カプセル形状の飛行体は,遷音速領域で動的不安定となることが多い.揚力カプセルである小型回収カプセルの動特性を推定するため,ピッチ方向の自由回転風洞試験を行った.連続回流式のJAXA 2 m×2 m遷音速風洞では,マッハ数やRe数に加えて,無次元慣性能率を一致させることにより,無次元時間上で実機の角運動を模擬することができる.揚力カプセルのトリム角およびトリム角周りの角運動は,マッハ数で大きく変化する.各マッハ数の最大振幅から,パラシュートの開傘マッハ数を計画した.また,実機の角振動の周波数を推定した.さらに,ピッチ角運動の時間履歴から,誘導制御シミュレーションに必要な動安定微係数を求めた.最後に,風洞試験データと飛行データの比較を行った.
TRICOM-1Rは実用的な超小型衛星の実現を目的として開発した3U-CubeSatであり,将来の衛星量産化を視野に入れ,機能の移植性及び汎用性の高いシステムを目指して開発された.メインミッションは高感度無線デバイスを用いたStore & Forward及び複数台のカメラによる地球撮像等である.TRICOM-1Rの衛星バスは,「ほどよし衛星シリーズ」の基盤技術の成果を基に軌道上実証された民生部品を多く使用するとともに,システムアーキテクチャはこれまでの超小型衛星の開発・運用成果のLessons Learnedを多く利用している.2018年2月3日にISAS/JAXAの観測ロケットSS-520 5号機により軌道上に打上げられ,衛星の健全性が確認され,初期運用及びミッション運用にも成功した.本衛星は同年8月22日に地球大気圏に再突入し,既に運用を終了している.本稿では,衛星バスの開発結果,初期運用の成果及び運用終了に至るまでの軌道上評価に関して報告する.