2017年3月,国際民間航空機関(International Civil Aviation Organization, ICAO)理事会において採択されたCO2排出基準は,飛行機設計に燃料効率の高い技術導入を奨励するための技術標準で,2020年以降に型式証明を取得する新規設計機体等に要求される基準である.2009年10月のICAOハイレベル会合において設置された,世界全体で毎年2%の燃料効率の改善と,2020年以降2050年までカーボンニュートラルな成長の2つからなる「Global Aspirational Goal」達成のために議論されている方策の1つとして2010年より6年の歳月を経て開発された.その導入により,2020年から2040年までに6億5千万トンのCO2削減が見込まれるという.本文はこのCO2排出基準開発を関係機関の報告書・メディア記事・ICAO職員へのインタビューを基に解説する.
人工衛星を用いたミッションの高度化に伴い,衛星搭載用のアンテナや望遠鏡といった衛星搭載機器も,より高精度であることが求められている.そのような高精度な機器の実現に向け,軌道上での変形を計測し,アクチュエータにより補正することで高い精度を得る形状可変構造システムが,多くの機関で研究・開発されている.著者らも積層型圧電素子と変位拡大機構を組み合わせたアクチュエータを用いてアンテナ反射鏡面の形状調整を行う形状可変鏡(スマート形状可変鏡)の研究・開発に取り組んでおり,製作したアクチュエータの性能評価や,実際のアンテナシステムに組み込んだ状態での形状可変鏡の有効性確認試験を実施している.本稿では,そのようなスマート形状可変鏡に関して,研究内容を紹介する.
きぼうロボットアームは,親アーム,子アームから構成され,現在は曝露ペイロードの移設などすべてのアーム運用を地上からの遠隔操作で行っている.2015年5月のExHAM 1号機による初回ミッションでは,ExHAMをきぼうエアロックから船外へ搬出し,JEM曝露部上の電気箱Survival Power distribution Box(SPB)のハンドレールに,子アーム特有の力覚制御を使用した押し付け動作により取り付けた.この半年後の2015年11月には,ExHAM 2号機を同様のシーケンスで船外搬出し,JEM曝露部上Exposed Facility System Controller a(ESC a)のハンドレールへの初の取り付けに成功している.本稿では,Ex-HAM 1, 2号機のJEM曝露部への設置,船内回収を定期的に行ってきたきぼうロボットアームの運用実績について述べる.