JAXAでは,ソーラー電力セイルをはじめ将来の宇宙膜面構造物の大型化を視野に入れ,支柱等を使用せずにスピンによる遠心力で膜面を展開・展張する方式の検討を進めている.この方式においては,膜面を幾何的に拘束する剛性の高い構造が無いため膜面の運動の自由度は高くなり,これを適切に予測できる技術が重要となる,小型ソーラー電力セイル実証機「IKAROS」の打ち上げ前には様々な状況を想定して数値シミュレーションを用いた展開挙動予測が行われ,安全にセイルを展開できるシーケンスの決定に努めた.そしてIKAROSの打ち上げ後,事前解析情報に基づいてセイル展開を進めた結果,無事セイルの展開に成功した.本稿では,これらの数値シミュレーションによる事前解析の概要について述べるとともに,フライトデータとの比較による数値シミュレーションの有効性の検証,および今後のミッションにおける数値解析による膜面展開挙動の予測法に対する展望についても述べる.
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