各種の空調負荷のなかでも換気負荷は主要な負荷の一つであり,省エネルギーの観点では外気導入量の最適化とその適切な処理の重要性が指摘されている。本報を含む一連の研究では,全熱交換形換気システムに採用される全熱交換エレメントに着目し,そのエレメント内での顕熱・潜熱移動をモデル化し,簡易型ならびに詳細型の数値解析法を開発した上で,熱交換エレメント流路の最適化に向けた基礎的な検討を行うものである。その上で,全熱交換エレメントの性能改善に寄与する要素をパラメトリック解析によって明らかにすることを目的とする。本報(第 2報)では,計算流体力学 CFDと材料内の熱・水分同時移動モデルを連成した詳細型の数値解析モデルを整理した上で,前報(第 1報)で報告した小型の全熱交換エレメントを対象として,温度交換効率・エンタルピ交換効率・フィン効率の解析を実施した結果を報告する。また,流路幾何形状の差異と,断熱・断湿面の偏在が各種交換効率に与える影響を検討した結果も併せて報告する。
業務用ビルにおける空調設備の大幅なエネルギー消費量の削減が求められている。そのためには空調機器単体の性能向上に加えて,再生可能エネルギーや未利用エネルギーの導入が必要になる。そこで筆者らは,フロン冷媒よりもハンドリングが容易で拡張性の高い熱源水を活用した個別分散型空調システムの開発を目指している。その構成機器として,低温再生デシカントロータを採用した水熱源ヒートポンプ式の外気処理ユニットを開発し,機器単体の性能評価を行った。その結果,冷暖房能力,除湿・加湿量,COP の熱源水温度の依存性を確認できた。また,本ユニットが,夏期や中間期を通じて高い性能を発揮すること,冬期においても再生可能熱エネルギーや未利用熱エネルギー等を投入することで高い性能を発揮することが示唆された。
業務・家庭部門における省エネルギー強化が求められる中,四国・高松のあるオフィスビルでは ZEB化を目指して,放射冷却と微気流対流冷却を併用した冷房システムや様々な省エネ・自然エネルギー利用技術を導入した。その結果,運用初年度には年間一次消費エネルギー量削減率が 58.5%となり,<italic>ZEB READY</italic> を達成し,更に 2 年目には運用改善を行うことによって削減率を 60.7%へ向上させた。また,省エネを実現している中での室内環境を実測調査したところ,夏期冷房時はペリメータゾーンも含め,空気温度の日中変動が 2.7℃以内,居住域の上下差が最大 0.5℃となった。在室者の熱的快適感と満足度も高く,約3割の人は知的生産性が向上したと回答した。