日本原子力学会誌ATOMOΣ
Online ISSN : 2433-7285
Print ISSN : 1882-2606
66 巻, 6 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
巻頭言
時論
Perspective
解説
  • 5%超改めHALEU燃料をめぐる最近の状況
    山崎 正俊
    2024 年 66 巻 6 号 p. 286-290
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/10
    解説誌・一般情報誌 認証あり

     現在世界の商業用原子力発電所では,ウラン235の濃縮度(以降,単に濃縮度とする)5%未満の燃料が用いられている。何かの規制で5%未満とするよう要求されているわけではないが,世界中の原子燃料供給インフラが5%未満を前提に構築されてしまったため,実質的に5%超の燃料を導入することが難しくなってしまったのである。この状況は20年以上前から「濃縮度5%の壁」としてわれわれの眼前に立ちはだかってきたが,今ようやくその壁が超えられようとしている。

     本稿では,近年「HALEU」と呼ばれる濃縮度5%超燃料について主に米国の動向を俯瞰し,HALEUとは何か,動機と課題は何か,いま何が起こっているのかを紹介する。それを踏まえ「ではいったい,わが国はどうすべきなのか」について議論を喚起したい。

  • 粒界脆化とすべり変形について
    山口 正剛
    2024 年 66 巻 6 号 p. 291-294
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/10
    解説誌・一般情報誌 認証あり

     金属格子欠陥の第一原理計算は2000年前後から可能になり,表面や結晶粒界等の面欠陥,原子空孔等の点欠陥,転位芯等の線欠陥と,計算しやすい順に徐々に行われていった。第一原理計算から得られるのは欠陥構造と原子間凝集エネルギー(電子論的結合エネルギー)であり,それは材料研究におけるミクロの極限であるが,マクロな材料物性に対して強く影響を与えているらしいことを,筆者のいくつかの計算例から紹介したい。

サイエンスよみもの
  • 源流ギリシャからペルシャ・シリアを経てイスラム世界へ
    吉田 正
    2024 年 66 巻 6 号 p. 295-299
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/10
    解説誌・一般情報誌 認証あり

     わが国は科学の基礎から先端までを欧米から学んだためそれを欧米由来のものと単純に捉えがちである。しかしそれは正確ではない。科学の源流にはギリシャがある。そこでまずギリシャの科学史を概観し,ギリシャの知がやがてビザンチン帝国に集積し,さらにその拠点がペルシャ,メソポタミヤ周辺に移動する経緯を見る。この地にイスラムが勃興しギリシャの知は西アジアからエジプトに至る全イスラム圏の学者達の手によって精密化されていった。やがてイベリア半島にまでに達するイスラム国家の驚異的な拡大の波に乗り近代科学の萌芽はやがて西欧に達するのである。

  • 宇宙天気予報
    久保 勇樹
    2024 年 66 巻 6 号 p. 300-304
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/10
    解説誌・一般情報誌 認証あり

     天文学や地球物理学と社会生活の接点である,宇宙天気予報。本稿では宇宙天気予報とは何か,宇宙環境変動による社会インフラへの影響はどんなものか,それらの影響を低減するためにどのような予報が行われ,どのように利用されているのか,そして宇宙天気予報の今後の進むべき方向について,簡単に説明する。

報告
  • 社会に信頼されるコンセプトと必要な取り組み
    日本原子力学会 原子力発電部会「次期軽水炉の技術要件検討」WG(フェーズ2)
    2024 年 66 巻 6 号 p. 305-309
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/10
    解説誌・一般情報誌 認証あり

     次期軽水炉の技術要件を広い見地から議論するWGを原子力発電部会に設置し,次期軽水炉のコンセプトが社会に信頼されること,脱炭素社会を実現させる現実的な選択肢であることを社会に発信することを目的として,次期軽水炉の重要コンセプトの具体化を検討するとともに,それを実現可能とするために必要な取り組みを検討した。

  • 神崎 宣次
    2024 年 66 巻 6 号 p. 310-312
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/10
    解説誌・一般情報誌 認証あり

     心理的安全性は通常,チームのパフォーマンスの向上やイノベーションの促進といった経営学的な関心の文脈で議論される。しかしながら,業務等に関して生じた懸念や疑問について率直に発言できる組織文化としての心理的安全性は,個人(従業員)・組織・社会の三つのレベルでのリスクを縮小しうる点で,いわば組織にとっての社会的責任や倫理的義務と考えることもできる。本稿ではその必要性を,心理学的安全性についての第一人者であるエイミー・エドモンドソンの著作と,倫理学の話題から解説する。

  • 江尻 寿延, 杉山 一弥, 武田 精悦
    2024 年 66 巻 6 号 p. 313-317
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/10
    解説誌・一般情報誌 認証あり

     一般社団法人 日本原子力産業協会(以下,「JAIF」)では,2005年度から,エネルギー・環境・原子力問題をより深く認知して頂くため,双方向の理解活動として「JAIF出前講座(以下,「出前講座」)」を自前の講師で実施している。現在は,大学生や高等専門学校生(以下,「学生」という)の次世代層を対象に,年間延べ40数回,2,000~2,500名の学生に対し実施している。対面を基本とし,2023年12月末現在で,約28,000名の方に受講頂いている。なお,最新で正確かつ原子力に偏らない中立的な情報を提供し,学生たちに「自分事として一緒に考えてもらう」ことを基本スタンスとしている。今回,「出前講座」を実施してきた者として,概要,効果(受講された方の認知度の向上)等について報告するものである。

Short Report
  • あすかエネルギーフォーラム20年の活動から見えてきたこと
    秋庭 悦子
    2024 年 66 巻 6 号 p. 318-319
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/10
    解説誌・一般情報誌 認証あり

     あすかエネルギーフォーラムは,「消費者の視点でエネルギーについて考え,行動しよう」をモットーに20年間活動してきた。立地地域の方たちと意見交換することから始め,各地のグループと共に学び,語り合おうとネットワークを拡げてきた。福島第一原子力発電所事故から社会環境が大きく変わっているが,「本当のことは何か」と考え,正確な情報を得て,地域で情報発信するなど活動をステップアップしている。

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