昨今の人工知能技術,特に深層学習技術の発展を受けて,また無人航空機の開発や利用の発展を受けて,自律制御を航空分野へ適用する際の安全性確保のあり方・手段について,欧米の航空当局,航空機メーカー,また研究機関は様々な検討を行っている.一方,日本の各種官民協議会で2018年にまとめられた「空の産業革命」や「空の移動革命」に関わるロードマップには“自動化”“自律化”といった言葉が見られ,日本でそうした技術の研究開発を進めていく上で把握したい取り組み,レポート,団体について,ここに紹介したい.
空港周辺の騒音被害を減らすために,エンジン推力を抑えた着陸進入時には機体空力騒音を減らすことが重要となっている.JAXA FQUROHプロジェクトでは,これまでJAXA実験用航空機「飛翔」を用いて,フラップと主脚から生じる機体騒音を低減する技術の飛行実証を2回実施した.本稿では,このうちフラップ低騒音化設計について紹介する.2016年の予備実証飛行試験では,3種の低騒音化コンセプトを「飛翔」フラップ端に適用し,初期段階の低騒音化設計評価を行った.その後,2017年の本実証飛行試験に向け,デバイス付加時の巡航抵抗ペナルティを低減する改良設計と騒音低減量を増やす改良設計を行った.2017年に2回目の飛行実証試験を実施した結果,2016年の予備実証試験結果と比べて広範な周波数範囲で騒音低減量を増加させ,改良設計の効果が確認できた.
2018年1月から観測を開始した「しきさい」搭載の多波長光学放射計(SGLI)は,陸域や沿岸や雪氷の細かな分布を捉えられる250m解像度や,陸域のエアロゾルを高精度に観測できる近紫外波長や偏光観測機能などの特長を持っている.観測開始から約1年の間にも,カリフォルニアの火災によるエアロゾル,全球の植生の季節変化,沿岸の海面水温や海色,オホーツク海の海氷などの詳細な分布が観測されている.SGLIの観測データから作成される雲・エアロゾル・植生・温度・海色・雪氷等のデータプロダクトは2018年12月から一般に提供されている.これらのプロダクトは,温暖化予測精度の向上に向けた研究に加え,温暖化によって変化する全球規模の環境変化や,漁場予測,赤潮の把握,海氷分布,エアロゾルの飛来予測など,私たちの生活に関わる情報発信に役立てられることが期待される.