空港周辺に影響を及ぼす航空機の低騒音化と機外騒音予測は,航空機を開発するメーカとして必要不可欠の技術である.一方エンジンの低騒音化が進み相対的に機体騒音が顕著化している現在の航空機開発において,機体騒音の評価・低減技術は未だ十分に確立されているとは言えない.また型式証明に必要な空港騒音の評価は開発の最終段階で実施されるため,機体形状に影響する機体騒音の予測は設計初期段階から考慮すべき設計要素としてますます重要となっている.
航空機の開発機会が限られる国内において,機体騒音を予測し実機で実証することは非常に重要である.FQUROHプロジェクトでは,“飛翔”による低減技術の実証を行い低騒音化の目途を付けることができた.この中で得られた技術は,我々が今後開発する機体に適用可能な基盤技術として当社の中で培われていくものと考える.本稿では,当社でのFQUROHプロジェクト参画に至る取組と基盤技術等について紹介する.
小型回収カプセルは世界最小の揚力誘導回収カプセルであり,このカプセルでフライト実証した「軽量熱防護技術」は,地球低軌道からの大気圏再突入時に生じる約2000[℃]の熱から機体を守る高信頼かつ超軽量の熱防護技術である.高温から守る機体の鎧を,優れた耐熱性能を維持したまま劇的に軽くすれば,搭載する荷物の質量をより増やせるため輸送と回収の低コスト化をもたらし,将来の大型回収機に必須の技術となる.本稿では,世界最高レベルの軽量化を目指して我が国で初めて開発実証した国産の低密度アブレータを用いた小型回収カプセル熱防護系の開発と,その飛行結果について述べる.
超低高度衛星技術試験機「つばめ」(SLATS : Super Low Altitude Test Satellite)は2017/12/23に種子島宇宙センターよりH-2Aロケットにて打上げられ,その運用が終了する2019/10/1までに,軌道制御の観点で,1)分離軌道(遠地点高度643 km,近地点高度450 kmの楕円軌道,降交点通過地方時10時半)から超低高度保持開始軌道(高度271.5 km,降交点通過地方時16時)に至るまでの化学推進系と空力姿勢制御を用いた1年間に渡る軌道遷移,2)高度271.5 km/38日間,250・240・230 km/7日間,216.8 km/38日間,181.1 km/7日間(本高度までイオンエンジンのみ),167.4 km/7日間(化学推進系とイオンエンジン併用),の7段階の高度での計111日間の高度保持,3)観測対象(東京赤坂地区)を通過する回帰軌道271.5 km/1日回帰,216.8 km/5日回帰,181.1 km/3日回帰,への誘導と経度保持,等の成果を上げることができた.本稿ではこれら軌道制御運用および追跡運用の概要を紹介する.
2006年より14年間に渡り日本航空宇宙学会の会誌編集委員を務め,最後の1年は会誌編集委員長を務めさせて頂いた.編集委員会を離れるに当たり,会員の皆様方に有益な情報を届けるために努めて来た取組みについてご紹介させて頂きます.