宇宙航空研究開発機構の航空技術部門では,エコウィング技術の研究開発事業において環境性能と経済性を向上させる空力技術及び構造技術の研究開発を行ってきた.本研究事業では,2020年代と2030年代に開発開始が想定される航空機への適用を目指し,航空機の抵抗低減や構造軽量化による燃料消費量削減及びCO2排出量低減を実現する技術と,空港騒音を低減するための設計基盤技術の研究を進めた.空力技術では,層流翼やリブレット,翼端形状などについて,構造技術では,複合材料の設計製作,光ファイバひずみ計測,荷重制御について取り組んだ.低騒音技術では,機体概念設計ツール,騒音解析評価ツール,実験手法を整備した.これらのうちの要素技術は,JAXAの技術参照機体形状に組み込み,燃料消費量と空港騒音を評価することで性能を確認した.本稿では,エコウィング技術の研究開発事業の概要について紹介する.
地震等,大規模災害の発生に伴った通信途絶の回避や早期復旧に活用するため,情報通信研究機構(NICT)では災害に強い衛星通信ネットワークを研究開発している.東日本大震災の際の災害派遣の教訓から,走行中でも通信ができるWINDSの小型車載局等を開発した.また,災害対応に役立つ小型車載局の付加機能の開発を行うと同時に,地方自治体,消防等の緊急対応組織の協力を得ながら,災害対策実験を重ねてきた.さらに,2016年熊本地震が発生した時には,WINDS用の大型車載局,小型車載局やメッシュネットワークとともに職員を熊本県高盛町に派遣し,応急ネットワークを構築した後,鹿島宇宙技術センター経由でインターネット衛星回線を災害対策本部や住民に提供した.本稿では東日本大震災以降,NICTが開発したWINDS用の地球局やその付加機能,またこれらを用いた災害対策実験の内容に加え,2016年熊本地震時の応急対応について紹介する.
情報通信研究機構では2008年に打ち上げられ2019年2月27日に運用が終了となった超高速インターネット衛星「きずな」WINDS衛星を用いた高速衛星通信実験を約11年間にわたって行ってきた.2010年にはWINDS衛星のKa帯非再生中継器の1.1 GHz帯域幅を最大限使用して,単一搬送波による高速バーストモデムで伝送速度1.2 Gbpsに成功した.今回16APSK/16QAM-OFDM 3.2 Gbpsの多値変調周波数多重によるRF信号ダイレクト変復調装置を開発し,10 GbEインタフェースを介して4K超高精細映像をWINDS衛星回線に通す伝送実験に成功したので,その概要について報告する.