SiC繊維強化SiC複合材料(CMC)は,現用のNi基系超合金よりもはるかに軽量で耐熱性に優れ,しかも,釘を打っても壊れない損傷許容性を有することから,高度な信頼性が要求される航空機エンジン用耐熱部材としての適用が期待されている.しかし,約1100~1200℃以上の酸素・水蒸気を含む燃焼ガス環境においては,CMCの酸化・減肉やそれに伴う損傷許容性の消失が問題となる.本稿では,CMC部材の耐久性向上に不可欠なCMC表面への環境遮蔽コーティング(EBC)とCMC内部の界面コーティングについて,最近の技術動向と第I期SIPの研究成果を中心に紹介するとともに,これらのコーティングの将来展望について述べる.
機体騒音低減技術の飛行実証(FQUROH)プロジェクトでのJAXA実験用航空機「飛翔」改造に向け,2014年度から2018年度にかけて実施された空力CFD解析と,その結果の活用方法の概略を紹介する.まず飛行実証試験の前段階として,風洞模型を作成(18%半裁模型)または改修(6%全機模型)する必要があったため,風洞模型自体及びフラップ支持金具などの設計,またその際にReynolds数効果で問題になったフラップ上面境界層剝離対策などについて述べる.飛行実証試験に向けては,飛翔実機の空力特性をCFDにより把握しながら低騒音化デバイスなどの付加物を装着した際の飛翔空力性能を検討した.空力的に問題がある付加物を選別し,それらの設計の再検討を行った.最終的な形状で空力的に大きな影響がないことを事前に確認し,飛行実証試験でも飛翔の空力特性・飛行性能に問題点は見られず,飛行実証試験を成功裏に終えた.
本論文はSS-520 5号機のラムライン制御系開発および飛翔結果を論じる.ラムライン制御系は,第1段燃焼終了後から第2段燃焼開始前までに実施される唯一の姿勢制御期間において,第2段,第3段加速方向への姿勢変更およびニューテーション減衰制御を実施するシステムである.SS-520 5号機のスピンの高速性(ノミナル1.6 Hz)に加え,厳しい制御時間・消費燃料要求に対処するため,ラムライン制御系には,スラスタ噴射遅れの補償機能やラムライン制御中のヘディング方向の逐次修正機能による追従性向上,スラスタ印加力積を段階的に削減する制御方式による少消費燃料・短制御時間・高収束性の同時実現等,姿勢制御の高性能化に資するアイデアが取り込まれた.姿勢制御に関する飛翔結果は良好で,事前想定のノミナル結果とおおよそ一致した.SS-520 5号機で開発された姿勢制御技術が今後,高速スピンするロケットや宇宙機の高度な姿勢制御技術として活かされることに期待する.