分岐管内の流れは非常に複雑であるが,その流動特性を明らかにすることは,配管装置の設計における最も重要な問題の一つである.最近,マニホルドないしは十字管における流れ,または二相流流動時ないしはキャビテーションを伴う単一分岐管における流れに関する研究が行われたが,いずれの場合においても単相流流動時の単一分岐管の流動特性が基礎であり,それらの流動特性を知るには,単相流流動時の単一分岐管の流動特性を知ることが不可欠である.しかし,単相流流動時の単一分岐管においてすらその流れは非常に複雑であり,これを解明するのは容易でないが,真に優れた配管装置を設計するためには流動機構そのものを観察し,理論的考察に立脚した実験結果の解析を行わなければならない.この研究の目的は,単一分岐管内における流動機構を系統的に明らかにすることにある.そこにおける流れは,はく離・逆流・再付着および二次流れなどを含む極めて複雑なものであって,これを数学的に完全に解くことは非常に困難である.しかし,たとえ限定された解析結果であっても,これと実験結果を比較することによって,我々は分岐管内流れの機構を総体的に理解することができる.ここでは研究の目的から,分岐角度が45°,90°および135°で面積比がそれぞれ1.0および1.96なる6種類の分岐管がその代表として選定され,研究が行われた.まず,屈折流路内の流れに対して,著者らが以前に報告した自由流線理論を用いて流れを解析したのと同様の方法により,任意の分岐角度と断面積比を有する二次元分岐流路内の流線および圧力分布などが解析され,数値計算例が示された.つぎに円形断面を有し,鋭い主管・枝管接合面を有する分岐管により,層流状態における流線観察実験と乱流における圧力分布の測定が行われ,それらの結果と自由流線理論による計算結果とが比較された.初めに層流状態における実験結果に対して計算結果との比較が行われ,両者の結果は,流量比が小さいときは実験範囲内ではレイノルズ数にかかわらず一致し,自由流線に関しては解析結果において障壁が生ずる場合においてすらほぼ一致することが示された.ついで,乱流における圧力分布の実験結果に関して計算結果との比較が行われたが,分岐角度および面積比が小さいときは,両者の結果は定性的にはもとより定量的にも一致するが,これらが大きくなると定量的には若干差異が生ずることが示された.また,流れが分岐することによって生ずる圧力分布の変化の様相が示され,分岐管が存在することによる影響の及ぶ範囲は,上流側に狭く,下流側に広いことなどが示された.自由流線理論に基づく分岐する流れの計算結果と実験結果の密接な相関関係は,この解析方法が工学的に有用であることを示している.
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