ロータ・ブレードにおいては,基本的に翼根から翼端に向けてRe数とMach数が共に線形的に増加していく.現在運用中のヘリコプタの翼端マッハ数はほとんどが0.6前後で模型試験もマッハ・スケールと言って,翼端マッハ数を合わせた実験が多い.模型のサイズは実大の数分の1となるので,Re数も数倍の範囲内に収まる.一方,水平軸風車は大型化に伴い,半径100m程度のものも開発されており,模型の試験では1/100程度で,Re数が2桁異なるため,実Re数の試験や数値シミュレーションが重要である.さらに,近年急速に普及しているドローンのプロペラの翼端速度は実機ヘリコプタの約半分で,サイズも小さいことから,Re数的には低Re数領域にあり,空力性能的にはまだ改善の余地が大きいと考えられている.本解説記事は上記3種類の回転翼におけるRe数の影響について考察してみた.
問題定義・最適化・データマイニングで構成される設計情報学を概説し,現状を俯瞰する.また,現在宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所が研究開発を進める単段式ハイブリッドロケットへの適用事例を簡単に紹介する.近年実設計に応用されつつある最適化だが,多目的最適化による獲得物は最適解群である.当初,最適解群に対する後処理としての役割を担う道具だったデータマイニングは,しかし,不十分な最適化計算(実問題では,評価に時間の掛かる高精度評価法を採用することもあり,往々にして十分性は担保されない)へのフィードバックの役目も果たせる可能性が見出され,相補関係にあることが示唆された.最適化が導出する解空間は問題定義に支配されることに鑑みれば,問題定義・最適化・データマイニングは切っても切り離せないシステムである.三位一体であることを明示し,また,各論では見えてこない新たな設計方法論の世界を探索するため,設計情報学と名付け運用することにした.
近年,超小型人工衛星の打ち上げが増加している.超小型人工衛星は重量50kg程度の小さい人工衛星であり,コストやリスクが軽いことが増加の理由に挙げられ,大学の研究機関や企業が中心となり研究開発の増加が見られる.大阪工業大学ではプロジェクト「PROITERES(Project of Osaka Institute of Technology Electric-Rocket-Engine onboard Small Space Ship)」として超小型人工衛星の開発・製作を行っており,超小型月探査衛星プロイテレス衛星3号機の計画を立案している.月探査を達成するには推進機による軌道遷移が必要である.そこで,シリンドリカル型ホールスラスタ(Cylindrical Hall Thruster : CHT)に着目し,開発を行ってきた.50kgの超小型人工衛星に推進剤を15~20kg搭載したとすると,比推力が1,300~1,900s必要である.そこで投入電力50W程度,比推力1,300s以上を推進機の目標性能とした.また,CHTの作動は電子源が必要である.しかし,現在使用している電子源は消費電力が90Wと高く超小型人工衛星に適していない.そこで全く新しい電子源の開発を計画している.
C-2輸送機は国際平和協力活動等を含む多様な任務要求に応えるべく,高い飛行性能,輸送性能を備えるよう設計された機体である.実機においてこれらの性能を確認し,設計との適合性を確認するため,飛行試験の中で飛行性能及び搭載しゃ下系統試験を実施した.飛行性能に関しては,巡航に用いる高高度・高速から空中降投下に用いる低空・低速までの広範な飛行領域における空力・エンジン性能試験等を実施した.搭載しゃ下系統に関しては,空挺扉から空挺隊員がパラシュート降下を行う空挺降下試験,コンテナ及びパレット形態の貨物をランプ扉から投下する空中投下試験,車両等大型貨物の搬出入及び輸送試験等を実施した.試験の実施にあたっては安全性の確保に留意し,一部の項目については段階的にステップアップするよう計画することで,リスクの低減を図った.これらの試験を通し,C-2が設計のとおりの飛行性能,輸送性能を有していることを確認した.