本邦をはじめとする世界各国の規制機関は,国際放射線防護委員会(ICRP)が勧告する放射線防護体系に準拠し,低レベル放射線への被ばくに伴うがんなどの確率的影響のリスクに対し,実効線量に基づく被ばく管理を求めている。実効線量は,放射線デトリメント(放射線被ばくに伴う損害)に基づいて,臓器・組織による確率的影響の生じやすさの違いを考慮した線量である。本稿では,ICRP次期主勧告での放射線デトリメント算出に向けて基礎的検討事項をまとめたICRP報告書の概要を解説するとともに,関連動向を紹介する。
日本原燃(株)では,原子力発電所で発生した低レベル放射性廃棄物を埋設する為に青森県の六ヶ所村において低レベル放射性廃棄物埋設センターの操業を1992年から開始し,2023年12月末時点で,200リットルのドラム缶で約35.3万本の廃棄体を受入れている。ここでは,施設の設計およびこれまでの30年間の運用と安全の実績について紹介する。
原子力政策が転換したといわれる。一般の人々の意見も同様に転換していたのか。継続的に実施している意識調査のデータを用いて,2010年から2022年までの,人々の原子力発電に対する意見の推移を集計レベルの結果から報告したい。2022年,原子力発電に対する総合的な態度,発電所の今後の建設に対する意見は,いずれも消極的ではあれ肯定的な方向に動いている。震災後,原子力発電の稼働率が低下する中で,それほど顕在化しなかった,安定供給やエネルギー安全保障,日本の発電能力の十分性にかかわる懸念が改めて意識されるようになったことがうかがえる。
原子力学会誌では各号に対するアンケートを実施しており,いただいた回答については,順次結果を紹介しています。今号では2023年1月~2023年12月号に対して寄せられた回答の概要と,これまで編集委員会に寄せられた意見や要望の概要および編集委員会による対応について紹介します。
176Luは約400億年の半減期で176Hfにβ崩壊する放射性同位体である。そのため,176Luと176Hfの量から太陽系形成前に発生した超新星爆発や,地球や月の地殻の形成などの年代を測定するために用いることができる。しかし,これまで20グループ以上によって176Luの半減期が計測されたが,誤差の範囲を大きく超えて一致していない。この問題を解決するために,窓なし4π立体角型の検出器で半減期を計測した。この手法では,従来の測定法における誤差の要因を回避しており,最も真の値に近い。また,精度も最も高い。今後,176Luを用いた太陽系や各種天体の歴史の解明が進むと期待される。
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