地球温暖化対策を背景に,ストック建物への実効力ある省エネルギー対策が求められており,その解決策の 1 つとして ESCO 事業が注目されてきた。本事業の特徴の 1つに省エネルギー効果保証が挙げられるが,実効力の向上や信頼性を高める上で効果の的確な算定が求められる。しかし,効果の算出に用いるベースライン算定の精度検証に関する既往研究では建物全体を対象としたものが主なものとなっており,省エネルギー手法別に算定されたベースラインの精度に関する知見は少ない。そこで,本研究では,省エネルギー手法別のベースラインモデルを,筆者らが作成した単純な温度補正モデルと,中間期の影響を考慮できる ASHRAE モデルと比較することで,推定精度の検証を行った。
CO2削減の緊急性が一層増し、エネルギー消費比率の大きい既設施設に適用しやすい新たな省エネルギー手法が強く求められている。省エネルギー手法として広く採用される変流量制御は回転数下限の低減傾向により更に高効率となる可能性が高まっているが各所への流量を保証しにくいことから供給差圧は適切に低減されず制御の省エネルギー余地を大きく残している例が多い。本報は簡易に変流量制御の効率を向上させることを目的とし、空調機器類が差圧を必要としていない状態、条件の確認により差圧設定を低減する数種の方法を検討して効果を報告するものである。冷水について検討を行い推定末端差圧制御の冷水二次ポンプ動力を55%削減、WTF350以上となった実測結果を報告すると共に更に簡易に既設に適用しやすい外気状態等で空調機の差圧低減を適用できる条件を確認する手法や課題について報告する。
本研究は,外気負荷と室負荷の分担処理を行う空調システムを対象に,実現される室内環境とエネルギー性能評価をもとに,システムの適切な設計・運転制御手法を提案することを目的としている。本報では,先ずデュアルコイル空調機の運転・制御モデルを構築した。次に事務所ビルを対象に4 種の外気処理を伴う空調システムを設定し,シミュレーションにより設計条件や季節別の給気温度設定値に対する室内温熱環境と期間エネルギー消費量を検証することで,室内温熱快適性と省エネルギー性能を満足するシステム設計・制御条件を明らかにした。また,取入外気のCO2濃度制御ならびに外気量増加による室内温熱環境とエネルギー消費に関する感度分析を行った。
本研究は新築・既築のオフィスビルを対象に、そのコンバージョンやリニューアルによって、水まわりの変更や増設が生じても対応できるハイブリット排水システムを提案し、その性能評価と計画・設計手法に資する知見を得ることを目的とする。前報1)~3)までに、圧送排水システムと重力式排水横枝管システムを併用した「天井配管新設システム」と「既存排水横枝管活用システム」について、排水性能評価を行い、それらの有効性を検証してきた。本報では、その一環として、新築・既築のオフィスビルを対象に空間用途に応じて設置が必要になる水まわりからの排水を圧送排水ポンプユニットと小口径の排水横枝管を用いて排除できる「床スラブ上配管システム」を提案し、いくつかの配管バリエーションを想定し、排水性能評価を行い、設計に資する基礎的なデータを収集した。