宇宙エレベーターシステムは,その物理的制約から赤道洋上での建設が想定されている.筆者は既存の海洋技術を利用した効率的な宇宙エレベーター洋上基地の運用について検討を行っている.本記事では,宇宙エレベーターシステムを海–宇宙間の物資輸送システムとして捉え,物資に応じて設備構成や施設位置を変更可能な洋上施設案を紹介する.また,当施設運用の健全性を担保する手段として,洋上風力発電施設の建設などでも実施されているマリンワランティーサーベイ(Marine Warranty Survey: MWS)の導入を提案し,その効果検証の結果を報告する.
本稿では,人工衛星や探査機などの宇宙機が飛行する軌道上の宇宙環境因子のうち,真空,放射線,紫外線,原子状酸素を取り上げ,それぞれの概要を紹介する.軌道上環境は極めて厳しく,宇宙機搭載の材料,特に高分子材料に対し影響を及ぼす.その環境下において,高分子材料がどのような影響を受け変化するのか,また,その評価方法と対策について述べる.なお,本稿は,特集『材料への宇宙環境影響に関する研究の最新動向』の導入となるものである.
JAXAの航空科学技術分野における活動の政策的な位置づけとなる文部科学省の航空科学技術分野研究開発プランの策定に資するため,JAXAは,外部の有識者委員会の協力を得て検討を行い,JAXAが目指すべき航空利用社会の将来像として「人と環境に優しい持続可能な航空利用社会」を設定し,その実現に向けて重点的に取り組むべき研究開発課題として,「航空機のCO2排出低減技術」「静粛超音速機技術」「多種・多様運航統合技術/自律化要素技術」「航空機ライフサイクルDX技術」の4課題を抽出した.この検討結果は,文部科学省での検討を経て研究開発プランに反映され,JAXAの事業計画に展開されている.本記事は,JAXAが取り組む航空科学技術分野での研究開発の方向性を紹介する目的で,航空利用社会の将来像と研究開発課題に係る検討の概要を紹介する.