能を検討する。
地域冷暖房施設(DHC)は、大型の熱源・発電設備を保有していることからVPP 調整力として大きな供出電力を提供できる可能性がある。本研究では、複合熱源システムを有する地域冷暖房施設において、電気式熱源機からガス式熱源機への製造熱量の置換運転によるディマンド・リスポンス(DR)運転制御手法と供出電力量の算定法を提案した。また、実際のDHC において、冬期および夏期を対象に仮想的な下げDR 運転の実証試験を行うことで、製造熱量の置換運転による下げDR の実施が可能であることを確認するとともに、実運転に際しての課題抽出を行った。
建築物の雨水利用システムの計画・設計において, オンサイトでの水収支を精度高く検討するためには, 短時間での降水量の変動, 建物用途による給水負荷特性, 貯留槽容量における適切な水位制御を考慮した計算手法が必要である。本研究は, 時刻別降水量と時刻別給水負荷変動を用い, 水槽内での水位変動と雨水利用率や上水代替率を算出する実用的で各種検討に応用可能な雨水利用システムシミュレーションツールを開発することを目的とする。本報では, 各モジュール単位で行う計算手法を示し,雨水利用システムにおける省資源検討を目的とし, 本ツールによる計算例とケーススタディー分析を行い, 多様な活用の仕方の可能性を示した。
本研究は新築、既築のオフィスビルを対象に、そのコンバージョンやリニューアルによって、水まわりの変更や増設が生じた場合にも対応できるハイブリット排水システムを提案し、その排水性能評価と排水システムの計画・設計手法に資する知見を得ることを目的とする。既報 1)~4)では、新設、既設の排水横枝管に圧送排水システムを設置した3つのバリエーションから成るハイブリット排水システムを提案し、それらの排水性能評価を行い、排水負荷特性などに関するデータを収集してきた。本報では、オフィスビルで一般に採用されるループ通気方式の排水立て管システムに、既報1)~4)の知見から得られた排水負荷を与え、排水立て管システムの排水能力への影響を把握する。また、設計時にハイブリッド排水システムを排水立て管システムへ適用した際に適用できる階層を検討する。
温度差による浮力上昇効果が見込めず,擾乱気流の影響を受けるキャノピー型排気フードの捕捉性能改善として,凹型吹出口の内側側面から空気を噴出して周辺空気を吸引しながら収束し上昇させる排気補助装置の併用を検討した。風速 1 m/s の気流を吹き込む空間で二酸化炭素を発生させ,上方 1mの排気フードで捕捉する換気設備において、実験及び CFD 解析により,排気補助装置併用効果を調査した。その結果,排気補助装置併用により,フード排気捕集効率が大幅に改善し(実験:24.5 %→93.7 %, CFD 解析:28.1 %→89.1 %)、導入効果を確認した。